優しすぎた世界
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私はいてもたってもいられなくて、天真くんの学ランの袖を握り締めた。
いつかこんな日が来るということは分かっていた。
覚悟もそれなりにしていたつもりだった。
きっと大丈夫だって、盲目的にそう信じていた。
私は向こうの世界では万能の存在だったから、何でも乗り越えられると思ってた。
私が樹であることは永遠に変わらない事実。
だから私が強くなれることなんてあるはずがなかったのに。
あれはあくまでも応龍の力。
私自身の力ではない。
桜の木の下に立ち尽くしていた私たち四人は呆然としていた。
何も、考えられなかった。
だってこんなにもあっけないものだなんて思ってもいなかったから。
「…僕たち、元の世界に帰って来たんだね。千年の時を越えて」
重たい空気を突き破るように詩紋くんが口を開いた。
つらいのはみんな変わらないのだ。
だからあえて詩紋くんは自ら切り出す役を買って出てくれたのだ。
私たちよりも年下で、いつも甘え上手だった詩紋くんはいつのまにか私たちを超えて強くなってしまったんだね。
嬉しいような悲しいような複雑な気分だった。
「僕、今日は学校休むよ。…とてもじゃないけどそんな気分にはなれないから」
詩紋くんは小さく言うと無理やりに笑顔を取り繕って見せた
ちゃんとした笑顔には到底遠かったけれど、私たちがとやかく言うことはできなかった。
私たちもきっと笑えないだろうから。
「じゃあ、またいつもの場所でね」
大きく手を振って、詩紋くんは踵を返した。