あなたは私を知らなくても
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私は無我夢中で。
あなたの手を引いてこの世界に戻って来てしまったけれど。
あなたは後悔していない?
誰もあなたを知る人のいないこの世界を。
あなたは愛してくれる?
《目を逸らさずに》
外の景色は既に雪によって真白に染め上げられ、空はまだ暗雲が立ち込めていた。
ともすればまた吹雪でもきそうな空模様だった。
九郎はそんな窓の外の景色をぼんやりと眺めていた。
彼の夕日色の瞳にはすぐ隣の奏多の部屋が映し出されていた。
奏多はここの所、雪が降り始めてからというものよく塞ぎ込むようになっていた。
九郎や将臣がどうした、と尋ねてみても“何でもない”と笑って答えるだけで、表情を曇らせている本当の理由を話してはくれなかった。
心配を掛けまいとしているのはひしひしを伝わってくるのだが、頼られていないと感じるのが辛かった。
「九郎、いるか?」
扉を叩くのはこの部屋を九郎に与えた有川将臣。
奏多と同じこの世界の住人で、奏多の幼馴染。
九郎でさえ初めは気づけなかった奏多の心境の変化に気づいたのも他でもないこの将臣だった。
将臣は平家の還内府であり、九郎達源氏の仇敵だった。
だがとある事情から平泉までの道をともにし、奏多の計らいもあって、以前のように気さくに話せるようにまでなった。
もともと気の合う方だとは互いに思ってもいた。
還内府がしてきた所業を許すことはやはりまだ出来なかったが、それでも九郎は将臣に心を許していた。
この奏多達の生まれた遠い異世界で頼ることが出来るのは奏多と将臣と譲だけであったから。
不安が全くないと言えばそれは嘘になる。
だが彼らのおかげでかなりその感情は抑えられていた。
「ああ、開いている」
九郎が返事をすると、将臣はすぐに部屋の中に入ってきた。
シャツにGパンというラフな格好をした将臣は頭を掻きながら九郎の前に立ち塞がった。