優しすぎた世界
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私たちは黙ったままでそれを見送った。
今の詩紋くんにかけてあげる言葉が見つからない。
励ましの言葉はきっと何の慰めにもならない。
それが私たちにはよく分かっていたから。
「あかね、お前はどうするんだ?このまま学校に行くか?」
言葉を紡ぐことの出来ない私に代わって天真くんがあかねに尋ねてくれた。
でもなんとなく答えは分かっていた。
それは私だけではなく、天真くんも同じだったはずだ。
「私もやめておくよ。…学校に行ったとしても私きっと笑えないから。そうしたらクラスの皆にも心配かけちゃうと思うし。二人はどうするの?」
天真くんは別にどちらでもよかったのかもしれない。
私が行くと言ったらついて来てくれるし、行きたくない、と言えば一緒にサボってくれるんだろう。
私が学校に行かないなんて相当なことだから。
「…行かない」
「そっか。じゃあ、今日はみんなで学校サボっちゃおう。…考えなくちゃいけないこと、たくさんあるからね」
あかねはくるりと後ろを向いた。
その表情は分からないが、きっと泣いているんだろう。
あかねの細い肩が小さく震えているのが分かったから。
桜の木の前には私と天真くんだけが取り残された。
あの頃とはまったく異なる存在になってしまった私たちが今ここにいる。
「ねえ、天真くん。…私たち、これでよかったんだよね?」
私は不安そうに尋ねる。
でも本当に良かったのかなんてぜんぜん分からない。