優しすぎた世界
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私が良き方へ変化することが出来たのは、紛れもなくこの樹殿のお陰だ。
彼女がいたからこそ、今の私があるのだ。
私は覚悟を決めた。
無理を承知で、彼女にこの質問を投げかけた。
今言わなければ、きっとこの先ずっと後悔するであろうから。
「樹殿。私が次に質問することには、嘘偽りなくお話ください」
「…分かりました。何でも聞いて下さい」
樹殿は恐れるものなど何もない、といった様子で、堂々と、はっきりと言い切った。
それはこの京を見事救った、応龍の神子として相応しいものだった。
そんなあなたを守り抜くことが出来たことを、私は誇りに思う。
だが、それとこれとは話が別だ。
「私が行かないで欲しい、とお止め申し上げても、帰ってしまわれるおつもりですか?」
私の言葉に、樹殿の瞳が揺らぐ。
切なげに。
やるせなく。
それはまだ彼女が割り切れない証。
彼女がまだ決めかねている証拠。
その姿を見て、ほんの少し安心した。
樹殿はまだ私のことを気にかけて下さっている、ということが分かったから。
「…いずれは帰らなければなりません。私はこの世界の人間ではないんです。私には私の…元の生活がある」
苦し紛れに呟かれた言葉には、もはや説得力はなかった。
こんな時にふと思い出す。
彼女はまだ年端のゆかぬ、幼い少女なのだ、ということを。