異世界の神器

先ず、自分の目を擦る。その後、頬を抓る。
痛い。
夢ではない。
という事は、現実。
まさか、刀でも槍でも薙刀でもないものが出来上がるとは__。
あ、でも、これは、薙刀や槍の部類に入るのかな?
と、兎にも角にも、呼び起こさないとねえ………。
「審神者様、やりましょう」
「そうね、こんのすけ」
こんのすけの言葉に、私は頷いた。
「待つんだ」
手に取ろうとした所で、石切丸がそれを止めた。何故だろうと彼を見上げると、随分眉間に皺が寄っている。
「如何したの?」
「主は触らない方が良い。これは、人には良くない」
「え?
ど、どういうこと?」
「武器自身は問題ないが、強く死を纏り付かせている。生命ある全てを死に向かわせるような、ね。よくもこんな……。だから私が持つよ。主は武器に霊力を送ってくれないかい」
え、それって、石切丸もヤバイんじゃないかい?てか、ヤバイでしょ!?
「私は御神刀だからね。耐性はあるよ。でも、なるべく早くお願い出来るかい」
私は何度も頷いた。
だって、呼び起こす事はしなければならないから。止める事は出来ないのだ。
それは、こんのすけがこの事を政府に報告したから。当たり前だ。新たな刀剣男士の存在が露わになったからだ。よって、その報告の返答は、必ず呼び起こし詳細を報告せよ。で。
私に拒否する事は出来ない。
最初は、新たな刀剣男士の主第一号になれるかもと喜んだのだが、これでは半減もといマイナスだ。石切丸を失う可能性があるのかもしれないのだから。
「石切丸、直ぐ終わらせるから」
「頼んだよ」
石切丸は私の前に大鎌を横にして持つ。その柄に手を翳し、私は一気に霊力を注いだ。








大鎌はまだ応えない。
どれだけ霊力を注いでも、まだ目覚めない。
早く、早く、早く。
石切丸の顔色も悪くなっていく。
いやだ。
いやだ。
いやだ。
いやだいやだいやだいやだいやだ。
失いたく無い!
誰一人、欠けさせない!!
あんな思いは、もうたくさん!!
お願い。
お願い。
お願い。
目覚めて下さい。
目覚めて下さい。
お願いします。
失いたく無いんです。










貴方に、会いたい。









桜が舞った。









現れたのは、顔を全身を黒いローブで覆い隠した刀剣男士だった。




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