神と人の綾なす物語
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一度柊をちらりと見て、柊が困ったように微笑むと、紗綾は少し泣きそうな顔をして小さく頷いただけだった。
二人の間に何があったのかは知らない。
それでも、訝しく思うには十分過ぎた。
紗綾が時々浮かべる悲しげな表情の意味を、忍人は知らない。
知りたい、とは思う。
彼女の心を陰らせるものを。
叶うなら、その闇を振り払ってあげたい。
彼女なら、一人でも戦っていけると分かっていても。
「大方、また紗綾の事を考えていた、といった所ですかね」
「……!!」
「ふふ、君は本当に分かり易い」
柊は満足そうに笑う。
弧を描く唇と瞳に苛立ちが隠せずに、ついつい睨みつけてしまう。
こんな争いなど、不毛だと分かっているのに。
「紗綾なら、堅庭にいましたよ。夜風は冷たいですから、羽織りを持って行ってはどうですか。それでは、私はこれで」
それだけを告げると、柊はあっさりと忍人の前から立ち去った。
どことなく焦っているように見えたような気がするのは、気のせいだろうか。
しかし今更確かめようもない。
それに、彼が何をしようとも、千尋の、そして紗綾の、二人の歩む道の妨げにならなければそれで構わなかった。
忍人は柊の言葉に従い、堅庭へと足を向けようとして、しかしすぐにやめた。
癪ではあったが、羽織りを取りに戻る事にした。