異世界から審神者達がやって来ました
今此処にいる審神者方は、他の世界から来られた事。審神者になられる事を承諾していただいて、こちらに新人研修に来られた事。
先ずは大雑把ではあるが、丁寧な言葉で語られた。
「初めまして。ギルド【シャノワール】初代ギルドマスターを務めていました、【幻獣師】ファリスです」
「ども、【戦術師】ラーゼフォンだ」
「【竜狩人】グレンシードでぇ~す」
「【治療師】シャンファです。よろしく」
あっさり名前を名乗る四人に、刀剣男士は全員唖然とする。自分達は神である。それがどういう事か、まるで解っていないのか、と。
「御四方の名前は本名ではなく、【ギルド】という組織に所属している時に使っていた名前だそうです」
「ぎる…ど?」
「【ギルド】というのは簡単に説明しますと、依頼された仕事を請け負う組織になります。こちらでは【本丸】がそれに値しますね。【ギルド所属者】が皆様方刀剣男士様に、【ギルドマスター】が、審神者様を指し、【ノルマ】が依頼された仕事、になります。余談ですが、政府は彼等の世界では【評議会】になるとの事です」
「【ギルド】に、本名を登録する者は余りいません。登録するのは、天涯孤独な者とか、そういった周りに何もいない孤独な者か、ただの馬鹿か、になりますね。
【ギルド】には数多の依頼が持ち込まれます。簡単な者もあれば、命が幾つあっても足りない危険なものまで、千差万別、様々です。時には関係ない者まで巻き込まれる場合もありますので、素性を隠す名目・身内の危機回避名目で偽名を登録するのですよ。
今回、こちらの世界の政府の方から、正式な依頼として受理しています。本来ならば、依頼料の三分の一を前金で、残りを任務達成後に支払って貰う形をとっているのですが、僕達四人を指名されました。その場合、指名料も上乗せされるのですが、それを踏まえた上で、全額前払いでそれも結構な金額で払われましたから」
「あちらでは、お金が完全に違うので、政府が金目になるものを持っていったのです。そうしたら、原石が彼等には高価なものだったらしく」
「そうですね。僕達の世界では原石は貴重な物で、特にギルドに所属していればその価値も上がります。
原石は特殊な加工をしますと、身を護る【守護法石】になります。用途は様々ですが、中には身代わり効果もある貴重な法石まで製石出来ますので、本当に有り難かったですね」
「金に目が眩んだ、てか?」
皮肉を込めた物言いに、幻獣師は否定せず頷いた。
「そうですね。否定はしません。すぐその原石を加工師に頼みましたしね。
でも、それは、これからのギルドの為に必要な物です。四人も一気に抜けるのです。それも、いつ帰る事が出来るかわからない、言っては何ですが、胡散臭い依頼を請け負ったのです。ならば、僕等がいなくなった後の対策を講じるのは当然でしょう。僕達にとって【ギルド】は【家族】であり【帰る家】なのですから」「【ギルド】ってのは、俺達のような天涯孤独な者や、ならず者達にとっては大事な【帰る場所】だからな。まあ、全ての【ギルド】がそうというわけじゃあねぇ。中には、利害一致や主従関係様々な理由が【ギルド】の数ぶんだけ存在する。俺達は、その一例に過ぎない。お前等には関係ない話だがな」
そう言って、肩を竦めた男審神者Bは再び口を閉ざした。どうやら話し合いは男審神者Aに任せる気でいるスタンスを崩すつもりはないようだ。女審神者A・Bも、口を閉ざしたまま二人の後ろに座っている。まあ時々、それぞれの【ビースト】の頭を撫でる動作をするぐらいだ。
「今日から一ヶ月はこちらでこの世界の事を勉強しなければなりませんので、刀剣男士の皆さんは自由にしてても構いません。ノルマも構わないと、政府の承諾も取りましたから(脅して)。
僕達は離れで生活しますので、手入れをして欲しいと自分で思った時に声を掛けて下さい。勿論、強襲・奇襲・襲撃等もなさって構いませんからね」
………………………。
え?
「幻獣師様あああああっ!?!?!」
「おや?どうしました、こんのすけ?」
「何ぶっちゃけちゃってるんですかあああっ!?!」
「別に大した事ではないでしょう?」
「大した事です大した事です大した事です大した事です大した事なんですっ!!」
ダンダンと前足を机に叩きつける。しかし迫力はない。タンタンと可愛い音になっているので、逆に可愛い印象しか受けない。
「こんのすけ。彼等は前任者である審神者を殺しました。そして、先程、僕達を殺そうとしました。つまり、それ程に傷が深い怨みも深い。違いますか?
なら、消化させた方がいいでしょう。
そういう事には慣れてますし、場数も踏んでいますから、心置きなく殺りに掛かって大丈夫です」
「名案とばかりに清々しい笑顔で宣るなぁぁああああっっ!!!」
とうとう敬語がすっ飛んだこんのすけ。そして刀剣男士達も、内容だけに困惑してしまう。
普通なら言わないだろう堂々とした宣言に、どうしていいのか分からないのだ。
それに、前任者の審神者は最初は真面目にやっていたのだ。しかし、段々と戦い等すべての仕事を刀剣男士やこんのすけに押し付け、自身は自分の欲望のままに行動していた。安全な場所で指示を出し、高見の見物。傷つこうがお構い無しに、罵倒するのも当然とばかりに──荒んでいった。尤も、そんなのは序ノ口で、解放寸前の時はもっと最悪であった。とにかくだ、安全な場所に居るのが普通なのだ。他の審神者だとてそうなのだから。
なのに、なのに。
この異世界から来た四人の審神者達は、危険に身を置く事を良しとしている。こんなのは、こんなのは、初めてで――、理解出来ない。
「こんのすけ、喉痛めますよ」
「気遣うのはそこじゃねぇええっ!!」
ごもっとも。
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先ずは大雑把ではあるが、丁寧な言葉で語られた。
「初めまして。ギルド【シャノワール】初代ギルドマスターを務めていました、【幻獣師】ファリスです」
「ども、【戦術師】ラーゼフォンだ」
「【竜狩人】グレンシードでぇ~す」
「【治療師】シャンファです。よろしく」
あっさり名前を名乗る四人に、刀剣男士は全員唖然とする。自分達は神である。それがどういう事か、まるで解っていないのか、と。
「御四方の名前は本名ではなく、【ギルド】という組織に所属している時に使っていた名前だそうです」
「ぎる…ど?」
「【ギルド】というのは簡単に説明しますと、依頼された仕事を請け負う組織になります。こちらでは【本丸】がそれに値しますね。【ギルド所属者】が皆様方刀剣男士様に、【ギルドマスター】が、審神者様を指し、【ノルマ】が依頼された仕事、になります。余談ですが、政府は彼等の世界では【評議会】になるとの事です」
「【ギルド】に、本名を登録する者は余りいません。登録するのは、天涯孤独な者とか、そういった周りに何もいない孤独な者か、ただの馬鹿か、になりますね。
【ギルド】には数多の依頼が持ち込まれます。簡単な者もあれば、命が幾つあっても足りない危険なものまで、千差万別、様々です。時には関係ない者まで巻き込まれる場合もありますので、素性を隠す名目・身内の危機回避名目で偽名を登録するのですよ。
今回、こちらの世界の政府の方から、正式な依頼として受理しています。本来ならば、依頼料の三分の一を前金で、残りを任務達成後に支払って貰う形をとっているのですが、僕達四人を指名されました。その場合、指名料も上乗せされるのですが、それを踏まえた上で、全額前払いでそれも結構な金額で払われましたから」
「あちらでは、お金が完全に違うので、政府が金目になるものを持っていったのです。そうしたら、原石が彼等には高価なものだったらしく」
「そうですね。僕達の世界では原石は貴重な物で、特にギルドに所属していればその価値も上がります。
原石は特殊な加工をしますと、身を護る【守護法石】になります。用途は様々ですが、中には身代わり効果もある貴重な法石まで製石出来ますので、本当に有り難かったですね」
「金に目が眩んだ、てか?」
皮肉を込めた物言いに、幻獣師は否定せず頷いた。
「そうですね。否定はしません。すぐその原石を加工師に頼みましたしね。
でも、それは、これからのギルドの為に必要な物です。四人も一気に抜けるのです。それも、いつ帰る事が出来るかわからない、言っては何ですが、胡散臭い依頼を請け負ったのです。ならば、僕等がいなくなった後の対策を講じるのは当然でしょう。僕達にとって【ギルド】は【家族】であり【帰る家】なのですから」「【ギルド】ってのは、俺達のような天涯孤独な者や、ならず者達にとっては大事な【帰る場所】だからな。まあ、全ての【ギルド】がそうというわけじゃあねぇ。中には、利害一致や主従関係様々な理由が【ギルド】の数ぶんだけ存在する。俺達は、その一例に過ぎない。お前等には関係ない話だがな」
そう言って、肩を竦めた男審神者Bは再び口を閉ざした。どうやら話し合いは男審神者Aに任せる気でいるスタンスを崩すつもりはないようだ。女審神者A・Bも、口を閉ざしたまま二人の後ろに座っている。まあ時々、それぞれの【ビースト】の頭を撫でる動作をするぐらいだ。
「今日から一ヶ月はこちらでこの世界の事を勉強しなければなりませんので、刀剣男士の皆さんは自由にしてても構いません。ノルマも構わないと、政府の承諾も取りましたから(脅して)。
僕達は離れで生活しますので、手入れをして欲しいと自分で思った時に声を掛けて下さい。勿論、強襲・奇襲・襲撃等もなさって構いませんからね」
………………………。
え?
「幻獣師様あああああっ!?!?!」
「おや?どうしました、こんのすけ?」
「何ぶっちゃけちゃってるんですかあああっ!?!」
「別に大した事ではないでしょう?」
「大した事です大した事です大した事です大した事です大した事なんですっ!!」
ダンダンと前足を机に叩きつける。しかし迫力はない。タンタンと可愛い音になっているので、逆に可愛い印象しか受けない。
「こんのすけ。彼等は前任者である審神者を殺しました。そして、先程、僕達を殺そうとしました。つまり、それ程に傷が深い怨みも深い。違いますか?
なら、消化させた方がいいでしょう。
そういう事には慣れてますし、場数も踏んでいますから、心置きなく殺りに掛かって大丈夫です」
「名案とばかりに清々しい笑顔で宣るなぁぁああああっっ!!!」
とうとう敬語がすっ飛んだこんのすけ。そして刀剣男士達も、内容だけに困惑してしまう。
普通なら言わないだろう堂々とした宣言に、どうしていいのか分からないのだ。
それに、前任者の審神者は最初は真面目にやっていたのだ。しかし、段々と戦い等すべての仕事を刀剣男士やこんのすけに押し付け、自身は自分の欲望のままに行動していた。安全な場所で指示を出し、高見の見物。傷つこうがお構い無しに、罵倒するのも当然とばかりに──荒んでいった。尤も、そんなのは序ノ口で、解放寸前の時はもっと最悪であった。とにかくだ、安全な場所に居るのが普通なのだ。他の審神者だとてそうなのだから。
なのに、なのに。
この異世界から来た四人の審神者達は、危険に身を置く事を良しとしている。こんなのは、こんなのは、初めてで――、理解出来ない。
「こんのすけ、喉痛めますよ」
「気遣うのはそこじゃねぇええっ!!」
ごもっとも。
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