縮まらない二人の距離関係
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あの人の瞳に絶対に私は映らない
あの人の瞳に映るのは
愛しい幼馴染み殿だけ
でも、それでもいいの
ほんの一時でも
あの人の側にいられるなら───
《身代わりでしかなくても》
「お帰りなさいませ。ご無事で何よりでございました、還内府殿」
恭しく頭を垂れれば、すぐに上から声が降ってくる。
抑揚のない、低い声。
「ああ。奏多、あとで酒を頼む」
「畏まりました。どなかにお声掛けは───」
「いい。今夜はお前と飲みたい」
「……では、すぐに」
「ああ」
思わず綻んでしまいそうになる顔を隠して、踵を返す。
還内府殿はきっと、私の背を見送っているんだろう。
彼はそういう人だ。
決して振り向きはしないけれど、いつも背中に視線を感じるから。
私は彼には分からないように小さく溜息を零してから、酒造庫へと急いだ。