何よりも優先すべきは
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私のすぐ後ろから。
私の歩いてきた道から。
「奏多…?こんな所で何をしている?」
リズ先生もさすがに驚きを隠せないようだった。
私が外にいることにしてもそうだし、何よりもどうしようもないほどの薄着だったからだ。
リズ先生はすぐ私のそばに駆け寄ってきてくれた。
息ひとつ乱さず。
でも、表情は戸惑いに満ちている。
「そんな薄着では風邪をひく。さあ、これを着なさい」
私が外にいる理由を問いただす前に、リズ先生は私に自分の着ているコートをかけてくれた。
ほんのりと暖かかくて。
何よりも、リズ先生のにおいがする──
安心する。
それだけで、十分私の心は満たされる。
私は思わず泣き出しそうになってしまったけれど、何とかそれだけは押しとどめた。
これ以上リズ先生を困らせるつもりは毛頭ない。
「何故こんな場所にいるのか、理由を聞かせてくれるな?」
「それは、私の台詞です。どうしてリズ先生は外にいるんですか?どうして私に何も言わずに出て行っちゃうんですか?」
震える声に、リズ先生の瞳が見開かれた。
私はリズ先生の言葉を待つ前にさらに続けた。
「心配するじゃないですか。また…いなくなっちゃったんじゃないかって…怖かったんですよ……!」
私はリズ先生のコートをぎゅっと握り締めた。
ただでさえ長身のリズ先生が着ているコートだから、私が羽織ると、裾が今にも地面についてしまいそうだった。
「すまない……」
「謝罪の言葉が欲しいわけじゃないんです。理由を、聞かせてください」
私がはっきりと、力強い口調でそう言うと、リズ先生は少し沈黙してから、ばつが悪そうに言った。
「奏多がおなかが減ったと言うから…何か腹の足しになる甘いものでも買いに行こうかと……」