優しすぎた世界
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ビー玉のように透き通った碧の瞳が、真っ直ぐに私を見つめてくる。
彼女の瞳に映るものは、全て汚れたものであるかのように思えてくる。
それは勿論、私も含めて。
彼女の瞳が、彼女自身が美しく、穢れないから。
澱みなく、透き通っているから。
樹殿自身は気付いていないけれど。
あなたを見つめていると、つくづくそう思わずにはいられない。
「頼久さんに会ってこうして話すの、本当に久し振りですよね」
「ええ、一週間以上ぶり程でしょうか…」
「もうそんなになりますか?何度も時間を作ろうと思ったんですけど、予定が詰まってて…ごめんなさい」
あなたはそう言いながら、ぺこりと頭を下げる。
応龍の神子であり、今やこの京の都では英雄以上の存在のあなたであるのに、あなたは少しも驕り高ぶったりしない。
以前からずっと変わらず謙虚で、私のような者に対しても、決して気遣いを忘れない。
そんなあなただから、皆に愛され、崇められるのだろう。
信仰の対象として。
一人の人間として。
「お気になさらないで下さい。私は今こうして樹殿と話せるだけで、十分ですから」
これは決して謙遜などではない。
真実、会えない時間は長かったが、今目の前にあなたがいることが嬉しくて仕方がないのだから。
「…今日は、頼久さんに大切な話があるんです」
樹殿は一瞬にして笑顔を消し、私に向かって切り出した。
その表情は、何者にも負けぬ強い意志を秘めていた。