縮まらない二人の距離関係
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「私は──寂しかったよ。将臣に逢えないの、すっごく寂しかった」
少し震えたような泣きそうな声に俺が奏多の顔を覗き込むと、その頬には一筋の涙が伝っていた。
白い肌の上をなだらかに辿る雫に、俺は言葉を失っていた。
奏多はさらに言葉を続ける。
「こっちの世界に来てから何もわからなくて……将臣にもずっとずっと逢えなくて……やっと逢えた将臣は私の知ってる将臣じゃなくなってたけど。でも嬉しかったんだよ」
俺は隣で静かに涙を流す奏多を抱きしめたくて仕方がなかった。
奏多が姉でなかったなら。
俺が弟でさえなかったなら。
そうしたら今すぐに抱きしめてやれるのに。
彼女の体を抱きしめるために伸ばしかけた手を、俺は奏多の頭に乗せて、髪を撫でてやる。
これでいいんだ、と自分に言い聞かせて。
「情けねぇな、泣くくらいなら酒飲むんじゃねぇよ」
「分かってるよ……!分かってるんだけどさ……なかなか伝える機会、なかったから」
俺は泣き止む気配のない奏多の頭を腕で寄せて肩に置かせてやる。
泣きたい時は、きっと気が済むまで泣くのが一番だと思うから。
「ほら、泣きたいだけ泣けよ。ずっと此処にいてやるからさ」
「あー……うん、ありがとう」
「ったく、これじゃあどっちが年上なのか分からねぇぜ」
「あはは、もともと将臣の方がお兄ちゃんっぽかったもんねー」
笑い声を上げながら奏多はそっと目を閉じる。
それでも涙は止まらずに、頬を伝い続けた。
誰にも飲まれることのなくなってしまった酒が月明かりに照らされていた。