神と人の綾なす物語
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だって紗綾は。
紗綾は風早が好きなんだろう。
ずっとそう思っていた。
あからさまな態度。
綻んだ頬と緩んだ口元。
それを見ていたら、普通は嫌でもそう思う。
「俺なんか、この間怪我をしたら絆創膏貼られて、“はい、おしまい”だったからね」
あはは、とあの苛立ちを誘う笑みを浮かべながら、風早はしれっと口にした。
僕にも何が何だか分からなくなってきた。
紗綾の本心が全く見えない。
どこまでも人を振り回して。
自分は素知らぬ顔で。
何だか、とても悔しい──
「紗綾が帰ってきたら、ちゃんと話してみたらどうかな。答えてくれるかどうかは、分からないけどね」
風早はふう、と短く息を吐くと小さく笑った。
兄のような、父のような。
そんな表情で。
僕は紗綾が出て行った扉を見つめた。
結局は、僕が間違っていたってことか。
ただ、彼女の心が此方に向いているとは限らない。
全く違う、豊葦原の人間に向かっているのかも知れない。
でも、希望が生まれたから──
失う恐怖は未だ僕の心を苛むけれど。
彼女の側にいる為の努力は。
それだけは最大限にしようと思う。
《終》