刀剣乱舞 クロスオーバー

【四巻終了後】




『おや、いらっしゃい』



物凄く色気が垂れ流し状態である男性の存在に、滝川・綾子・ジョン・真砂子・安原は、物の見事に事務所の出入口で固まった__。







事務所のソファに座っているのは、初めて見た男性。
艶が有り、柔らかそうな長い髪を後ろで纏めて縛り、そこからサイドに流した、やけに色気を垂れ流す男性は、雰囲気は完全に“ある大金持ちの権力者の夫に先立たれた魅惑の未亡人の色気”である。いや、マジで。
もう、色々視線に困る色気のある男性の膝の上には、彼の主である麻衣が眠っている。彼の方を向いて身体を横にして、安心している様に眠っている麻衣は、2週間前の安原の学校からの依頼の事件の時は、色々活躍してくれた。
霊が活発化し、色々危険がある夜の時間に、全員に危険がないようにと、護衛に御神刀に宿る式神を一人につき一体付けてくれたりと、他にも色々してくれたのだ。だが、その時今の彼はいなかった。
こんな印象が残る人物を見逃す訳が無い。では、誰だろうか?
「あのぅ…」
「何ですか?」
小首を傾げて胡乱げに目線を向けてくる彼は仕草まで色っぽい。恐ろしい………。
「麻衣は………?」
「見て分かる通りですが」
「…………そうですね」
何だろう、この『貴方、馬鹿ですか?』みたいな言われ方。
「それより、何時まで馬鹿みたいに突っ立ってるんです?さっさと座ったらどうですか?」
「……………はい、そうします………」
見かけと中身が違い、この方、かなり言動が宜しくないぞおい。







さて、麻衣が未だに寝コケているなか、一応名前だけは聞こうと思った。のだが、『主が起きるので静かにしてくれませんか』と、非常に冷たい眼差しを受けてしまい、黙っていること約30分後、麻衣が身じろぎをしつつ目を覚ましてくれた。
「ん………?」
「やっと起きましたか、主。ほら、さっさと起きなさい。何時まで僕を枕にしてるんですか。重いです」
「ん?
あ、ごめん。………て、女の子に向かって“重い”はないでしょうが!」
「重いものは重いです。
全く、人を枕にしておいて」
「何さ、自分の膝叩いて『寝なさい』って言ったの宗三さんじゃないのさ」
「ええ、言いましたよ。主の間抜け顔に悪戯出来ますから」
「また抓ったね!?」
「だからなんです?その前に抓ってません。ちょっと肉付きの好い頬を摘まんだり突っ突いただけです。楽しかったですよ」
「女の子に『肉付きが良い』は禁句です!デリカシーないの?」
「安心なさい。主に色気云々なんて求めてません。可愛い系で攻めて貰います。それに、主は痩せすぎですから丁度良い言葉でしょう?特に「ギャーッ!!言うなーーーーーっ!!」分かりました」
「宗三さんのバカッ!!お色気魔神!!傾国系男士!!」
「主には到底無理な例え文句ですね」
「どうせ無理ですよ!!」
「ええ、目指されては困ります。過保護組が泣きますから。それはそれはもう鬱陶しいですよ」
「……………………………………………………解った。セクシー系よりキュート系にしとく」
「賢明な判断ですね。そうなさい」









『………………………………………あの~…………』









「「………………あ」」









麻衣が起きたので、ああやっとなんとかなるな、と思ったら………、俺達そっちのけで言い合いしてるし。それにあの男、麻衣に対しても辛辣で冷たい言葉の中に、デレが確実に入っている。俺達が来てから今まで麻衣の頭を優しく撫でて、色気有りまくり垂らしまくりになっていたにーさん?
主だからか?
俺達には冷たい眼差ししかくれなかったのに、慈愛の篭もった瞳でさあ。差別だ!!


「主なんですから贔屓は同然でしょう」


ごもっとも。


滝川は撃沈した。









自分では言いそうになかったので麻衣が紹介をする事に。
彼は宗三といい、やはり麻衣の式神であった。麻衣は普段は『宗三さん』呼びだが、外に出る時は『宗にい』と呼ぶらしい。少しでも兄妹らしく見えるようにとの事だ。
それと彼は麻衣に巡り合う迄は、権力者の傍に侍らされていたらしい。成程納得。納得の色気。
「初めて会った時は、いや、もう、“お色気担当キターー(・∀・)ーーッッ!?!”って感じ?
後、『僕を侍らせたいのですか?』と聞かれた時は、『侍らすって何?』と聞き返しちゃったけどね………。いや~、その時の空気と言ったら」
「それ位にして下さい。意味が解らないのに言った僕が悪いのですから。(小声)初期刀怖いんですよ………。
__まあ、今は進んで貴女に侍る事にしてますが」
「宗三さん、くすぐったい」
うん。わかった、わかったから、イチャイチャすんな!!主に宗三さんとやら!!
色っぽい!!色っぽい!!色っぽいんだよ、アンタ!!
仕草は普通なのに、色気あり過ぎてエロいわっ!!アンニュイな溜息でさえ色っぽいんだよ!!唯でさえ耐性の無いジョンや真砂子なんて、真っ赤で湯気が出てるわ、少年なんか笑顔を貼り付けながら固まってるぞ!!









「ここは、喫茶店ではないんですが」








___…………………ナルちゃんや、いつからそこに?
「麻衣、お茶」
「は~い」
いや、麻衣よ、普通に対処しないでくれや!!
席を立って給湯室に向かった麻衣。それを見送ると、何時の間にかナルと宗三さんが見つめ合っていた。
片や絶対零度の鉄面皮。片や雰囲気桃色お色気担当。絶讃美形二人組だ!!
温度差スゴッ!!
「貴方は?」
「宗三と言います。僕の主がお世話になってます」
「御丁寧にどうも。何か問題でもありましたか?」
どうやらナルは、仕事以外で顕れると【式神が現れる=麻衣に何かあった】と理解しているらしい。
「別に何も。ただ、そうですね、今日は主を早く帰らせても」
「………理由を、お聞きしても?」
「疲れが溜まっているようですから」
「前回の仕事の件で、ですか?」
「そうです」
確かにあの事件は大変だった。
麻衣自身も、あわや圧死になるやもしれない状態な目にあったのだ。間一髪で式神が助けなければ死んでいたかもしれない。(そんな目に合わせた悪霊に対し、怒りの具合が半端なかった式神達は恐ろし怖い((((;゜Д゜)))))
そう、俺は逃げた。一瞬で、半径三~五M程。戦略的撤退だ。避難だ避難。非難は認めん。怖ぇよ、怖ぇんだよ((((;゜Д゜))))
思い出してゾッとした俺を余所に、二人は会話を数度交わし、麻衣の早退は認められた。
簡単に説明すると、麻衣は力を使い過ぎたらしい。普段なら問題なかったが、戦闘準備状態で呼び出すと、普段のラフな洋装で呼び出すのとは段違いらしいとの事だ。
今は霊力回復に勤しんでいるが、麻衣自身の為に仕事は許可しているけれど、式神達は仕事よりも自身を大切にして欲しいらしい。まあ、当然だろう。主たる麻衣を慈しむのは、式神にとっては当然の理由だ。
勿論、ナルもあの事件の後、麻衣に数日間休みを上げたらしいが、完全回復に至らなかったから、仕事中に居眠りする時もあった。そして偶々俺等が来てバレた、と。
「もう、なんでバラすかなぁ」
麻衣が人数分のお茶とコーヒーを持って給湯室から出て来た。
「主の為に動くのは、当然の事でしょう。配り終えたら、帰りますよ」
「は~い」
「家に長く居た方が回復するの早いんですから。そういう術式の結界を張ってくれてるんですよ、石切丸が」
「パパンは心配性だね」
「貴女のお父さん役ですしね」
「頼りになります」
確か、【石切丸】さんはあの男だったよな。
ああ、確かに父性が溢れていそうだな。俺でさえ、頼りになると思ったわ。何だ、あの、落ち着きがあり頼りがいがある男感。半端なかったぞ。
そうして、慌ただしく帰る準備を終えた麻衣は、宗三の元に戻って来る。
「ナルのはお代わりも用意してあるからね。
それじゃあ、今日は早退します。お先に失礼します」
麻衣は宗三さんを伴って帰って行く……と、何故かものの数分で宗三さんが戻って来た。
「ああ、コレですか」
ヒョイと落ちてたマスコットを拾い上げ、再び踵を返すと、『ああ』と呟いたらナルの方を振り向いた。
「所長さん」
「何でしょうか?」
「主には僕が、自ら望んで侍るようにしていますので、貴方如き程度の容姿で主が靡くなどとは思わないで下さいね。不愉快ですから」
では、失礼します__と最後に物凄い色気を垂れ流して出て行った宗三様に、我等が所長様はといえば……………………………………………………。










(||゜Д゜)ヒィィィッッッ!!!!










さ、寒っ!!
ブリザードがァァァァアアアアっっっ!!!!


俺達は早々に退散致しました。


全軍撤退ーーーーーっっ!!
全員駆け足ーーーっ!!
お色気担当宗三様ぁぁああああっっっ!!!!
爆弾炸裂させないでぇぇええぇええっっっ!!!!














ちゃんちゃん(゜∀゜)
12/25ページ
スキ