刀剣乱舞 クロスオーバー

【再会】



麻衣はアパートの自分の家で心在らずに座り込んでいた。
寂しい。
寂しい。
寂しい。
刀剣男士の皆と別れて、本丸から現代に戻った。役目が終わったから、それが当然だから、当たり前なのだ。けれど、賑やかで楽しくて、温かかったあの日常が終わる日が来る事は分かっていたのに、寂しくて――。
元気がでない。
笑顔がでない。



『主はそのように笑っていた方が似合うな』
『僕達も元気になるもんね』
『そうだな』



皆が笑いながら言ってくれた言葉。
大切な言葉。
大事な言葉。
でも、今の麻衣には無理だった。
「……ぁぃ…たぃ……、さみし……ぃ……」
涙が頬を伝う。



一人は寂しい――。



雫が落ちた。
その時だった。
麻衣のから零れ落ちた涙の雫が、光ったのである。
雫は姿を変え、一振りの短刀へと変じた。
その様を呆然と見ていた麻衣は、無意識に両手を伸ばす。
両手掌に落ちてきた刀は、今まで見たことのない刀だった。でも、確かな感触を感じる。それをゆっくり握り締めると、声が聞こえた。



「泣くな。泣かないでくれ、主」



誰かが抱き締める感覚。



「大将。また会えたな」

「もう、寂しくないよ」

「俺達が、側にいるから」



抱き締めてくるのは、初めて鍛刀した山姥切で、周りには刀剣男士達が全員居る。
三日月が頭を撫で、薬研が肩に手を置いて、鳴狐が不器用に笑みを見せてくれて――。
皆が居る。
再び涙がこぼれて――。
それが、先程の比ではなく、止まらない。
それを見た全員が、大慌てで慰めるのだが、麻衣の涙は勢いを増す。



「あいたかった」

「さみしかった」

「そばにいて」



泣きながら、口から出て来る言葉は、ただそれだけ。
刀剣男士はそれに応える。
麻衣が寂しくないように、何時ものあの、輝く笑顔を見せて欲しくて。





翌日、燭台切の美味しい朝食と、薬研の世話になる寝起きの麻衣は、これが夢ではないと頬を思いっ切り抓ってから自覚すると、あの輝く笑顔を見せて元気いっぱいに挨拶した。



「おはよう!!」




応える声が、嬉しかった。





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