優しすぎた世界
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案の定あなたは困った表情で私を見上げてくる。
翡翠に似た瞳が潤んで、何かを訴えかけようとしている。
必死によい言葉を探しているのだろうが、見つからないのだろう。
「もう、私達がいなくても、この世界はきっと大丈夫だと思うんです。自分達の力で、この世界を守って行けると…」
樹殿は、私だけを見た。
彼女の瞳には、今は私しか映し出されていない。
そう考えると、何故か妙な優越感に浸ることが出来た。
今はそんなことを考えている場合ではなかったのに。
私が心の奥底でかようなことを考えていようなどとは露知らず、樹殿は言葉を続けた。
「それは八葉のみんなも同じ。もちろん頼久さんにも言えることだと思うんです」
「……」
私は納得出来なかった。
私は昔と、樹殿や神子殿が訪れる前と、何一つ変わってなどいない。
それどころか、弱くなってしまったのではないかと思う。
任務よりも、あなたを何よりも優先させたい、などと思うようになってしまったから。
「恐れながら樹殿…私はその意見には賛同致しかねます」
「どうしてですか?私は頼久さんは変わったと思います。だって初めて会った頃の頼久さんは、どこかおっかなくて、全然笑ってもくれなくて……」
あの懐かしき日々を回想しながら、樹殿は瞳を輝かせた。
反論を許さない力強ささえも秘めている。
「でも今は違います。応龍の神子として以上に、私を樹という一人の人間として認めてくれて、叱ったり、支えてくれたりしています。前の頼久さんだったら絶対に私を甘やかして、それでおしまいでした」
言われてみれば確かにそうかも知れない。
人との関わり方が、物事の見方が劇的に変わったと思う。
それはきっと他でもない、樹殿のおかげだ。
だからこそ、私にはまだ、彼女が必要だ───