縮まらない二人の距離関係
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俺は奏多の部屋まで奏多を運び、すでに女房によって丁寧に敷かれた布団の上に横たえさせる。
奏多は目覚める様子など微塵も見せずに、ただひたすらに深い眠りに落ちている。
掛け布団を胸の辺りまで被せてやって、俺は改めて奏多を見下ろした。
眠るその姿はさながら童話にでも出てきそうな眠り姫のようで。
胸元が上下していなかったら眠っているのか、死んでいるのか分からないほどに、奏多の寝顔は安らかだった。
ったく、俺の気も知らないで暢気なもんだぜ。
涙で頬に張り付いた髪を手でどけてやって、ついでにその顔を覗き込む。
長い睫も、通った鼻筋も、小さな唇も。
すべてが愛おしかった。
自分のものには決してならないこの眠り姫が。
どうしようもなく欲しかった。
「一回くらいならいい……よな」
だってずっと我慢してきたんだぜ。
この思いを誰にも打ち明けることもできずに、ずっと自分の内側に押え込んできた。
耐え難く襲ってくる衝動を何度も受け流して。
無邪気に笑って俺の名を呼ぶ奏多に、何でもない表情で返すのは。
本当に辛かったんだ。
今日だけは、今だけは。
許されないことだと、分かっているけれど。
少しだけ、自分の欲求に素直にならせて欲しい。
「奏多……」
名前を呼んでも起きないことを確認してから、俺は静かに顔を近づける。
奏多の吐息が肌で感じられるほどの近くに。
そして俺はゆっくりと奏多の唇に自分の唇を重ね合わせた。
その甘みを味わうこともできないほどのほんの一瞬だけ。
《終》