異世界の神器

私は、目を開けた。
石切丸が青白い顔で、心配そうに私を見ている。
霊力を注いでいた大鎌は、何も言わない。それはそうだ。
これは私の記憶により造られた、模造品のようなもの。
記憶を取り戻したから、解る。
分霊でもなんでもない。私の記憶が引き起こした、結果の残骸。
それでも、魂でコンタクトが取れたのは、記憶が蘇る状態になっていた事で、闇水との絆が復活しかけていたから。しかし、何故闇水ではなく死出の羽衣だったのかは、彼女がメンテナンスを受けて寝ていたからであり、闇水の素材の材料の中に彼女の欠片が素材が含まれていたからで__。
二人は、私に力を貸すと誓った。
その事に私は断ったけれど、二人は両親と上司に事の次第を伝えて、許可までもぎ取ってきたのだから、もう断れない。行動力半端ないです。
呼び方も教わった。
だから、私は、その大鎌を手に取った。
「主?!」
石切丸は止める。
でも大丈夫。
大鎌は力を奪う。その仕組みは、彼女【死出の羽衣】が実際にしている力の一つ。つまり、私の記憶が反映されているだけ。私自身には影響はないのだ。最初見た時気付かなかったのは、私自身が危険な感じを受けなかっただけではなく、無意識で、触れても自身を傷つけないとわかっていたのだろう。
私は大鎌を媒体とする為に、掲げる。
これから行うのは召喚の儀。大鎌を媒体として異界と異界を繋ぐ扉を築く。そして通路を作り、呼び込むのだ。



「彼方より此方へ、願い奉る」



私の前世は、神器の一振り【闇水】と契約し、死する瞬間まで契約したままだった。つまり、契約を解除していないままで死んでしまったという事。一応、契約者が死亡すると自動的に契約は解除為されるのだが、魂には一本の糸が繋がっているという状態になっている。その糸を、召喚の儀を使い太くし、道とするのだ。その道を伝い、二人はこの世界に現出する。
双方からの力の干渉に、道が繋がっている感覚を得た。
大鎌が形を崩し、ただの力の奔流と成す。



「異界に伝わる神器。
鍛冶の神が創りし、七振りの神器。
生命の神に仕えし二振り、生命の水源の守護者である加護の護身刀【闇水】、生命を狩り取り導く大鎌【死出の羽衣】」



名を紡ぎ、固定する。
扉が開く。


「御身を降ろし、その力をお貸し下さいませ」


その瞬間、____爆発が起こった!!










ゲホゲホッ。
思いっ切り咳き込む私。
いや、まさか、爆発するなんて思わないでしょ。
鍛刀部屋の扉を開け、空気を入れ替える。流石はおかん。行動が早い。
私はといえば、長谷部に助けられたまま、まだ鍛刀部屋にいる。長谷部は私を離さないでいてくれるから、安心感が強い。
煙が大分薄くなった頃、皆の姿を確認する。石切丸を除いてその姿を確認できたが、あれ、石切丸は何処に?
あ、そういえば召喚の儀の時、一番近くにいたよ。え、ヤバくない?



『ビックリしました~。まさか、爆発するなんて』
『怪我は無い、闇水?』
『大丈夫ですー、お姉様~!!』



あ、闇水と羽衣さんも無事らしい。
煙が薄くなった処で、座り込む【死出の羽衣】と、その腕の中に居る【闇水】の姿を確認してホッとしたが、その羽衣さんの下に、………石切丸が下敷きになっていたので、流石に『あっ……』と言葉を漏らした。
仰向けで床に横たわる石切丸の腹の上に、ローブの合わせ目から細い脚を曝した羽衣さんと、腕の中で姫抱っこされている闇水。うん、ちょっと石切丸可哀想というか、もう少し下だったら石切丸の腰だったね。そこは駄目だよ、色んな意味で、イケナイ。
「あの………、退けてくれないかな?」
「「え?」」
羽衣さんと闇水が同時に下に視線を移すと、石切丸の姿が。
「「キャーッ!?!」」
慌てて二人揃って床に座った。行動が速いね。
「申し訳御座いません。重かったでしょう?」
「ごめんなさ~い!」
「ああ…、うん、大丈夫だから」
上半身を起こした石切丸は二人を交互に見る。
「君達が呼ばれた付喪神なのかな?それにしては………」
「付喪神ではありませんね」
「おや……。………貴方が__「石切丸」」
私は会話に割って入った。
だって、ねえ……。いい加減、闇水を抱き締めたいんだよ、私は!!
「闇水、おいで」
「はい、ご主人様~っ!!」
ピョンと抱き着いてくる闇水を抱きしめて、私は闇水のコンパクトさを堪能する。
この可愛さ、もうたまんない!!
だが、誓って宣言する。私は【ロリコン】でも【ショタコン】でもないからね!!!!
闇水はコンパクトなんだ。
短刀より幼い姿なんだ。
柔らかい頬に頬を合わせて、スリスリと合わせる。『きゃ~♡』と可愛い声を上げてすり寄る闇水も、また可愛い!!
「まあ。微笑ましい光景ですねぇ」
「……そうだね」
「ええ」
と、会話している石切丸と羽衣さん。
何となく、二人の相性は良いと思った。






さて、つい久しぶりの再会でテンションMAXだったのを落ち着かせて、先ず、ちょっとした紹介を。
まあ、場所は移動して大広間である。
ただその際、刀剣男士が怯えていたのが解ったが、原因は一応知っている。大概、アレしかない。怯えていない様子を見せているのは石切丸のみという訳で、彼を羽衣さんの隣に座らせ、闇水は彼女の膝の上に配置。近侍の長谷部は、私の傍に置いた。
全員が揃った所で、対面でこんのすけと代表の歌仙を筆頭に刀剣男士と向かい合う。
「審神者様、紹介をお願いします」
「そうだね。じゃあ、紹介ね。
先ず、此方の全身黒尽くめは、【死出の羽衣】さん。あ、羽衣さん、せめてフードは取ってくれるかな?」
「分かりました」
フードを取り露わになった顔は、日の光にキラキラ煌めく白銀の髪。ただ、目の部分は綺麗な模様と細工が施された金の仮面で覆われている。しかし、其れでも整っていると思わせた。
「初めまして。【死出の羽衣】と申します。言いにくいでしょうから、【羽衣】で構いませんわ。よろしくお願い致しますね」
優しく響く声音。そして、微笑みを浮かべているだろう口元。仮面で見えないのが残念だ。
「で、羽衣さんの膝の上に座っているのは【闇水】」
「はい。【闇水】です。初めましてぇ!お姉様共々、宜しくお願い致しま~す!」
闇水は眩しい笑顔を浮かべて、元気よく挨拶。ああ、可愛い!!
「……審神者様、もしや、刀剣“女士”ですか?!」
「違う違う。簡単に分かり易く説明するとね、このお二方は“鍛冶の神様が生み出された神器”です。異世界だけど」








『__________はああああぁぁああっっっ!?!?!?!』







うん、驚きご尤も。






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