アルバ・メイラ
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「で、 紫」
窓の外を見ていた男の視線は物憂げですらあった。
だが彼女の名を呼び、振り返った時にはそんな繊細な様子など微塵も残ってはいなかった。まるで切れ味の鋭い刃物の切っ先を思わせる光を浮かべた眼差しに、紫は激しく嫌な予感を覚えながらもなるべく平静を装ってみる。
「なにー?」
ソファにうつ伏せに横たわり、両足をぶらぶらさせていた紫は、肘を立てて頭だけでぐるりと窓際の方──アルバの姿がある方へと振り返った。
「少し話を聞きたいんだが、昨日の昼頃一緒にいた男は誰だ?」
かつかつと靴音を響かせて歩み寄ってくるアルバの様子に、紫は思わずソファの背に片手をついて体を起こす。
逃げられるものならば逃げ出してしまいたい。
だが果たしてこの男の前から逃げることが可能だろうか?
そして万が一今逃げおおせたとしても、捕まるのは時間の問題だろう。
短期決戦よすっぱりカタつけるわよ、と自分に言い聞かせながら紫はごくりと喉を鳴らし男を見た。
アルバは紫の足元──ソファの隅にに浅く腰掛け、両手を組み合わせると肘を膝の上に置く。
「昨日のお昼は会社の同僚とご飯くってたわよ」
「男だな」
「男だったわね」
「…………」
「…………」
奇妙な空気が場を支配した。
じっと見つめ合う二人の間にあるのは、艶っぽい雰囲気などでは決してない。
あえて言うとすれば、それは緊張感か。
沈黙に耐えかねたのはやはり紫が先だった。
「アルバくんちょっとお話しましょうか」
「確かに話し合いの必要がありそうだな」
「ではまず私の意見から言ってもよろしいでしょうか?」
「聞こう」
「ハッキリ申し上げますと、私は毎日お仕事している人なワケです。会社勤めなんてしてますと男女関係なく付き合いというものが発生しますので、昼ごはんくらい普通に男の人とだって食べることがありますし、下手したら夜飲みに行くことだってあるワケですよ」
「それにいちいち口を挟もうとまでは考えてないが」
「えー、んじゃ一体何怒ってんのよ……」
「最近の会社の同僚とやらは、男女構わず腰を抱き肩を抱き寄せて実に恋人同士のような至近距離で会話するようだな」
「あー……」
そういえばそんなこともあった気がするが、ただのスキンシップと気にも止めてはいなかった。
よりにもよってそこを見られたのだとしたら運が悪い。
だが必死に言い訳だけはしてみよう。無駄な気もするが。
「ええとですね別に好きとか嫌いとかではなくて、こーこっちの国きてからいまいち他人とのスキンシップ時におけるボーダーラインが曖昧になってるところがありまして、こーつい、ああこんなもんなのかなーとか思って見逃すというか見過ごしてしまうというか──」
「一つ思い出してもらいたいことがある」
「オーケーかかってこいや」
「私が先週同じことをしたら君はどうしたか覚えているか?」
「…………」
「…………」
「……痴漢変態呼ばわりしてあまつさえ暴力行為に及びました」
「忘れていた訳ではないようだな」
「そりゃもう。記憶力はいいほうだし」
「で、ここからが本題だ」
「聞きましょ」
「昨日の男の行為を笑顔で許せて、私にはあの仕打ちだ。納得いかないにも程がある──そのあたりを一度じっくり説明してもらおうか」
説明、と言われてもつい手が出てしまうのだから説明のしようもない。
だがしいて言えば昨日の男が同僚であり格闘などとは無縁の一般人だということくらいか。
「同僚殴ったら仕事に差し支えるでしょ。それにアルバなら殴ったって避けるのわかってるし。まあ避けられてもムカつくからきっと蹴るけど」
「君は避けられる相手なら殴るし蹴るのか?」
「え、殴られたの根に持ってるもしかして?」
案外執念深いのね、と続いた紫の言葉に、アルバは彼にしては珍しく小さな溜息をつく。
人間臭いその仕草に、紫が僅かに目を見張った。
「殴ったの怒ってんの? ごめんね──そんな怒んないでよ」
「いや、その件じゃない」
「じゃどの件よ」
「君は同僚だのに関しては異様に無防備なところに腹を立てているだけだ」
だいたい、昨日アルバが見かけた男は気づいていたのだ。二人を見つけたアルバの姿を。
そしてそれに気づいてあえて紫の肩を抱き耳元に口を寄せて囁くように会話した──まるでアルバに見せ付けるように。
その場こそ紫の立場を考えてその場を立ち去ったが、あんなものを見せられて機嫌よくいられる筈もない。
それを知らない紫はわかんないなーと首を傾げる。
「そもそも、別にそーゆー関係じゃないアルバが怒るのがもうわかんないのよねー……」
ぴくりと、アルバの柳眉が跳ね上がる。
ああそういえば確かに告白などというものもしていない、好きだと囁いたこともない。
かといってそれらしいことを匂わせたことがないかというとそうでもないのだ。子供でもないのだからだいたい察していても良さそうなものではある。
頭の回転は早い方であるだろうし、生まれた国から遠く離れたこの街まで派遣されて仕事をするくらいならば有能でもあるのだろう。
だとするとこの鈍さは演技という可能性すらある。
だが、手がない訳でもない。
「よく分かった」
「何が?」
「君が何もわかってないことがよく分かった」
「なんか失礼な物言いよねソレ」
真っ直ぐソファに腰かけていたアルバが紫へと向き直る。ソファの背とアルバとの間に投げ出されていたほっそりした足首を肩近くまで持ち上げた。
「な……ちょっと何してんのよ変態!!」
当然足首を持ち上げられれば、片手だけで体を支えていた紫の体がソファへと沈む。それを片手で押さえ込み、アルバは膝のすぐ脇に唇を落とすと、太股まで舌を滑らせる。
「……っつ……やっ……!」
ぴくりと、震えるような反応にアルバの笑みが深くなる。
内股につけた幾つかの所有印──自分でつけたものながら、白い肌の上の赤い印はひどく扇情的でアルバを昂ぶらせた。
足首を開放する代わりに、両足の間に膝を割りいれ、細い体を組み敷く。
「一体何よ、突然」
潤んだ瞳で睨むように見上げてくる紫の瞼に口付けた。
「そういう関係、とやらになればいいんだろう」
「アルバ、私たちいいお友達でいられると思わない?」
ひくりと笑みを強張らせた紫の発言は、明らかに牽制なのだろうがそれを受け入れる気など全くなかった。
「いや、無理だな」
もう手に入れてしまおう。彼女の全てを。
アルバは赤いサングラスを外し無造作に放った。
この期に及んで抵抗しようと足掻く手を捕まえて指先に口付け、アルバが囁く。
「教えてあげよう君に──私がどれだけ君を愛しく思っているかを。時間はまだたっぷりある──そして幸いなことに夜は長い」
ゆるりと、フローリングの床に落ちたサングラスを見ていた紫の目がアルバを見上げる。
観念したように小さく溜息交じりに紫が言った。
「明日仕事なんで、手加減お願いします──」
「それも無理だ」
深く口付け舌で歯列をなぞりつつ、紫の服の中に手を滑り込ませる。
もう手に入れてしまおう。彼女の全てを余すところなく。
「こうと決めちゃったアルバに何言っても無駄ね」
紫は諦めたようにそう呟き、けれど穏かに優しく笑みを浮かべながらアルバの背に両手を回した。
窓の外を見ていた男の視線は物憂げですらあった。
だが彼女の名を呼び、振り返った時にはそんな繊細な様子など微塵も残ってはいなかった。まるで切れ味の鋭い刃物の切っ先を思わせる光を浮かべた眼差しに、紫は激しく嫌な予感を覚えながらもなるべく平静を装ってみる。
「なにー?」
ソファにうつ伏せに横たわり、両足をぶらぶらさせていた紫は、肘を立てて頭だけでぐるりと窓際の方──アルバの姿がある方へと振り返った。
「少し話を聞きたいんだが、昨日の昼頃一緒にいた男は誰だ?」
かつかつと靴音を響かせて歩み寄ってくるアルバの様子に、紫は思わずソファの背に片手をついて体を起こす。
逃げられるものならば逃げ出してしまいたい。
だが果たしてこの男の前から逃げることが可能だろうか?
そして万が一今逃げおおせたとしても、捕まるのは時間の問題だろう。
短期決戦よすっぱりカタつけるわよ、と自分に言い聞かせながら紫はごくりと喉を鳴らし男を見た。
アルバは紫の足元──ソファの隅にに浅く腰掛け、両手を組み合わせると肘を膝の上に置く。
「昨日のお昼は会社の同僚とご飯くってたわよ」
「男だな」
「男だったわね」
「…………」
「…………」
奇妙な空気が場を支配した。
じっと見つめ合う二人の間にあるのは、艶っぽい雰囲気などでは決してない。
あえて言うとすれば、それは緊張感か。
沈黙に耐えかねたのはやはり紫が先だった。
「アルバくんちょっとお話しましょうか」
「確かに話し合いの必要がありそうだな」
「ではまず私の意見から言ってもよろしいでしょうか?」
「聞こう」
「ハッキリ申し上げますと、私は毎日お仕事している人なワケです。会社勤めなんてしてますと男女関係なく付き合いというものが発生しますので、昼ごはんくらい普通に男の人とだって食べることがありますし、下手したら夜飲みに行くことだってあるワケですよ」
「それにいちいち口を挟もうとまでは考えてないが」
「えー、んじゃ一体何怒ってんのよ……」
「最近の会社の同僚とやらは、男女構わず腰を抱き肩を抱き寄せて実に恋人同士のような至近距離で会話するようだな」
「あー……」
そういえばそんなこともあった気がするが、ただのスキンシップと気にも止めてはいなかった。
よりにもよってそこを見られたのだとしたら運が悪い。
だが必死に言い訳だけはしてみよう。無駄な気もするが。
「ええとですね別に好きとか嫌いとかではなくて、こーこっちの国きてからいまいち他人とのスキンシップ時におけるボーダーラインが曖昧になってるところがありまして、こーつい、ああこんなもんなのかなーとか思って見逃すというか見過ごしてしまうというか──」
「一つ思い出してもらいたいことがある」
「オーケーかかってこいや」
「私が先週同じことをしたら君はどうしたか覚えているか?」
「…………」
「…………」
「……痴漢変態呼ばわりしてあまつさえ暴力行為に及びました」
「忘れていた訳ではないようだな」
「そりゃもう。記憶力はいいほうだし」
「で、ここからが本題だ」
「聞きましょ」
「昨日の男の行為を笑顔で許せて、私にはあの仕打ちだ。納得いかないにも程がある──そのあたりを一度じっくり説明してもらおうか」
説明、と言われてもつい手が出てしまうのだから説明のしようもない。
だがしいて言えば昨日の男が同僚であり格闘などとは無縁の一般人だということくらいか。
「同僚殴ったら仕事に差し支えるでしょ。それにアルバなら殴ったって避けるのわかってるし。まあ避けられてもムカつくからきっと蹴るけど」
「君は避けられる相手なら殴るし蹴るのか?」
「え、殴られたの根に持ってるもしかして?」
案外執念深いのね、と続いた紫の言葉に、アルバは彼にしては珍しく小さな溜息をつく。
人間臭いその仕草に、紫が僅かに目を見張った。
「殴ったの怒ってんの? ごめんね──そんな怒んないでよ」
「いや、その件じゃない」
「じゃどの件よ」
「君は同僚だのに関しては異様に無防備なところに腹を立てているだけだ」
だいたい、昨日アルバが見かけた男は気づいていたのだ。二人を見つけたアルバの姿を。
そしてそれに気づいてあえて紫の肩を抱き耳元に口を寄せて囁くように会話した──まるでアルバに見せ付けるように。
その場こそ紫の立場を考えてその場を立ち去ったが、あんなものを見せられて機嫌よくいられる筈もない。
それを知らない紫はわかんないなーと首を傾げる。
「そもそも、別にそーゆー関係じゃないアルバが怒るのがもうわかんないのよねー……」
ぴくりと、アルバの柳眉が跳ね上がる。
ああそういえば確かに告白などというものもしていない、好きだと囁いたこともない。
かといってそれらしいことを匂わせたことがないかというとそうでもないのだ。子供でもないのだからだいたい察していても良さそうなものではある。
頭の回転は早い方であるだろうし、生まれた国から遠く離れたこの街まで派遣されて仕事をするくらいならば有能でもあるのだろう。
だとするとこの鈍さは演技という可能性すらある。
だが、手がない訳でもない。
「よく分かった」
「何が?」
「君が何もわかってないことがよく分かった」
「なんか失礼な物言いよねソレ」
真っ直ぐソファに腰かけていたアルバが紫へと向き直る。ソファの背とアルバとの間に投げ出されていたほっそりした足首を肩近くまで持ち上げた。
「な……ちょっと何してんのよ変態!!」
当然足首を持ち上げられれば、片手だけで体を支えていた紫の体がソファへと沈む。それを片手で押さえ込み、アルバは膝のすぐ脇に唇を落とすと、太股まで舌を滑らせる。
「……っつ……やっ……!」
ぴくりと、震えるような反応にアルバの笑みが深くなる。
内股につけた幾つかの所有印──自分でつけたものながら、白い肌の上の赤い印はひどく扇情的でアルバを昂ぶらせた。
足首を開放する代わりに、両足の間に膝を割りいれ、細い体を組み敷く。
「一体何よ、突然」
潤んだ瞳で睨むように見上げてくる紫の瞼に口付けた。
「そういう関係、とやらになればいいんだろう」
「アルバ、私たちいいお友達でいられると思わない?」
ひくりと笑みを強張らせた紫の発言は、明らかに牽制なのだろうがそれを受け入れる気など全くなかった。
「いや、無理だな」
もう手に入れてしまおう。彼女の全てを。
アルバは赤いサングラスを外し無造作に放った。
この期に及んで抵抗しようと足掻く手を捕まえて指先に口付け、アルバが囁く。
「教えてあげよう君に──私がどれだけ君を愛しく思っているかを。時間はまだたっぷりある──そして幸いなことに夜は長い」
ゆるりと、フローリングの床に落ちたサングラスを見ていた紫の目がアルバを見上げる。
観念したように小さく溜息交じりに紫が言った。
「明日仕事なんで、手加減お願いします──」
「それも無理だ」
深く口付け舌で歯列をなぞりつつ、紫の服の中に手を滑り込ませる。
もう手に入れてしまおう。彼女の全てを余すところなく。
「こうと決めちゃったアルバに何言っても無駄ね」
紫は諦めたようにそう呟き、けれど穏かに優しく笑みを浮かべながらアルバの背に両手を回した。
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