神と人の綾なす物語
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小さな手に導かれながら、ぼんやりと思う。
こんな誕生日も悪くないな、と──
少し前までは弱々しく、ともすれば風にすら吹き飛ばされてしまいそうだった少女が、今はこうして自分の意志で歩き、行動している。
そしてそんな椎奈に、少なからず影響されている自分がいる事も確かで。
昔は変わる事をを何よりも疎み、避けてきた僕だったけど。
こんな変化なら、悪くはないかも知れない。
「紗綾」
「なあに?」
「──ありがと」
僕の蚊の鳴くような小さな感謝の言葉に、紗綾は柔らかく微笑んだ。
それは決して子供めいたものではなくて。
とても女性らしいものだった。
そして紗綾はまた前を向き、僕の手を更に強く握り締め小走りに走り出す。
無邪気な紗綾を見ると、あの異世界での日々を思い出す。
退屈だとばかり思っていたあの生温い世界も、もしも紗綾がいたなら、色を変えるかも知れない。
もちろん逃げてあの世界に行くのではなく。
今度は何もかも、ちゃんと清算した後で。
「私から那岐くんに、まだプレゼントはあるから、期待しててね」
振り向かずには言った。
それはきっと、恥ずかしかったからなんだろう。
そんな紗綾に思わず頬を緩めながら、僕達は天鳥船へ向かった。
握り締められたこの手を
僕はきっと離さない
君の存在を守る為なら
変わる事も厭わないから──
《終》