縮まらない二人の距離関係
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「将臣ー、気をつけてねー」
おいおい、雪見御所の中にいて、何を気をつける必要があるんだよ。
しかもちょっと酒取りに行くだけじゃねぇか。
奏多の俺に対するガキ扱いは今に始まった訳じゃねぇけど、少し言わせてもらえば、今は俺の方が一つ年上なんだぜ?
奏多が20、俺が21。
こっちで過ごした分、俺の方が経験豊かだと思うんだけどな。
まあ、惚れた弱みってやつで未だに逆らうことはできねぇけど。
「はいはい……じゃあ知盛、ちょっとこいつのこと頼むわ」
「……さあ、な」
はぁ……
こいつ、絶対見とく気ないな。
それどころか、酒を取って帰ってきた時にここにいるかどうか自体も怪しいぜ。
とにかく俺は奏多ご所望の品を取りに行く為に部屋を後にした。
「……還内府殿?このような時間に如何なされたのですか?」
酒を取りに来てみると既に先客がいた。
その声色に一瞬驚いたが、口調を聞いて安心する。
「重衡じゃねぇか。脅かすなよ」
「申し訳ありません、そのようなつもりは無かったのですが」
いや、重衡が悪いんじゃないってのは自分でも分かってるんだ。
ただ声が似過ぎてるっていうか、同じっていうか……
いきなり話し掛けられると判断できないんだよな。
奏多は何の問題もなく分かるらしいんだけど。
「で、重衡もパシりか?」
「ぱし……り?」
「あー……誰かに頼まれたのかってことだな」
「ああ、はい。父上に申し付けられましたので。還内府殿は奏多殿でしょうか?」
「まあな。よく分かったじゃねぇか」
俺が感心したように言うと、重衡は柔らかく笑う。
こういった表情は知盛とは全く似ていない。
いや、知盛がこんな表情してたら逆に気持ち悪い気がしないでもないな。
「ふふ、還内府殿が自ら動くのは、奏多殿のことくらいですから」
「……そうか?」
「ええ。だってもしも兄上が酒を取ってこいとおっしゃっても、還内府殿はお動きにならないでしょう?」
「まあ、言われてみればそうかもな」
言われてみて初めて気付くってのもやっぱりあるんだな。
今まで意識したことなんて無かったんだけど。