神と人の綾なす物語
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どうしてなんだよ、紗綾。
何故僕じゃなく、風早の名を呼ぶんだ。
千尋にしたってそう。
何かあれば、すぐに風早だ。
二言目には必ず彼の名を口にする。
近くには、僕だっているのに──
「紗綾、慌てて一体どうしたんだい?今日は確か那岐と……」
“見回りの筈じゃなかった?”
口に出そうとしたその言葉を、風早は瞬時に飲み込んだ。
そうしたのはきっと、風早を睨み付ける僕の視線に気付いたからだろう。
僕に背を向けている紗綾は、今僕がどんな表情をしているのか全く気付いていない。
風早は僕を見つめてちらりと苦笑いを浮かべると、また紗綾に視線を戻した。
穏やかな瞳で紗綾を見下ろす風早に、僕は聞こえないように舌打ちをした。
この苛立ちの矛先を、何処へ向ければいいのか分からなくて。
この二人と同じ空間にいるのに嫌気が差した僕は、そのまま踵を返して自分の部屋に戻ろうとした。
…それなのに。
酷いことに紗綾がそれを引き止める。
紗綾が幸せそうな顔をしながら風早に話し掛けるのを、僕にその隣で大人しく為す術なく見ていろっていうのか。
鈍感にもほどがある。
でも僕は、その声の制止を振り切ることが出来ない。
あの声が、僕を呼ぶから。