縮まらない二人の距離関係
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奏多がからかうような視線で見上げてくる。
薄紅色の瞳に俺はどうしようもなく泣きたくなる。
奏多が見上げてくるたびに実感せずにはいられない。
その瞳に映し出されている『有川将臣』は奏多にとってはただの『よく言うことを聞く弟』に過ぎないのだと。
俺には一縷の望みも残されていないのだと。
譲はよく奏多にどうしてあと一年早く生まれてくることができなかったのだろうと愚痴を零していた。
譲にとって奏多はよき相談者であり、理解者であったから。
でも、譲、お前はまだいいじゃねぇか。
好きになったのが望美なんだから。
あいつはかなり鈍感なところがあるし、確かにお前のことを弟のようにしか思ってないかも知れない。
だけど、可能性が完全に潰えたわけじゃないだろ。
お前が努力しさえすれば、望美がお前に惚れることだってあるかもしれない。
いくら望美がお前の事を弟のように思っていたとしても。
『血は繋がってない』んだから──
俺はどうして奏多のことを好きになってしまったんだろう。
女ならたくさんいるじゃないか。
それこそ望美だってずっと傍にいた。
高校に入るまででも、告白してくる女子は大勢いた。
でもそれをオーケーしてやれないのはやっぱり俺の心の中にはお前がいるから。
お前のことが誰よりも好きだから。
「寂しいなんてあるわけねぇだろ。会いに行こうと思えばいつでも会えたんだから」
俺が自分の本心を自分の内側に押し隠したままで、心にもない言葉を口にすると、奏多は悲しげな表情を浮かべた。
長い睫に縁取られた瞳が揺らめいて俺の心を揺さぶる。
なんでだよ。
なんでそんな表情するんだよ。