優しすぎた世界
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八葉でありながら、今は彼女たちの為に何もしてやれない自分が、悔しくて悔しくて仕方がなかった。
太刀では彼女たちを守れても、心の支えにまではなってやれないのだ。
「大丈夫ですよ」
そう言って向けられた優しい笑顔にさえ、自分の無力さと、虚しさしか感じることが出来なかった。
庭に控えていると、樹殿がひょっこりと姿を現した。
小動物めいた仕草で、きょろきょろと辺りを見回している。
本当にお可愛らしい方だと思う。
彼女のような少女が、鬼に立ち向かい、怨霊を封じ、京を救ったのだ。
にわかには信じられない話ではあるが、これは紛れもない真実なのである。
樹殿は何かを確認すると、小さく頷いて、私の元に駆け寄ってきた。
彼女が走る度に揺れる薄い茶色の髪が、太陽の光を反射して、きらきらと煌めいている。
「頼久さん。ちょっと話があるんですけどいいですか?」
大きな団栗眼で私を上目遣いに見つめてくるあなたは、初めて出会った時と全く変わらない、あどけない表情を浮かべていた。
ただ少し痩せた細い四肢が、あなたがこの戦いで苦悩し、傷付いたことをまざまざと物語っている。
「樹殿…どうなさったのですか?」
いつものこの昼時には、樹殿は京の人々と面会しており、私と会える時間などほぼ皆無だったのだ。
だからこそ、あなたに会えて嬉しいと思う反面、何かあったのだろうか、と心配になる。
私の心の内など知らぬあなたは、無邪気に微笑む。
本当に罪な方だとつくづく思う。