刀剣乱舞 クロスオーバー

【三巻始まり】


麻衣は、本日3件の依頼の件を気にしていた。
一つは、狐付き。
一つは、幽霊。
一つは、ポルターガイスト。
その3件共、同じ学校で起きている現象であった。
「…はぁ…」
ナルはその依頼を断ったが、麻衣は3件の依頼を気にしていた。何となく、関わる事になりそうだと、そう思ったからだ。
「主、あんまり溜息を零していると、幸せが逃げるというから止めなさい」
歌仙が、リンゴが乗った小皿を彼女の前に差し出す。
兎さんカットされたそれは、きっと麻衣の溜息を気にしたのだろう。可愛いリンゴの形に、母もこんな飾り切りをしてくれた事を思い出す。元気になるようにと、熱を出した時や元気が無い時にしてくれたから。歌仙に話した事があるので、私の様子を見かねて食後のデザートに用意してくれたのだろう。
歌仙から受け取り、麻衣は嬉しそうに微笑む。
「ありがとう、歌仙さん」
「どう致しまして。
で、何を悩んでいるんだい。白状しなさい」
歌仙は麻衣の隣に座り、聞く態勢を取る。
「今日の依頼の件だけどね」
「ああ、同じ学校からの依頼の件かい?」
「うん。
関わる事になりそうだな、と」
「所長君は断ったけどね」
「そうだけど、関わると思うんだよね、これが」
「確信しちゃってるね。
主がそう口にすると本当になるからね。だから、そうなる上で聞くけれど、どうする気だい?」
「誰を連れていこうかな、と」
麻衣の悩みは、其処だった。
依頼の舞台である《湯浅高校》は女子高なので、連れて行くとなれば、見目麗しい刀剣男士達の事だ、言い寄られる可能性が極めて高い。だから悩んでいるのだが、ただ、今回は短刀達を選ぶ事は出来ない。幼い外見だし、良くて中学生ぐらいまでしか見えない。義務教育期間中なのに、学校に行かせず仕事を手伝わせるとはと、訴えられそうな上、仕事を辞めさせられそうだ。それが一番困る。ならば、一番良いのは大人組なのだが………、見目麗し過ぎるので、できれば最小限に留めたい。そういう点では、麻衣に過保護なメンツは選ぶ事は出来なかった。
「僕は外見派手だしね、一緒には無理だね。山姥切国広くんは……除外だね。危ないね、彼の方が」
「女子高なんて連れて行けないよ。身の危険が……」
「長谷部くんも駄目だね。社交的ではないし、主が絡むと暴走する。光忠は、女性達を本気にさせてしまう可能性が………」
「倶利ちゃんは社交的に問題ありだし、蜂須賀さんは、歌仙さんと同じ理由。長曽根さんは……大丈夫かな?」
「それなら、陸奥守も大丈夫じゃないかな」
「方言の問題があるよ」
方言男士は、少々悪目立ち過ぎる。
「それがあったね」
「……御手杵さんかな?リンさんより身長が高いけど、結構、普通に溶け込めるし明るいタイプだから、ぼーさんもナルとリンさんのように気を遣わないで済むし」
「長曽根虎徹と御手杵の二人なら、大丈夫じゃないかい。特に長曽根は新選組組長の刀であったから頼もしい上、所長君と保護者殿より年上に見えるのも良い。頼りになると思うよ」
「おじ様好きの女子高校生か、援助交際してる女子高校生か、年若い女教師位かな、心配しなきゃならないのは。まあ、表向き露骨な真似はしないだろうね。バレたらヤバイだろうし。
御手杵さんは、素朴さが良いと言い寄られるかもしれないけど、癒し系だから邪な心なんかも浄化しかねないかも。ワンコ系キャラ、マジ癒し」
「主、御手杵と何かあったのかい?」
「……………犬耳・尻尾の幻覚を見た。マジ可愛かった」
一体いつそんな遣り取りをしたのだろうか?そう思う歌仙だったが、本題から離れそうになるので、止めておく。
「じゃあ、二人には僕から話しておくよ。直ぐに行動出来るように」
「ありがとう歌仙さん」
食べ終わった小皿を手に、歌仙は立ち上がる。麻衣は自分でやると言ったが、歌仙は彼女に風呂に入るよう促した。明日の準備をしてから、ではあったが。
麻衣は素直に御礼を言って、自分の部屋に入って行ったのだった。






翌日、湯浅高校の校長が事務所に依頼をしに来たので、依頼人が帰った後、麻衣は長曽根虎徹と御手杵の同行をナルに伝える。
「その二人、どういう奴等なんだ?」
何気なく聞いてきた滝川の言葉に、ナルがリンにビデオを用意するように伝え、カメラの前で二人を呼び出す様に麻衣に伝えて一悶着起こしたのは言うまでも無い。



「悪い、麻衣」
「あんま、気にすんなよぼーさん」
「主は余り気にしてないさ」


ちゃっかりカメラの範囲外で現出した長曽根虎徹と御手杵が滝川の近くに立っていた(現代風のラフな服装で)上言葉を返した事に、滝川が思いっきり驚いて振り向いたのも、また言うまでもなかった__。






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