理想と現実のはざまで
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
君は“そんなことない”とはにかんだ笑みで言うんでしょう。
でも、僕にとってはたった一つの真実。
奏多さん、あなたはもっと自信を持っていいんですよ。
「弁慶さん……?」
奏多さんの父君の書斎で、僕が鎌倉の龍脈についての情報を探していると、小さく扉が開きました。
勿論僕を呼ぶ声で君だということは振り返らなくても分かりましたよ。
僕は奏多さんの声を聞き間違えたりしませんから。
僕は読みかけていた本を閉じ、それを元の位置に戻す。
収穫は…残念ながらありませんでした。
「奏多さん、どうしたんですか?」
僕が尋ねると奏多さんは一瞬困ったように眉を寄せてから、それでも躊躇いがちに言葉を紡いだ。
常に遠慮がちで。
瞳は潤んでいて。
君は本当に可愛らしい人ですね。
「何か見つかりましたか?」
「いえ…有力な情報はありませんでした。奏多さんの方はどうでしたか?」
僕が尋ね返すと、彼女は小さく首を横に振った。
どうやら彼女も外れたらしい。
奏多さんは質問を終えて尚僕の顔を凝視し続けている。
どうやら本当に言いたいことは別にあるようだ。
だが僕は敢えてそれ以上の問い掛けはしない。
だって奏多さんからの言葉が聞きたいから。
僕が引き出した言葉ではなく。
奏多さん自身が選んだものを。
「あ、あの…」
身体は半分扉に隠れたままの姿勢で奏多さんは動かない。
ただ薄紅の瞳だけが不安げに揺れている。
それでも意を決したのか、奏多さんはゆっくり声を絞り出した。
「リビングで一緒に休憩、しませんか?」