刀剣乱舞 クロスオーバー
【三巻が始まる前】
「ナル、ちょっと話があるんだけど、今いい?」
所長室をノックする麻衣に、ナルが不機嫌さを隠さない様子で、姿を現した。
「……………何だ?」
「ごめんね、直ぐ終わるから」
そう言って、麻衣はポケットから折り畳んだ紙を取り出した。
「引っ越ししたの。で、これ、新しい住所」
「…解った」
そう言って受け取ったあと、ナルは直ぐに所長室に篭る。麻衣はそれを見送ると、直ぐに勉強を始める。明後日にテストがあるのだ、やらねば。
こうして、この話は一旦終わりをみせたが、暫くして再びその話は持ち上がった。
それは、イレギュラーズが全員揃った日の午後の事だった。
麻衣が薬研を伴い事務所に来た日のことである。
珍しく一人で出勤しなかったなあと思い、滝川が尋ねると、『引っ越したか、ちょっと過保護になって』と麻衣から返事が帰ってきた。
「引っ越したのか?
お前、大変だったろう。言えば手伝ったのに」
『皆がいるから大丈夫だったよ』と返事を返して、麻衣は給湯室でお茶を用意し始めた。薬研も麻衣に伴い、手伝う。
「ちゃんと引っ越しの挨拶もしたし、問題ないよ。それでね、実は、今日薬研くんと一緒に来たのはね、お土産を持ってきたからなんだ。
皆で食べようと思って、今用意してるから、ちょっと待ってて」
そうして全員のお茶を用意し終え、テーブルに出されたのは、緑茶と和菓子であった。練りきりで作られた、可愛らしいお菓子に、全員の目が釘付けになる。
「綺麗どすなぁ…」
「麻衣、どうしたの、これ?」
「高かったのではありませんか?」
「そりゃあ買えば高いけてど、手作りだよ。皆で作ったんだ。アパートじゃ狭いから出来なかったんだけど、今の所広いから、久しぶりに皆で作ったんだよ。だから皆にもお裾分けです。あ、勿論、味は保障しま~す」
高級和菓子にも見劣りしない和菓子を作った、て………。
「大丈夫なんですの?」
真砂子が疑わしいという眼差しを向けてくるが、麻衣は気にせずに自分も座り、薬研も隣りに座る。
「昨日、皆に好評だったもん。それに、料理得意な光忠さんと歌仙さんの監修で薬研くんの兄弟達と作ったんだよ。いっぱい作ったから食べてもらおうと思ったのにさ。嫌なら食べなくて良いよ、真砂子」
「食べないとは言ってませんわ」
お菓子をつまみ、一口食べる。
「…美味しいですわね」
程良く甘く、調度良い。
歌仙という者にはまだ会った事は無いが、光忠という男には、料理が得意だと、初めて紹介してくれた時に麻衣が教えてくれた。彼は背も高く眼帯していたが、物腰が柔らかい格好いい成人男性という印象で。雑誌モデルでもやっていそうだった。そんな彼が《料理男子》であるとは、ちょっと驚いたものだ。何せ、見た目は、全然そんな風には見えないからだ。それを言うなら、滝川も《お坊さん》には見えないチャラ男ではあるが。
麻衣の家の家事一切を引き受けているらしい彼は、麻衣の料理の先生も引き受けているらしい。
「当然。光忠さんと歌仙さん監修で不味いものが出来るわけないでしょ」
「だよな、大将」
「ねぇ~」
薬研と顔を見合わせて笑い合う麻衣に、この場に居る全員が微笑む。
そうして全員が和菓子に舌鼓を打っていると、何処に引っ越したのかという話になった。
「んと、マンションだよ。それも5LDKです。広いから、皆とテレビ見たりゲームしたり出来るから楽しいんだ」
「分譲マンションを買ったんだ。前のとこじゃ、大将が危なくてなぁ」
「危ない?
何かあったの?」
薬研があらか様に溜息を吐いたのを見て、何やら不穏な気配を感じ取る。
「大将、変態に狙われてたんだよ」
「だから気の所為だって。私じゃなくて、乱ちゃんだと思うよ」
「い~や、大将だ」
『乱ちゃん』が誰だかは知らないが、なんだか不穏状態過ぎて、気になる。
『俺も薬研と同じだからね』
『僕もだよ』
突然二人分の声がする。新たに登場してきた二人は薬研に同意し、麻衣に色々告げていく。
新たに登場してきたのは、主大好きの加州清光と、相棒の大和守安定(服装は現代に合わせてある為カジュアル系)である。
「主、危機感ないんだもん。そりゃあ、乱は可愛い系だけど、主の方が可愛いからね」
「それに関してはコイツと同意見だね。巫山戯た真似した変態男は確かに主を狙ってたよ。三日月のじいさんが変態男ブチのめさなかったら、俺が
首、切り落としてたし」
「安定、それ、賛成。今度主に手を出す輩が居たら、切り刻もうか」
「そうだね」
「二人共、何危ない事言ってんの!?それは駄目だってば!!」
「旦那方、落ち着け。そうなる前に、俺っちが柄まで通すからな」
「薬研くんも駄目だってば!!」
「「「何故?」」」
「人殺し、絶対駄目!!」
「主ってば、優しいなあ。大丈夫。バレない様には殺るって」
「駄目に決まってるでしょ!!」
怖っ。
何コレ物騒。
引っ越しの理由が、麻衣の為だというのは判った。でも、だが、しかし、そんな物騒な事は知りたくなかった。
麻衣に過保護なのだろう彼等の餌食にあった変態男は、まあ自業自得だけども。今頃、ブタ箱で反省しているだろう。せめて、三日月というお爺さんが、のしたのがせめてもの救いだろうか……。
麻衣が用意してくれたお茶を飲みながら、麻衣達四人のやり取りを、『煩い』と、所長室から文句を言いに出て来たナルが怒鳴るまで、見ていた。
ーー彼等は知らない。
ロリコン中年肥満変態男が、顔面崩壊する程三日月に殴られた(一撃のみ)後、倒れたあと踏み付けられ肋骨を数本折られた事を。
ーー彼等は知らない。
病院に入院した変態男が、精神異常をきたし自殺した事を。
麻衣は知らない。
変態男の末路に刀剣男士が全員関わっている事を。
麻衣は知っている。
刀剣男士達が、何かをしでかした事を。
だから、麻衣は、止めるのだーー。
ネクストターン
金の稼ぎ方。
テレビの力は偉大。
ネットの検索結果も偉大。
ホストクラブ《とうらぶ》
ナンバー1は誰?
今宵、一時の夢を貴女にーー。
嘘です。(゜∀゜ゞ)
「ナル、ちょっと話があるんだけど、今いい?」
所長室をノックする麻衣に、ナルが不機嫌さを隠さない様子で、姿を現した。
「……………何だ?」
「ごめんね、直ぐ終わるから」
そう言って、麻衣はポケットから折り畳んだ紙を取り出した。
「引っ越ししたの。で、これ、新しい住所」
「…解った」
そう言って受け取ったあと、ナルは直ぐに所長室に篭る。麻衣はそれを見送ると、直ぐに勉強を始める。明後日にテストがあるのだ、やらねば。
こうして、この話は一旦終わりをみせたが、暫くして再びその話は持ち上がった。
それは、イレギュラーズが全員揃った日の午後の事だった。
麻衣が薬研を伴い事務所に来た日のことである。
珍しく一人で出勤しなかったなあと思い、滝川が尋ねると、『引っ越したか、ちょっと過保護になって』と麻衣から返事が帰ってきた。
「引っ越したのか?
お前、大変だったろう。言えば手伝ったのに」
『皆がいるから大丈夫だったよ』と返事を返して、麻衣は給湯室でお茶を用意し始めた。薬研も麻衣に伴い、手伝う。
「ちゃんと引っ越しの挨拶もしたし、問題ないよ。それでね、実は、今日薬研くんと一緒に来たのはね、お土産を持ってきたからなんだ。
皆で食べようと思って、今用意してるから、ちょっと待ってて」
そうして全員のお茶を用意し終え、テーブルに出されたのは、緑茶と和菓子であった。練りきりで作られた、可愛らしいお菓子に、全員の目が釘付けになる。
「綺麗どすなぁ…」
「麻衣、どうしたの、これ?」
「高かったのではありませんか?」
「そりゃあ買えば高いけてど、手作りだよ。皆で作ったんだ。アパートじゃ狭いから出来なかったんだけど、今の所広いから、久しぶりに皆で作ったんだよ。だから皆にもお裾分けです。あ、勿論、味は保障しま~す」
高級和菓子にも見劣りしない和菓子を作った、て………。
「大丈夫なんですの?」
真砂子が疑わしいという眼差しを向けてくるが、麻衣は気にせずに自分も座り、薬研も隣りに座る。
「昨日、皆に好評だったもん。それに、料理得意な光忠さんと歌仙さんの監修で薬研くんの兄弟達と作ったんだよ。いっぱい作ったから食べてもらおうと思ったのにさ。嫌なら食べなくて良いよ、真砂子」
「食べないとは言ってませんわ」
お菓子をつまみ、一口食べる。
「…美味しいですわね」
程良く甘く、調度良い。
歌仙という者にはまだ会った事は無いが、光忠という男には、料理が得意だと、初めて紹介してくれた時に麻衣が教えてくれた。彼は背も高く眼帯していたが、物腰が柔らかい格好いい成人男性という印象で。雑誌モデルでもやっていそうだった。そんな彼が《料理男子》であるとは、ちょっと驚いたものだ。何せ、見た目は、全然そんな風には見えないからだ。それを言うなら、滝川も《お坊さん》には見えないチャラ男ではあるが。
麻衣の家の家事一切を引き受けているらしい彼は、麻衣の料理の先生も引き受けているらしい。
「当然。光忠さんと歌仙さん監修で不味いものが出来るわけないでしょ」
「だよな、大将」
「ねぇ~」
薬研と顔を見合わせて笑い合う麻衣に、この場に居る全員が微笑む。
そうして全員が和菓子に舌鼓を打っていると、何処に引っ越したのかという話になった。
「んと、マンションだよ。それも5LDKです。広いから、皆とテレビ見たりゲームしたり出来るから楽しいんだ」
「分譲マンションを買ったんだ。前のとこじゃ、大将が危なくてなぁ」
「危ない?
何かあったの?」
薬研があらか様に溜息を吐いたのを見て、何やら不穏な気配を感じ取る。
「大将、変態に狙われてたんだよ」
「だから気の所為だって。私じゃなくて、乱ちゃんだと思うよ」
「い~や、大将だ」
『乱ちゃん』が誰だかは知らないが、なんだか不穏状態過ぎて、気になる。
『俺も薬研と同じだからね』
『僕もだよ』
突然二人分の声がする。新たに登場してきた二人は薬研に同意し、麻衣に色々告げていく。
新たに登場してきたのは、主大好きの加州清光と、相棒の大和守安定(服装は現代に合わせてある為カジュアル系)である。
「主、危機感ないんだもん。そりゃあ、乱は可愛い系だけど、主の方が可愛いからね」
「それに関してはコイツと同意見だね。巫山戯た真似した変態男は確かに主を狙ってたよ。三日月のじいさんが変態男ブチのめさなかったら、俺が
首、切り落としてたし」
「安定、それ、賛成。今度主に手を出す輩が居たら、切り刻もうか」
「そうだね」
「二人共、何危ない事言ってんの!?それは駄目だってば!!」
「旦那方、落ち着け。そうなる前に、俺っちが柄まで通すからな」
「薬研くんも駄目だってば!!」
「「「何故?」」」
「人殺し、絶対駄目!!」
「主ってば、優しいなあ。大丈夫。バレない様には殺るって」
「駄目に決まってるでしょ!!」
怖っ。
何コレ物騒。
引っ越しの理由が、麻衣の為だというのは判った。でも、だが、しかし、そんな物騒な事は知りたくなかった。
麻衣に過保護なのだろう彼等の餌食にあった変態男は、まあ自業自得だけども。今頃、ブタ箱で反省しているだろう。せめて、三日月というお爺さんが、のしたのがせめてもの救いだろうか……。
麻衣が用意してくれたお茶を飲みながら、麻衣達四人のやり取りを、『煩い』と、所長室から文句を言いに出て来たナルが怒鳴るまで、見ていた。
ーー彼等は知らない。
ロリコン中年肥満変態男が、顔面崩壊する程三日月に殴られた(一撃のみ)後、倒れたあと踏み付けられ肋骨を数本折られた事を。
ーー彼等は知らない。
病院に入院した変態男が、精神異常をきたし自殺した事を。
麻衣は知らない。
変態男の末路に刀剣男士が全員関わっている事を。
麻衣は知っている。
刀剣男士達が、何かをしでかした事を。
だから、麻衣は、止めるのだーー。
ネクストターン
金の稼ぎ方。
テレビの力は偉大。
ネットの検索結果も偉大。
ホストクラブ《とうらぶ》
ナンバー1は誰?
今宵、一時の夢を貴女にーー。
嘘です。(゜∀゜ゞ)