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公園の片隅。
ひっそりと佇む一本の桜の木。
まるで隠れるように。
まるで公園で遊ぶ子供たちを、物陰から見守るように。
でもその桜はどっしりとその場所に根を下ろしていた。
私はその桜に迷わず駆け寄ると、すぐさま木の根本に屈み込んだ。
地面すれすれの場所。
屈み込まなければ決して気付かないような場所に、小さな薄紅色の蕾が芽吹いていた。
私は自分が雨に濡れることも気せずに、蕾に傘を差し掛けた。
この雨の中を晒され続ければ、花を咲かせることなく、地に落ちてしまう気がして仕方がなかった。
本当は今日花を咲かせるかとも思っていたが、あいにくの天気の為にそれもかなわなかったらしい。
「余計なお世話、だったかな」
私は苦笑いのままで、蕾に語りかけた。
返事がないことは分かっている。
たかが小さな蕾の為に、何を愚かなことをしているんだろうということも分かっている。
それでも、放っておけなかった。
それでも、捨ておけなかった。
きっと私は、弱々しく生を続けるその蕾に、自分を重ね合わせているのだと思う。
逞しく生きて、と願っているのだと思う。
何も出来ていない私の代わりに。
「明日は晴れだって天気予報で聞いたから。だから明日こそ、花、咲くといいね」
明日の朝一番にまたここに来よう。
もう蕾ははちきれそうなほどに膨らんでいるから、明日にはきっと美しい花を咲かせるだろう。
小さくて、誰にも気付いてもらえないかも知れない。
でも、私だけは知っているから。
毎日少しずつ成長して、ここまで大きくなったのを、私は最初からずっと見届けてきたんだから。
私はゆっくりと立ち上がる。
差してきた傘は、蕾に雨の雫が当たらないように立てかけて。