刀剣乱舞 クロスオーバー
事前調査翌日午後、麻衣は湯浅高校に向かった。
昨日と同じメンバーに、霊媒師の原真砂子、巫女の松崎綾子、神父のジョン・ブラウンが同行。そして、先ずは会議室で事情の説明に入った。
「それから、今回から麻衣の御神刀に宿る神からの協力が正式に得られるようになった。ただし、あくまで麻衣の護身が主となるから気を付けるように」
麻衣の一歩後ろ、両脇に控える様に立つ刀剣男士。長曾祢虎徹と御手杵は、集中する視線に少しだけ表情を崩す。
「長曽祢だ。宜しく」
「御手杵だ。宜しくな」
洋装に身を包んだ二人の付喪神。戦闘服でも内番服でもない現代の服装は、シャツとジーンズである。それでも各々の雰囲気に合わせた服装である為、視線を軽く釘付けにしていた。因みに、コーディネイトは毎度お馴染み加州清光と次郎太刀の二人である。
怪異の数が多いので、先ず、霊的被害により病院に入院している生徒と先生、自宅に居る生徒をお祓いする役を、滝川とジョンに任せた。滝川は除霊が、ジョンは憑いたもを祓うのは得意な方であるからだ。勿論、証言も取ってくる様にとの事。
真砂子と綾子は校内の方を担当。霊視と御祓いを、先生と生徒とから聞いた問題の場所__4カ所で行う為だ。
麻衣は長曽祢と御手杵て共に、学園の窓口になる事と、あわよくば生徒達から有力な情報を引き出す事に集中しろとの厳命だ。
ナルは、リンと共にベースで情報を整理するので、どんな些細な報告でもするように言い、先ずは役割分担を指示した。
だが、それは表向き。
裏では、呪詛の媒体を探す。もしくは、目星を付けるのが目的である。下手に初日から手を出したら、呪詛を行っている犯人から狙われる羽目になる。ならば、先ずは游がし油断をさせ、その間に犯人を探す。まだ単独犯か複数犯か解っていないのだから慎重に行動するのは当たり前だ。
それが全員の本当の仕事内容である。
そして、それを調べるのは麻衣達だ。麻衣は生徒達と同じ高校生であり、アルバイト学生でもあるから、比較的他のメンバーよりも生徒達に近い存在だ。誰よりも親しみやすさがある。よって、生徒達から言葉巧みに色々引き出して貰う。それに麻衣の傍には、ナルとリンとは違い、親しみやすい整った容姿の青年と大人がいるのだ。生徒達だけでは無く、色々釣れるだろう。何より、彼等曰く、呪詛を行使している人間の魂は穢れているため分かり易いとの事だ。発見したら、ナルの所に報告する手筈になっている。
そうして行動を開始して、先ず綾子と真砂子から、呪詛の媒体となる依り代の報告が上がった。巧妙に隠してあるが、間違いないとの事だ。
外に言った滝川とジョンは、戻って早々、呪いを打ち消す方法でお祓いをしたら反応があったと。
最後に、麻衣達からは、超能力を持つ生徒がいると、滝川に直接依頼した生徒から聞き出したのだった。
最低限の人数、ナル・麻衣・長曽祢で向かった先は生物準備室。ここに、笠井千秋という、超能力少女がいるらしい。
「……臭う、な」
「……うん」
長曽弥の言葉に、麻衣が相槌を打つ。
微かだが、臭う。
「『臭う』とは?」
意味が解らないナルは、二人に対して説明を求める。しかし、もう直ぐ生物準備室。今は話すべきでは無いと思い、麻衣は『後で』と口にしただけだった。
部屋から、複数の声が聞こえてくる。
扉をノックして、開けた先に居たのは二人の女性。一人は女生徒だから、件の笠井千秋という女生徒だろう。もう一人は、スーツを着ている女性なので、この生物準備室の管理をしている先生だろうと当たりを付けて、三人は室内に入った。
「何か御用ですか?」
「此方に笠井千秋という女生徒がいると聞きましたので、話を窺いにきたのですが……、貴方が【笠井千秋】さん?」
その途端、女性の先生が生徒を庇うように前に出た。
「………だから、何?」
先生の後ろから睨みつけてくる彼女は、まるで手負いの獣のような印象を麻衣は受けた。強い警戒心と敵愾心を持っている。多分これは、超能力少女として吊し上げられた所為だろう。
話を聞き出した女生徒によると、この学校で一時期話題騒然となり、超能力を肯定する賛成派と、超能力をインチキと否定する反対派で学校ご真っ二つになったそうで。そこで先生が、渦中の人物である笠井千秋を全校朝礼で吊し上げたのだ。全校生徒の前で、生徒指導の先生が持つ鍵を曲げて見せろと。結果といえば、彼女は見事に曲げてしまった。しかし、先生は否定した。あり得ないと。目の前に曝された出来事を受け入れることが出来ず、拒絶したのである。
__それから、現在の状態となった。
あの日から、腫れ物扱いされた彼女が他人に強い警戒心と猜疑心を持っても仕方ないかもしれない。
会話はスムーズとはいかないが、彼女と先生から詳しい内容が聞けた。そして、二人を見て確信も得る。
(真っ黒な魂だな。濁り過ぎた魂は、もうこの今生では救えない。死しても苦しめられる)
呪詛を行い、苦しめられた人が居る今、穢れは今も増すばかりなのだから。
長曽祢は、呪詛の主から目を伏せると、麻衣と目を合わせてから頷き合った。
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昨日と同じメンバーに、霊媒師の原真砂子、巫女の松崎綾子、神父のジョン・ブラウンが同行。そして、先ずは会議室で事情の説明に入った。
「それから、今回から麻衣の御神刀に宿る神からの協力が正式に得られるようになった。ただし、あくまで麻衣の護身が主となるから気を付けるように」
麻衣の一歩後ろ、両脇に控える様に立つ刀剣男士。長曾祢虎徹と御手杵は、集中する視線に少しだけ表情を崩す。
「長曽祢だ。宜しく」
「御手杵だ。宜しくな」
洋装に身を包んだ二人の付喪神。戦闘服でも内番服でもない現代の服装は、シャツとジーンズである。それでも各々の雰囲気に合わせた服装である為、視線を軽く釘付けにしていた。因みに、コーディネイトは毎度お馴染み加州清光と次郎太刀の二人である。
怪異の数が多いので、先ず、霊的被害により病院に入院している生徒と先生、自宅に居る生徒をお祓いする役を、滝川とジョンに任せた。滝川は除霊が、ジョンは憑いたもを祓うのは得意な方であるからだ。勿論、証言も取ってくる様にとの事。
真砂子と綾子は校内の方を担当。霊視と御祓いを、先生と生徒とから聞いた問題の場所__4カ所で行う為だ。
麻衣は長曽祢と御手杵て共に、学園の窓口になる事と、あわよくば生徒達から有力な情報を引き出す事に集中しろとの厳命だ。
ナルは、リンと共にベースで情報を整理するので、どんな些細な報告でもするように言い、先ずは役割分担を指示した。
だが、それは表向き。
裏では、呪詛の媒体を探す。もしくは、目星を付けるのが目的である。下手に初日から手を出したら、呪詛を行っている犯人から狙われる羽目になる。ならば、先ずは游がし油断をさせ、その間に犯人を探す。まだ単独犯か複数犯か解っていないのだから慎重に行動するのは当たり前だ。
それが全員の本当の仕事内容である。
そして、それを調べるのは麻衣達だ。麻衣は生徒達と同じ高校生であり、アルバイト学生でもあるから、比較的他のメンバーよりも生徒達に近い存在だ。誰よりも親しみやすさがある。よって、生徒達から言葉巧みに色々引き出して貰う。それに麻衣の傍には、ナルとリンとは違い、親しみやすい整った容姿の青年と大人がいるのだ。生徒達だけでは無く、色々釣れるだろう。何より、彼等曰く、呪詛を行使している人間の魂は穢れているため分かり易いとの事だ。発見したら、ナルの所に報告する手筈になっている。
そうして行動を開始して、先ず綾子と真砂子から、呪詛の媒体となる依り代の報告が上がった。巧妙に隠してあるが、間違いないとの事だ。
外に言った滝川とジョンは、戻って早々、呪いを打ち消す方法でお祓いをしたら反応があったと。
最後に、麻衣達からは、超能力を持つ生徒がいると、滝川に直接依頼した生徒から聞き出したのだった。
最低限の人数、ナル・麻衣・長曽祢で向かった先は生物準備室。ここに、笠井千秋という、超能力少女がいるらしい。
「……臭う、な」
「……うん」
長曽弥の言葉に、麻衣が相槌を打つ。
微かだが、臭う。
「『臭う』とは?」
意味が解らないナルは、二人に対して説明を求める。しかし、もう直ぐ生物準備室。今は話すべきでは無いと思い、麻衣は『後で』と口にしただけだった。
部屋から、複数の声が聞こえてくる。
扉をノックして、開けた先に居たのは二人の女性。一人は女生徒だから、件の笠井千秋という女生徒だろう。もう一人は、スーツを着ている女性なので、この生物準備室の管理をしている先生だろうと当たりを付けて、三人は室内に入った。
「何か御用ですか?」
「此方に笠井千秋という女生徒がいると聞きましたので、話を窺いにきたのですが……、貴方が【笠井千秋】さん?」
その途端、女性の先生が生徒を庇うように前に出た。
「………だから、何?」
先生の後ろから睨みつけてくる彼女は、まるで手負いの獣のような印象を麻衣は受けた。強い警戒心と敵愾心を持っている。多分これは、超能力少女として吊し上げられた所為だろう。
話を聞き出した女生徒によると、この学校で一時期話題騒然となり、超能力を肯定する賛成派と、超能力をインチキと否定する反対派で学校ご真っ二つになったそうで。そこで先生が、渦中の人物である笠井千秋を全校朝礼で吊し上げたのだ。全校生徒の前で、生徒指導の先生が持つ鍵を曲げて見せろと。結果といえば、彼女は見事に曲げてしまった。しかし、先生は否定した。あり得ないと。目の前に曝された出来事を受け入れることが出来ず、拒絶したのである。
__それから、現在の状態となった。
あの日から、腫れ物扱いされた彼女が他人に強い警戒心と猜疑心を持っても仕方ないかもしれない。
会話はスムーズとはいかないが、彼女と先生から詳しい内容が聞けた。そして、二人を見て確信も得る。
(真っ黒な魂だな。濁り過ぎた魂は、もうこの今生では救えない。死しても苦しめられる)
呪詛を行い、苦しめられた人が居る今、穢れは今も増すばかりなのだから。
長曽祢は、呪詛の主から目を伏せると、麻衣と目を合わせてから頷き合った。
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