幼馴染みと恋人の境界線
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ま、将臣…なの?」
そう言う奏多
と春の京で再会してからというもの、奏多の様子がいつもどこかおかしかった。
誰にも心配をかけないように必死に笑顔を取り繕って、何でもないように振る舞ってるのは分かってるんだ。
望美や譲達を騙せても。
俺にそんな演技は通用しないぜ?
時折見せる怯えたような眼差しや、触れることを極度に恐れてること。
俺に隠し事が通用しないのはお前だって分かってるんだろ?
だって俺は子供の時からずっと。
お前だけを見てきたんだから──
《ぎこちない指先》
「じゃあ、この紙に書いてある物を買ってくればいいんだよね?」
「ええ、本当にごめんなさいね、奏多
。兄上に頼むつもりだったのに、突然仕事だなんて…」
顔を洗った後に廊下を歩いていると、一室から奏多
と朔の話声が聞こえてくる。
どうやら奏多
はこれから買い物にでも出かけるらしかった。
「でも、景時さん、すごく謝ってたじゃない。今日は私、特にすることもないからちょうどいいよ」
「でもやっぱり譲殿に荷物を持ってもらうのをお願いした方がいいんじゃないかしら」
「いいの、いいの。譲、今日は弓の稽古に専念したいって話してたから。邪魔しちゃ悪いし。それに私、こう見えても結構力あるからね」
そう言いながら、奏多
は力こぶを作って見せる。
必死に力を込めている細い腕に、俺は苦笑いをせずにはいられなかった。
そんな細い腕で何ができるんだよ、って。
俺は柱に凭れかかって部屋を覗き込みながら、声をかけた。
「荷物持ちなら俺が行ってやるよ」
俺の声に、俺が此処にいることにようやく気付いた奏多と朔はほぼ同時にこちらを振り返る。
「将臣!?」
「将臣殿…」
見事に声までかぶって、俺は思わず笑ってしまう。
「はははっ、お前らほんっとお約束だな」
「仕方ないじゃない、いきなりいるからびっくりしたんだもん」
「そうか?少し前からいたんだけどな」
そう言いながら、俺は少し強引に奏多
の腕を引いて立ち上がらせる。
悠長に事を運んでいたら奏多
は遠慮しかねないと思ったからだ。