神と人の綾なす物語
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そう言うなり、紗綾は俺の腕を取り、引っ張り出した。
それほど強い力ではないが、有無を言わさぬものがある。
それ以前に、俺の意見も聞かず。
全くお構いなしだ。
「紗綾、一体何処へ行くつもりだ?」
俺が引っ張られた状態のままで尋ねると、紗綾は首だけを回してこちらを振り向く。
そして俺と目が合うと、唇の端を釣り上げた。
まるで子供が悪戯をしている時のような表情だ。
「まだ、秘密。きっとアシュも気に入ると思うんだ」
笑みを絶やさぬ紗綾に、俺の頬も思わず緩む。
そんなにも喜ぶ顔を見たら、今こうして目的地も分からずに引っ張り回されていることも、どうでもいいことのように思えてしまう。
他の女であったとしても、俺は同じような気持ちを抱くのだろうか。
いや、おそらくはそんなことにはならないだろう。
きっと“紗綾だから”なのだ。
俺は紗綾に腕を引かれながらも、この穏やかに過ぎる時間に例えようのない幸せを感じていた。
***
根宮からさほど離れていない森の中に、紗綾はどんどんと足を踏み入れていた。
微かに差し込む太陽の光が、葉の緑を反射して、きらきらと煌めいている。
紗綾はこんな場所に俺を連れてきて一体何がしたいのだろうか。
全く彼女の思考は理解しかねる。
「ちょーっと狭い道を通るんだけど…アシュ大丈夫かな」
紗綾は唐突に岩肌の見える行き止まりの前で立ち止まった。
苔が所々に生えていて、それがこの場所がいかに人を寄せ付けておらず、更に湿気が多いことを暗に示していた。
紗綾の言葉の意図が掴めずに、若干困惑していると、紗綾は手招きをしながら岩肌の前に屈み込んで、10メートルほど前方を指した。
「あの岩と岩の隙間、通るんだよ」