神と人の綾なす物語
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忍人はそっと瞳を閉じ、紗綾が奏でる歌に身を委ねる。
横目でその様子を一瞥した紗綾は、小さく微笑む。
やがて、歌は終わりを告げた──
「お粗末様」
「いや、君にこんな特技があるとは知らなかった」
「んー…これを特技と呼べるかは分からないけど……でも、そう言ってもらえると嬉しい」
はにかんだ笑みを浮かべる紗綾に、忍人は思わず視線を逸らす。
無防備な彼女の笑みを直視するのは、あまりにも心臓に悪い。
顔に熱が集中しているのが、嫌でも分かってしまう。
紗綾はそんな忍人の様子に首を傾げたが、また夜空に視線を戻す。
「そうだね。今の私は沢山の人の未来を守る使命があるんだよね。こんな所で風邪なんて引いてられない、か。うん、今日はもう寝るよ。戻ろ、忍人」
そう言って、紗綾は踵を返し、忍人のすぐ傍をすり抜ける。
そのまま堅庭を去ろうとする紗綾を、忍人は呼び止める。
らしくもない。
忍人はつくづくそう思った。
「…紗綾っ……!!」
「なあに?」
「その…また、聴かせてくれないか。君の知る、異世界の歌を」
紗綾は一瞬目を見開いて。
それから彼女らしい、少し子供じみた笑みを浮かべる。
「うん。お望みとあらば、何度でも──」
異世界の歌
名も知らぬ歌
それを美しく思うのは
紡がれる言葉に
奏でる歌声に
彼女の全てが織り込まれているから──
《終》