ソワレ・メイラ
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窓の外に見えるのは厚く空を覆った灰色の雲だった。
最近になって気温は急激に下がり、冬の到来を感じさせるようになった。
いつもの休日ならば、早々に──というか朝から昼過ぎまでぬくぬくとベッドの中で本を読んだり、つまらないテレビ番組をぼーっと眺めながら怠惰に、そして贅沢に休日を浪費する紫も、その日は珍しく訪れてきた客人のために暖房を入れる。
リビングの窓際に置かれた二人がけのソファで、きょろきょろと落ち着かない様子で室内を見まわしているソワレの姿に、紫は声を出さずに笑みを浮かべながら言った。
「ごめんね今紅茶しか置いてなくって。次に来るときは何かソワレの好きそうなの買っとくから、今日はコレで我慢してくれる?」
トレイごとティーポットとカップ、温めたミルクをソファの前にあるテーブルの上に置くと、ソワレは緊張しているのかぎこちなく首を横に振る。
「い、いや別に俺は……あんま嫌いなモンとかねーし……」
「そ、良かった」
可愛らしくなりすぎない程度の計算を込めて小首を傾げ、すとんとソワレの隣に腰を下ろす。ソワレの緊張しているらしい強張った横顔を見つめたままで。
ああなんて素直で、分りやすくて、可愛いのだろうと紫は改めて思う。
部屋は紫の手によって必要以上に温められていた。
いつもソワレやアルバと会うのは、紫の仕事帰りであることが多く、そんな時の彼女の服装は大抵スーツだ。だが今日は休日であり、デニムとキャミソールの上にシャツを浅く羽織っただけの恰好だ。
そういったいつもと違う服装や、雰囲気といったものたちが、ソワレを緊張させているのだろう。
「ソワレ──?」
ゆっくりと、絡めとるようにさまざまな思惑を込めて名を呼べば、明らかに動揺した様子で、それでも隠し事の出来ない真っ直ぐな瞳は紫を見る。
ことり、と頭を傾げてソワレの肩へともたれかかってみた──が、がたりとソワレがその場から立ち上がる。
紫は心の中だけでちっと舌打ちをした。
「い、いやなんか部屋暑くねーか? 窓開けた方がいいかもな。空気入れ替えようぜ」
「窓開けたら絶対寒いわよ──まあ寒くなったらソワレがあっためてくれればそれでいいけど私は」
「あっため……! いやいやいやいや寒くなったら暖房をだな」
「別にあったかい部屋でもソワレがあっためてくれるなら私は我慢するわよ?」
ソワレが立ち上がってしまったため、必然的にごろりとソファに転がることになった紫だが、あくまで視線はソワレから離さない。
「ソワレ──」
優しく。けれど拒絶を許さぬ声音で。
紫は知っていた。結局のところ、ソワレは紫には逆らえやしないのだ。
全てを知っているからこその余裕をもって、紫はソファに横になったままで手を伸ばす。
「ソワレ、こっちいらっしゃい」
「いや、あのな紫……もしかしてオレのことからかって……」
「私が? ソワレを?」
「いやごめんそんなワケないよな! オレの気のせいで──」
「ソワレ──」
「はい……」
「いい子だからこっちいらっしゃい」
ソファの上に寝そべったままで、紫がちょいちょいと指先を動かしてソワレを呼び寄せる。
ソワレは少しだけどうして良いのか分らないような、困った顔をしたものの観念したのかゆっくりとソファへと歩み寄ると、床の上に膝をついて座り込んだ。
二人並んで立てば紫が見上げるほどの長身で、紫を抑え込むことなど容易いであろうソワレが小さくなっていることに、紫は苦笑した。
伸ばした指先が頬に触れると、ソワレがびくりと顔を上げる。
そんな彼の様子は、まるで飼い主の機嫌に一喜一憂する大型犬のようにも思えた。
優しく頬を撫でていた指先を、ソワレの骨ばった手が捉える。
「紫、オレは──」
「ソワレ、いいお返事できたらキスしてあげるから、よーく考えて答えるのよ。いい?」
捉えられた指先が熱いのは、果たしてどちらの熱なのか。
息を呑んで、食い入るように紫を見つめて言葉を待つソワレに、笑みと共に言葉を返す。
「ソワレ──もう私のモノになっちゃいなさい。ね?」
答えはなく。
ただただ次の瞬間。ソワレは紫に圧し掛かるようにして──まるで熱に浮かされたような仕草でがっちりと細い体を腕の中へと拘束する。
間近で感じる体温。間近に見下ろしてくる眼差し。
まるで紫がその場にあることを確認するように、たどたどしく頬から首へ、そしてそこから肩のラインへと滑り落ちる手。
降ってくる、唇。
「な……馬鹿ソワ!! 返事してないでしょ返事! それと重い!」
「紫ってずりー……」
「ズルくないわよ」
「だってさ、紫もう確信してんだろオレの答え。ならオレが答えても答えなくても同じじゃん」
ぎゅうと紫にしがみつくようにして抱き込んでくるソワレはまるで拗ねた子供のようだ。
その広い背中をぽんぽんと優しく叩くと、ようやくソワレは腕の拘束を解く。
元のように、ソファの脇の床に膝をついてちょこんと座る彼が、ちらちらと様子を伺うように紫を見ていた。紫は起き上がると仕方ないわね、と呟いて両腕を開く。
「大好きよソワレ。だからそんな顔してないで、こっちいらっしゃい。私が、アナタのモノになってあげるから、ね?」
大切な大切な可愛らしいこの男のために。
多少の妥協と、惜しみないほどの愛情を。
最近になって気温は急激に下がり、冬の到来を感じさせるようになった。
いつもの休日ならば、早々に──というか朝から昼過ぎまでぬくぬくとベッドの中で本を読んだり、つまらないテレビ番組をぼーっと眺めながら怠惰に、そして贅沢に休日を浪費する紫も、その日は珍しく訪れてきた客人のために暖房を入れる。
リビングの窓際に置かれた二人がけのソファで、きょろきょろと落ち着かない様子で室内を見まわしているソワレの姿に、紫は声を出さずに笑みを浮かべながら言った。
「ごめんね今紅茶しか置いてなくって。次に来るときは何かソワレの好きそうなの買っとくから、今日はコレで我慢してくれる?」
トレイごとティーポットとカップ、温めたミルクをソファの前にあるテーブルの上に置くと、ソワレは緊張しているのかぎこちなく首を横に振る。
「い、いや別に俺は……あんま嫌いなモンとかねーし……」
「そ、良かった」
可愛らしくなりすぎない程度の計算を込めて小首を傾げ、すとんとソワレの隣に腰を下ろす。ソワレの緊張しているらしい強張った横顔を見つめたままで。
ああなんて素直で、分りやすくて、可愛いのだろうと紫は改めて思う。
部屋は紫の手によって必要以上に温められていた。
いつもソワレやアルバと会うのは、紫の仕事帰りであることが多く、そんな時の彼女の服装は大抵スーツだ。だが今日は休日であり、デニムとキャミソールの上にシャツを浅く羽織っただけの恰好だ。
そういったいつもと違う服装や、雰囲気といったものたちが、ソワレを緊張させているのだろう。
「ソワレ──?」
ゆっくりと、絡めとるようにさまざまな思惑を込めて名を呼べば、明らかに動揺した様子で、それでも隠し事の出来ない真っ直ぐな瞳は紫を見る。
ことり、と頭を傾げてソワレの肩へともたれかかってみた──が、がたりとソワレがその場から立ち上がる。
紫は心の中だけでちっと舌打ちをした。
「い、いやなんか部屋暑くねーか? 窓開けた方がいいかもな。空気入れ替えようぜ」
「窓開けたら絶対寒いわよ──まあ寒くなったらソワレがあっためてくれればそれでいいけど私は」
「あっため……! いやいやいやいや寒くなったら暖房をだな」
「別にあったかい部屋でもソワレがあっためてくれるなら私は我慢するわよ?」
ソワレが立ち上がってしまったため、必然的にごろりとソファに転がることになった紫だが、あくまで視線はソワレから離さない。
「ソワレ──」
優しく。けれど拒絶を許さぬ声音で。
紫は知っていた。結局のところ、ソワレは紫には逆らえやしないのだ。
全てを知っているからこその余裕をもって、紫はソファに横になったままで手を伸ばす。
「ソワレ、こっちいらっしゃい」
「いや、あのな紫……もしかしてオレのことからかって……」
「私が? ソワレを?」
「いやごめんそんなワケないよな! オレの気のせいで──」
「ソワレ──」
「はい……」
「いい子だからこっちいらっしゃい」
ソファの上に寝そべったままで、紫がちょいちょいと指先を動かしてソワレを呼び寄せる。
ソワレは少しだけどうして良いのか分らないような、困った顔をしたものの観念したのかゆっくりとソファへと歩み寄ると、床の上に膝をついて座り込んだ。
二人並んで立てば紫が見上げるほどの長身で、紫を抑え込むことなど容易いであろうソワレが小さくなっていることに、紫は苦笑した。
伸ばした指先が頬に触れると、ソワレがびくりと顔を上げる。
そんな彼の様子は、まるで飼い主の機嫌に一喜一憂する大型犬のようにも思えた。
優しく頬を撫でていた指先を、ソワレの骨ばった手が捉える。
「紫、オレは──」
「ソワレ、いいお返事できたらキスしてあげるから、よーく考えて答えるのよ。いい?」
捉えられた指先が熱いのは、果たしてどちらの熱なのか。
息を呑んで、食い入るように紫を見つめて言葉を待つソワレに、笑みと共に言葉を返す。
「ソワレ──もう私のモノになっちゃいなさい。ね?」
答えはなく。
ただただ次の瞬間。ソワレは紫に圧し掛かるようにして──まるで熱に浮かされたような仕草でがっちりと細い体を腕の中へと拘束する。
間近で感じる体温。間近に見下ろしてくる眼差し。
まるで紫がその場にあることを確認するように、たどたどしく頬から首へ、そしてそこから肩のラインへと滑り落ちる手。
降ってくる、唇。
「な……馬鹿ソワ!! 返事してないでしょ返事! それと重い!」
「紫ってずりー……」
「ズルくないわよ」
「だってさ、紫もう確信してんだろオレの答え。ならオレが答えても答えなくても同じじゃん」
ぎゅうと紫にしがみつくようにして抱き込んでくるソワレはまるで拗ねた子供のようだ。
その広い背中をぽんぽんと優しく叩くと、ようやくソワレは腕の拘束を解く。
元のように、ソファの脇の床に膝をついてちょこんと座る彼が、ちらちらと様子を伺うように紫を見ていた。紫は起き上がると仕方ないわね、と呟いて両腕を開く。
「大好きよソワレ。だからそんな顔してないで、こっちいらっしゃい。私が、アナタのモノになってあげるから、ね?」
大切な大切な可愛らしいこの男のために。
多少の妥協と、惜しみないほどの愛情を。
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