何よりも優先すべきは
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私は一度だけ頷いて、リズ先生の手を握り締めた。
私の手も、リズ先生の手も、すっかり冷たくなってしまっていた。
申し訳なさが込み上げてくるけれど、私はこの場ではそれ以上何も言わないことにした。
リズ先生はそんなことを望んではいないから。
機嫌を損ねたくはない。
私たちはどちらからともなく歩き出した。
リズ先生は私の歩調に合わせてくれている。
私がリズ先生に合わせて歩こうとすると、どうしても早歩きになってしまうから。
「先生。もうちょっとだけ、我慢してくださいね。私、受験勉強がんばって第一志望の大学、受かりますから」
「分かっている。だが、焦らぬことが肝要だ」
「はい、リズ先生の教えですから」
私たちは一人で歩いてきた道を二人で戻った。
きっと家に帰っても、先ほどの会話の続きはきっとしないだろう。
おそらくはリズ先生がさせてくれないだろうから。
でも、もういいんだ。
私の心に少しの蟠りは残るけれど。
でも、リズ先生は変わらずに私の傍にいてくれるから。
心の蟠りはきっとすぐに消えてしまうんだろう。
リズ先生の優しい言葉で。
そのぬくもりで。
私が今まとっているコートがまだほんのりとあたたかいように、リズ先生の心もとてもあたたかいから。
私の心を解きほぐすには十分すぎるほどだから。
私はリズ先生の手をぎゅっと握りしめた。
そうすると、それを知ったリズ先生もまたぎゅっと私の手を握り返してくれる。
今の私は本当にそれだけで、十分なんだ。
《終》