刀剣乱舞 クロスオーバー






__気持ち悪い………。





早朝、目を覚ました麻衣は布団の中から起き上がれないぐらい、激しい頭痛と疲労感に襲われていた。
まるで、鉛のように重い身体。
障子の向こうから、朝を告げる鳥の声や、刀剣男士達の声も聞こえる。
麻衣は、その声を聞きながら、気絶するように意識を落とした。 








石切丸が穢れを感じたのは、朝の加持祈祷を終えた帰りだった。
本丸内に、一瞬、強い穢れを感じ取り、石切丸は周囲を見渡す。
すると、此方に駆け足で近寄ってくる太郎太刀と次郎太刀を見て、これが気の所為ではないと、石切丸は確信した。
「石切丸、主はまだ部屋でしょうか?」
「すっごい嫌な感じがしたんだよ!」
「この時間はまだ寝ている筈だ。今日は、確か山姥切国広が近侍だから、彼が起こしに行く筈だね。一緒に行こうか」
三人は足早に移動する。
廊下は歩かず、庭や部屋を最短距離で突っ切る様に移動した。すると、慌てたような山姥切の姿が目には入る。
「主!! 主っ!!」
鞘から刀を抜いて、主のいる障子を斬り付けている。最早、これは異常事態だ。
「山姥切っ!!」
「ちょっと、何だい、この穢れは!?」
「主は!?」
山姥切が三人を振り向く。
「嫌な予感がして、主の所に慌てて来たらもうこんな状態だったんだ!!
主を助けようとしても障子が開かない!!だから、斬り付けていたんだが、阻まれて傷さえつかない!!」
まるで泣きそうな程に悲痛な面持ちと、強い焦り。山姥切は叫ぶ様に現状を伝えると、石切丸に縋った。
「助けてくれ!!主がっ!!主がっ!!」
「落ち着きなさいっ!!」
石切丸が山姥切の言葉を遮る。
ビクッと反射的に身体を震わせた山姥切は、石切丸を見上げた。
「太郎太刀、次郎太刀、刀は?」
「持っています」
「準備は万端だよ」
「任せるよ」
石切丸は山姥切と共に、大太刀の間合いから離れ、距離を取る。
二人は共に練度が八〇台と高い。まして、御神刀だ。穢れを祓うには、十二分に活躍する。
二人の放った一閃は障子を切り裂き、中に居る麻衣の姿を曝さしてくれた。そこに、石切丸が浄めの塩を投げ込む。それと同時に部屋に入った山姥切は、うつ伏せに倒れていた麻衣を抱き上げ、部屋から救出する。
それを追うように目を覆いたくなるような穢れが、獲物を逃さぬようにと移動してくるが、高練度の太郎と次郎、カンスト済みの石切丸の御神刀ズが揃っているのだ。これ以上、害する事を許すはずが無い。激ギレ御神刀ズ激おこプンプンマジ本気2000%の必殺技をくらい、消し飛んだ。
そして、それを見届ける前に、山姥切は主を急いで薬研に診せるべく、駆けだしたのであった。だって、結果など、見るまでもないのだから__。






麻衣の意識が戻ったのは丸三日経過した後、政府が審神者に用意した専用病院の一室であった。
あの後、薬研には手に負えぬ程に衰弱していた麻衣は、御神刀ズに助けられたこんのすけによって、緊急救難信号が発信。担当によって早急に病院が用意され、初期刀の歌仙兼定と燭台切光忠が一緒に付いて行った。目覚めるまで歌仙が傍で看病し、光忠は本丸の皆に報告する為、日帰りだ。
「主!!」
「主!!」
「………ん…、かせ…さん?」
億劫そうに右手を揚げると、間髪を入れず掴まれた。
「僕が解るかい主!?」
「歌仙さん?」
「僕もいるよ、主!!」
「光忠さん?」
「よかった、よかった~」
涙を流して嬉しそうに笑う光忠に、麻衣はどうして泣くのか解らなくて、反対の手を持ち上げると、そこには注射針を挿され管が繋がっているのが見えた。
「…………病院……?」
「そうだよ、主。此処は、審神者専用病院の一室だ。主は、三日も眠っていたんだよ」
歌仙の両手が麻衣の手を包む様握っていて、目尻に涙が浮かんでいるのを見ると、凄く心配させてしまっていたのが、良く解ってしまって……。
麻衣は、歌仙の手を握り返して、光忠のベッドに置いてある腕に、手を置いて__。



「お早う。寝坊して、ごめんなさい」



「…………お早う、主。寝坊したのだから、後で説教だよ」
「…………まったく、お寝坊さんだね。ぉはよ…ぅ、あるじ………っ……」


麻衣の言葉に、涙を浮かべたまま微笑んで、二人はそう返すので精一杯だった__。







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