異世界の神器
私は自分の前世の事を踏まえながら、きちんと伝えた。
私が前世で生きた世界は、戦乱の世の中。その世界は、ある伝説があった。
世界が昏迷を極めた時、七振りの神器が地上に顕れる。その七振りの神器を手にした七名の戦士が、世界を平定するという。
まあ、在り来たりなテンプレートだけど、実際生きていた世界だったから、笑ったら許さないよ。
で、その七振りの神器の内の二振りが【死出の羽衣】と【闇水】。
二振りの本当の保持者は、生命の神様。生と死を司る神様なのです。
二人と出会ったのは今から約二千年前。ん?正確には、1999年と245日?違う?243日?……そんな細かい日数どうでも良いじゃないさ。二・三日ズレても対して変わんないってばっ!
で、私は闇水と契約交わして、契約者になったわけ。因みに再契約は交わしたから、問題ないよ。
尤も、問題は羽衣さんかな。
彼女、契約者がいないからね。だから、彼女見ると怖いんじゃないかな。例えるなら、鞘の無い鋭利な刃状態だからねえ。人が作った武器なら感じなかっただろうけど、二人共に神様が作ったから、基礎能力値が段違いだし、生きた年数も段違いな上、羽衣さんの役割が、まあ………こっちじゃ【死神】のような事を勤めてる訳だから、皆、首に刃当てられてるような感覚してんでしょ?
あ~、やっぱし。
ん?何で私は無事なのかって?
闇水と契約してるから、だよ。
担い手であるからね、護られるワケ。
次いくよ。契約者って、神器に対する鞘のような感じなの。契約者が居て、初めて剥き出しの力が抑えられる。制御されて、無害な状態になるの。で、本来、世界が違うから契約者が居ない筈だったんだけど、皆は私が呼び出した存在だから、契約執行出来ちゃうのだよ。これが。
という訳で、契約できる刀剣男士は一人だけ。出来るのは、全く彼女を怖がらない存在。ぶっちゃけ、彼女の隣に座る石切丸ね。
『え?』って、石切丸、気付いてないの?
羽衣さんに石切丸の上に落ちたじゃない。その時、事故とはいえ、接触した。契約者たる存在じゃないと、触れたら死ぬのよ、これ真面目にマジだからね。トドメに、羽衣さん見て怖いと欠片でも思った?ないでしょ。
という訳で、契約、宜しく。
じゃないと、他の皆は怯えるだけだよ。
「……………、解った」
「そうこなくっちゃっ!」
溜息混じりで了承してくれた石切丸に、マジ感謝。
闇水と手を取り合って喜ぶ。
「………宜しいのですか?」
「仲間の為だしね。
どちらかといえば、此方が尋ねたい。羽衣さんは、私で良いのかい?私は人間に作られて長く時を重ねたからこそ末端であるけれど神になった存在だ。ハッキリ言えば、私の方が分不相応だと思うのだけどね」
「『確かに不相応ですね』と言われたら、納得しますか?」
「………意地が悪いね」
「私は、貴方を選びます。
私と闇水が此方に現れた時、気付いて受け止めようとしてくれた、そんな優しい貴方ならば、私は“私”を委ねますわ」
「……………あ~、参ったね、気付いていたのかい?」
「ふふ」
ああ、成程納得。
だから、あんな状態だったんだ。まあ、受け損ねたみたいだったけど。
ちょっと、いい雰囲気だよね……。
__うん。これはお膳立てをしなければ!!
何か、ある使命にかき立てられる。
実際、石切丸と羽衣さんは絶対的相性が良いだろう。片や、落ち着きが有り、他の審神者仲間からも“石切パパン”等とお父さん発言が高い、頼りがいがある御神刀男士。片や、七振りの神器の中で一番母性愛が強く、慈愛も深い。何より、前世の私を、母の様に姉の様に面倒を見てくれた方である。遣り取りが、まるで熟年夫婦の様になるかもしれない。……………あ、何か見てみたいわ、コレ、マジで。
「じゃあ、双方納得したかな?」
「ええ」
「それで、主。どうやって契約するんだい?」
良っくぞ聞いてくれましたぁぁぁあああっっっ!!!!
「?」
闇水と羽衣さんの同時首コテン、萌~~~~~~っっっ!!!!
__ハッ、ついついテンションMAXになってしまった。
はい、そこ、石切丸。“何だコイツ気味悪い”と言うような顔しないの!
「石切丸、“役得”と“痛い”のと、どれが良い?」
「何だい、それは?」
「“役得”と“痛い”のと、どれが良い?」
「いや、だから……」
「“役得”と“痛い”のと、ど・れ・が・良・い・?」
「…………………………………じゃあ“役得”で………」
まあ、まあまあまあ!!
狙い通りっ!!
痛いのは拒否るよね!!
というか、盛大に押し切ったんだけどね!!
「日和様?
きちんと御説明なさらないんですか?」
「別に害は無い」
「では、初めてではないと?」
「初めてじゃない?」
「それは御説明なさった方が宜しいのでは?」
「全力で拒否かねないから駄目」
「ちょっと待ちなさい。一体私に何をさせようと!?」
「いやだな、石切丸。石切丸は何もしないよ、何も。羽衣さんがするだけだし」
そう。石切丸は何もしない。
唯、受け入れれば良い、それだけ。行動するのは羽衣さんだ。
「大丈夫だって、石切丸。受け入れるだけ、だから」
まあ、最後はアレだけど……。私も通った道だ。その時は【男性】だったしね。男性視点では、役得なのだよ。
「では、羽衣さん、お願い致します」
「困った方ですね。
承知致しましたわ」
そうして羽衣さんは、膝の上に座っていた闇水を私に預け、スッ、と立ち上がった。
石切丸の目の前に片膝を付いて、右手を胸に当て、深く頭を下げる。
「鍛冶の神が創りし六振り目が神器、【死出の羽衣】。今この時より、我が身と我が命、貴方様に捧げます」
余りにも尊厳の高い空気に、シーンと静まり返る大広間。
そして静かに顔を上げた時、彼女は石切丸に手を伸ばし掴んだと思ったら、一気に近づいて唇を重ねた。
これにはもう、私と闇水以外は驚いて驚愕の叫び声が上がった。因みに石切丸は目を見開いて、思わず口を開いたが、其れこそ思う壺。舌が入り込んだ時にはもう、石切丸の身体は身動きが取れない。その前に硬直してるかな?まあ、見ている私には一瞬の攻防だが、石切丸にはそうではなかっただろうなぁと、他人事の様に思う。
因みに私の時はといえば、前世で闇水と“契約のキス”をした時は何とも思わなかった。だって、まだ子供だったから。でも、その後、青年の時にふと思い出して、真っ赤になり挙動不審になって闇水に心配させてしまったのは、まあ、懐かしい記憶だ。
「………これにて、契約は終了致しました。今この時より、貴方様が私の所有者となります。どうぞ御随意にお使い下さいませ、旦那様」
間近で微笑みを浮かべる羽衣さんとは対象的に、石切丸は口を片手で覆い、真っ赤である。そりゃあもう、茹で蛸の如く。
「おめでとう、石切丸」
「契約終了ですね、お姉様」
パチパチと拍手するのは私と闇水のみで。
「大丈夫ですか?」
「/////(何も言えない石切丸)」
原因が解っているが元凶でもある、心配している羽衣さんと、キスだけならまだしも、舌まで舐められた所為でもう、全身茹で蛸の如く真っ赤になり動揺しまくっている石切丸。
あんぐりと口を開けて呆然しているこんのすけ。
舌まで入れられているとは分からなかったが、石切丸の様子をみてキスをされたのが解って頬を染めて唖然としている刀剣男士達。特に耐性のないウブな一部は真っ赤になっている。
うん、どう収集しようかな?
私は笑って現実を誤魔化した。
時間が解決するかなと、他力本願で。
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私が前世で生きた世界は、戦乱の世の中。その世界は、ある伝説があった。
世界が昏迷を極めた時、七振りの神器が地上に顕れる。その七振りの神器を手にした七名の戦士が、世界を平定するという。
まあ、在り来たりなテンプレートだけど、実際生きていた世界だったから、笑ったら許さないよ。
で、その七振りの神器の内の二振りが【死出の羽衣】と【闇水】。
二振りの本当の保持者は、生命の神様。生と死を司る神様なのです。
二人と出会ったのは今から約二千年前。ん?正確には、1999年と245日?違う?243日?……そんな細かい日数どうでも良いじゃないさ。二・三日ズレても対して変わんないってばっ!
で、私は闇水と契約交わして、契約者になったわけ。因みに再契約は交わしたから、問題ないよ。
尤も、問題は羽衣さんかな。
彼女、契約者がいないからね。だから、彼女見ると怖いんじゃないかな。例えるなら、鞘の無い鋭利な刃状態だからねえ。人が作った武器なら感じなかっただろうけど、二人共に神様が作ったから、基礎能力値が段違いだし、生きた年数も段違いな上、羽衣さんの役割が、まあ………こっちじゃ【死神】のような事を勤めてる訳だから、皆、首に刃当てられてるような感覚してんでしょ?
あ~、やっぱし。
ん?何で私は無事なのかって?
闇水と契約してるから、だよ。
担い手であるからね、護られるワケ。
次いくよ。契約者って、神器に対する鞘のような感じなの。契約者が居て、初めて剥き出しの力が抑えられる。制御されて、無害な状態になるの。で、本来、世界が違うから契約者が居ない筈だったんだけど、皆は私が呼び出した存在だから、契約執行出来ちゃうのだよ。これが。
という訳で、契約できる刀剣男士は一人だけ。出来るのは、全く彼女を怖がらない存在。ぶっちゃけ、彼女の隣に座る石切丸ね。
『え?』って、石切丸、気付いてないの?
羽衣さんに石切丸の上に落ちたじゃない。その時、事故とはいえ、接触した。契約者たる存在じゃないと、触れたら死ぬのよ、これ真面目にマジだからね。トドメに、羽衣さん見て怖いと欠片でも思った?ないでしょ。
という訳で、契約、宜しく。
じゃないと、他の皆は怯えるだけだよ。
「……………、解った」
「そうこなくっちゃっ!」
溜息混じりで了承してくれた石切丸に、マジ感謝。
闇水と手を取り合って喜ぶ。
「………宜しいのですか?」
「仲間の為だしね。
どちらかといえば、此方が尋ねたい。羽衣さんは、私で良いのかい?私は人間に作られて長く時を重ねたからこそ末端であるけれど神になった存在だ。ハッキリ言えば、私の方が分不相応だと思うのだけどね」
「『確かに不相応ですね』と言われたら、納得しますか?」
「………意地が悪いね」
「私は、貴方を選びます。
私と闇水が此方に現れた時、気付いて受け止めようとしてくれた、そんな優しい貴方ならば、私は“私”を委ねますわ」
「……………あ~、参ったね、気付いていたのかい?」
「ふふ」
ああ、成程納得。
だから、あんな状態だったんだ。まあ、受け損ねたみたいだったけど。
ちょっと、いい雰囲気だよね……。
__うん。これはお膳立てをしなければ!!
何か、ある使命にかき立てられる。
実際、石切丸と羽衣さんは絶対的相性が良いだろう。片や、落ち着きが有り、他の審神者仲間からも“石切パパン”等とお父さん発言が高い、頼りがいがある御神刀男士。片や、七振りの神器の中で一番母性愛が強く、慈愛も深い。何より、前世の私を、母の様に姉の様に面倒を見てくれた方である。遣り取りが、まるで熟年夫婦の様になるかもしれない。……………あ、何か見てみたいわ、コレ、マジで。
「じゃあ、双方納得したかな?」
「ええ」
「それで、主。どうやって契約するんだい?」
良っくぞ聞いてくれましたぁぁぁあああっっっ!!!!
「?」
闇水と羽衣さんの同時首コテン、萌~~~~~~っっっ!!!!
__ハッ、ついついテンションMAXになってしまった。
はい、そこ、石切丸。“何だコイツ気味悪い”と言うような顔しないの!
「石切丸、“役得”と“痛い”のと、どれが良い?」
「何だい、それは?」
「“役得”と“痛い”のと、どれが良い?」
「いや、だから……」
「“役得”と“痛い”のと、ど・れ・が・良・い・?」
「…………………………………じゃあ“役得”で………」
まあ、まあまあまあ!!
狙い通りっ!!
痛いのは拒否るよね!!
というか、盛大に押し切ったんだけどね!!
「日和様?
きちんと御説明なさらないんですか?」
「別に害は無い」
「では、初めてではないと?」
「初めてじゃない?」
「それは御説明なさった方が宜しいのでは?」
「全力で拒否かねないから駄目」
「ちょっと待ちなさい。一体私に何をさせようと!?」
「いやだな、石切丸。石切丸は何もしないよ、何も。羽衣さんがするだけだし」
そう。石切丸は何もしない。
唯、受け入れれば良い、それだけ。行動するのは羽衣さんだ。
「大丈夫だって、石切丸。受け入れるだけ、だから」
まあ、最後はアレだけど……。私も通った道だ。その時は【男性】だったしね。男性視点では、役得なのだよ。
「では、羽衣さん、お願い致します」
「困った方ですね。
承知致しましたわ」
そうして羽衣さんは、膝の上に座っていた闇水を私に預け、スッ、と立ち上がった。
石切丸の目の前に片膝を付いて、右手を胸に当て、深く頭を下げる。
「鍛冶の神が創りし六振り目が神器、【死出の羽衣】。今この時より、我が身と我が命、貴方様に捧げます」
余りにも尊厳の高い空気に、シーンと静まり返る大広間。
そして静かに顔を上げた時、彼女は石切丸に手を伸ばし掴んだと思ったら、一気に近づいて唇を重ねた。
これにはもう、私と闇水以外は驚いて驚愕の叫び声が上がった。因みに石切丸は目を見開いて、思わず口を開いたが、其れこそ思う壺。舌が入り込んだ時にはもう、石切丸の身体は身動きが取れない。その前に硬直してるかな?まあ、見ている私には一瞬の攻防だが、石切丸にはそうではなかっただろうなぁと、他人事の様に思う。
因みに私の時はといえば、前世で闇水と“契約のキス”をした時は何とも思わなかった。だって、まだ子供だったから。でも、その後、青年の時にふと思い出して、真っ赤になり挙動不審になって闇水に心配させてしまったのは、まあ、懐かしい記憶だ。
「………これにて、契約は終了致しました。今この時より、貴方様が私の所有者となります。どうぞ御随意にお使い下さいませ、旦那様」
間近で微笑みを浮かべる羽衣さんとは対象的に、石切丸は口を片手で覆い、真っ赤である。そりゃあもう、茹で蛸の如く。
「おめでとう、石切丸」
「契約終了ですね、お姉様」
パチパチと拍手するのは私と闇水のみで。
「大丈夫ですか?」
「/////(何も言えない石切丸)」
原因が解っているが元凶でもある、心配している羽衣さんと、キスだけならまだしも、舌まで舐められた所為でもう、全身茹で蛸の如く真っ赤になり動揺しまくっている石切丸。
あんぐりと口を開けて呆然しているこんのすけ。
舌まで入れられているとは分からなかったが、石切丸の様子をみてキスをされたのが解って頬を染めて唖然としている刀剣男士達。特に耐性のないウブな一部は真っ赤になっている。
うん、どう収集しようかな?
私は笑って現実を誤魔化した。
時間が解決するかなと、他力本願で。
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