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中学校の下駄箱の窓から私は灰色の空を睨みつける。
そんなことをしたところで、この最悪な空模様が変わるはずもなかったけれど。
私は折り畳み傘を持つ手に、ぐっと力を込める。
躊躇っている時間が惜しい。
こうしている間にも、「あの子」がいなくなってしまうかもしれない
それだけは何としても避けたかった。
「よし、行くか」
私が一人で気合いを入れていると、私の肩を誰かがぽん、と叩いた。
私がゆっくりと振り返ると、そこには譲と将臣が立っていた。
「一体この雨の中、どこに行こうっていうんだよ、奏多?」
将臣が怪訝そうな顔付きで、私を見下ろしている。
もちろん小さな頃からずっと一緒にいる幼馴染みだから、そんな表情をされたところで、私は少しも怯まないのだけど。
「ちょっとね。友達と待ち合わせ、してるんだ」
「待ち合わせ…ねぇ」
「今日しか駄目なんだ。だから行かなくちゃ」
私が慌てて走り出そうとすると、今度は譲に呼び止められた。
急いでいる今、ほんの少しの時間でさえ惜しく思われる。
「奏多先輩…あのっ……!」
譲は真剣な眼差しで私を見つめてくる。
私は真っ直ぐに譲を見つめて、彼が次の言葉を紡ぐのを待った。
でも譲は黙り込んだままだった。
痺れを切らした私は、手早く折り畳み傘を広げると、立ち尽くす譲と将臣に手を振った。
「ごめん、譲。今本当に急いでるから。話なら家に帰ったら聞くからちょっと待ってて」
譲が私の言葉に対して、どのような反応を返したのかは分からない。
だって私はその時にはすでに駆け出してしまっていたから。
今日だけ。
きっと今日だから。
確かではないけれど。
私は一目散に「あの子」がいる場所を目指した。
雨水が跳ね返り、靴下を濡らしても。
あまりに勢いよく走るものだから、傘が傘としての役割をほとんど果たしていなかったけれど。
今は、そんなことに構っていられなかった。