優しすぎた世界
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「急に決めた訳じゃありません。京を救ったその日から、ずっと考えていたことなんです」
樹殿も神子殿も、決してそんな素振りは見せなかった。
それどころか、天真や詩紋でさえ、全くその片鱗を見せなかった。
「元の世界に帰るということは、神子殿や天真、詩紋には伝えられているのですか?」
「はい。皆知っています。藤姫と帝にも既に許可は取っています」
私の預かり知らない水面下で、事態は着々と進んでいた。
私があなたの美しさに見惚れている間に、あなたは遠くへ行く支度を静かに進めていた。
ただ、私が気付かなかっただけだ。
樹殿は帰らないのだと、この世界に留まって下さるのだと、自分勝手に信じて。
「八葉のみんなにも、もう伝えてあります。頼久さんが…最後の一人です」
樹殿は笑顔を作り損ねたまま、小さく呟いた。
私は何と言葉を紡げばよいのか分からなかった。
ただ情けなく戸惑って、途方に暮れてしまった。
あなたを困らせてしまうと、分かっていたのに。