縮まらない二人の距離関係
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***
酒と杯を手に還内府殿の部屋へと向かう途中に、後ろから呼び止められた。
穏やかで柔らかい声に、私はゆったりと振り返る。
そこには時子様がいた。
普段ならば既に床に入られている時間だが、戦から戻った兵たちを労うために起きていらっしゃったんだろう。
「時子様……」
「還内府殿のところへ行かれるのですか?」
「はい」
「そうですか……奏多殿、還内府の殿こと、よろしく頼みますよ」
時子様は優しい笑顔で私に仰る。
でも、私はその言葉に対して素直に頷くことができない。
だって、私は所詮身代わり。
本当の意味で、彼の支えになることはできないから。
表情を曇らせれば、時子様は私の頬に触れてまるでまじないのように囁いた。
時子様にそうされると、その言葉が本当になるような気がするから不思議だ。
「大丈夫ですよ。もっと自分に自信をお持ちなさい。あなたが思う以上に、あなたは還内府殿の支えとなっているのですよ」
「そうでしょうか……」
「私の言葉が信じられませんか?」
「いえ、そのようなことは……」
「では、頼みましたよ」
時子様はまた優しく微笑まれて、寝所へと戻られた。
私は漆黒の空に浮かぶ十六夜の月を見上げてから、還内府殿の元へと急いだ。