何よりも優先すべきは
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靴は、無かった。
つまり、リズ先生は外に出かけているのだということになる。
しかもこんな真夜中に。
一体なんの用事があるというのだろうか。
私の胸に一抹の不安がよぎる。
──もしかして…また何か鎌倉の街に起こったのかな
私はふるふると首を振ってすぐにその考えを否定する。
そんなはずはない、と。
もしもこの街に異変が起きようとしているのなら、リズ先生よりも先に、私か望美が気づくはずだ。
一年前と違い、力が満たされていないわけではない。
むしろ調和を取り戻した龍脈が廻っているおかげで、私はすこぶる調子がいいくらいだ。
私やリズ先生が心配しなくてはいけないような事態は起こっていないはずだ。
いや、絶対に起こっていない。
私はすぐにサンダルを履いて玄関を飛び出した。
どうしてか分からなかったけれど、どうしようもなくリズ先生に会いたかった。
会って、何も心配するようなことはないのだと、言ってほしかった。
頭を撫でて、抱きしめてほしかった。
外の空気は驚くほど冷たい。
もともと冷えていた指先は、すぐに温度を失った。
耳も、鼻先も、足先も。
すっかり凍えてしまった。
そして気づく。
家を飛び出して約500メートル。
──私、何をやってるんだろう…
上着も着ずに、長袖のシャツに膝上のスカート。
とてもじゃないけれど、この寒空の下、外出するような格好ではない。
そして、もうひとつ馬鹿なこと。
私、家の鍵、閉めてないよ。
つい家を飛び出したから忘れてた。
鍵も持ってきてないよ。
おまけに冬なのに裸足にサンダルだし。
「…帰ろう」
私の声は夜の闇に融けた。