仮面達の夜想曲
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「こ・・こは・・?」
「私の部屋です。古いですけど・・あの、一回ここに座ってもらっていいですか?」
一度支配人を壁に寄りかかるように座ってもらって、私は急いで布団を用意する。特に拘ってる訳じゃないから、フカフカじゃないけどそこは我慢してもらおう・・!
・・よしっ、布団敷けた!あとはご飯あったよね・・温めなくちゃ!
「支配人、動けますか?布団の用意が出来たので寝てください!私お粥用意しますから・・!」
「・・余計な、事・・せんでええ・・・。」
「・・は?」
「こんなん、休めば・・・どうとでもなる・・せやから、余計な事・・・。」
『ブチッ』
(・・今”ブチッ”って聞こえた・・頭切れる音が分かった・・。)
余計な事・・?余計な事って何よ・・・!
放っておけないって思って代金払って余分なタクシー代も払ってここまで連れてきたのに・・!!
「うっさいわねっ!!!」
「?!」
支配人の為に色々やったのにそんな事言われたら何かムカつく!!
「病人が生意気な事言ってんじゃないわよ!!いいから布団で寝なさい!!お粥作るから大人しくしてなさい!!いいわねっ?!」
「お、お前支配人になんちゅ———」
「支配人もクソもないわよっ!!いいから寝てなさぁい!!!」
「・・・・・・・・・・・はい。」
『グツグツ・・・』
「・・もう少しで出来ますからね。」
「・・・おう・・・。」
レトルトのご飯を温めた後、小さな鍋に具材を放り込んである程度煮詰まるのを待つ。待ってるついでに生姜を擦りながらさっきの会話を思い出して・・絶賛反省中。
(はぁ・・私病人になんて事・・・。)
怒鳴り散らしちゃった・・・しかも支配人に・・元気になったら絶対怒られるやつだこれ・・・・。
(と、とにかく今はお粥で挽回しなきゃ・・!)
お椀によそって擦り生姜を少し添えて、布団で横になっている支配人に近付く。お椀をテーブルに置いて支配人のおでこにのせている濡れたタオルを取ると、それに気付いた支配人は私を見てくる。
「・・すまんの・・・面倒、かけてもうた・・。」
「気にしないでください。お粥できましたよ?起きれますか?」
「おう・・大丈夫、や・・。」
ゆっくりと起きようとする支配人の背中を支える。お粥作るのにちょっと時間かかっちゃったからかな、少しだけ顔色良くなってるような気がする・・休めたって事だよね・・良かった・・・。
「ふぅ・・。」
(でも起きるのもやっとって感じだな・・。)
支配人の両手でお椀を支えてもらって、私は中に入れていたスプーンを取る。
「支配人、そのまま持ってられます?」
「・・?別に大丈夫やけど・・・。」
「じゃあ持っててください。口に運びますから。」
「はこぶ・・・?」
スプーンで少しお粥をすくって弱く息を吹いて熱を冷ます。そんな様子を不思議そうに見てくる支配人だけど、私はそれを気にせず少し冷ましたお粥を口元まで運ぶ。
「はい、どうぞ。」
「・・・・・。」
・・・・?何で固まってるの?
「いや・・自分で食えるで?」
「そんなフラフラの人が1人で食べられる訳ないじゃないですか。早く食べてください、食べたら薬飲みましょう!」
「・・・・・・。」
折れる気のない私に支配人が折れたのか、黙って口を開く支配人。
その口にそっとスプーンで触れると、支配人はそれを頬張る。
(・・なんか、可愛いかも・・。)
こういうのに慣れてないのかな・・私も別に慣れてる訳じゃないけど、なんか支配人がこんな感じなの珍しい・・かも・・・。
ゆっくり噛んで飲み込むと、少しだけ目を逸らす支配人。
・・何で逸らすの?
「支配人?」
「・・・いや、その・・・ちぃと照れるの・・。」
(・・・・・・・・え?)
何それ可愛いんですけど。ほっぺ少し赤いけど絶対熱の所為だけじゃないよね、照れてるよねこの人。こんな強面の人が照れてるのってなんか・・・レア、だよね?
「・・おい、何じっと見とんねん。」
(あ、不機嫌になった。)
「ふふっ、すみません。さっさと食べますか!」
(支配人って・・こんな表情もするんだ・・。)
それからちょっとずつお粥を食べ進めていった支配人は、やっと全部食べ終わることが出来た。ご飯を食べて体が暖まってきたのか少し汗もかいてる。傍に用意しておいたタオルで汗を拭いてると、さすがに着替えがない事に気がつく。
「あっ・・すみません、着替えないです・・。」
「かまへんよ。・・こうしてメシ食わしてもろたんや、それだけで充分やで。」
「そう、ですか・・へへ。それなら良かったです!」
(料理苦手だけど頑張って良かった・・。)
「・・・ぷっ!!」
「へっ?!な、何ですか?」
「いやっ・・さっきエライ怖い顔した女がそうやって笑うんやな思うたらおもろくての・・くひっ・・!」
「なっ・・!し、失礼ですよ!」
「くくっ・・!」
た・・確かに怒ったけど私そんな怖くないし!!
「あ、汗拭きますよ!」
(何か恥ずかしい・・!!)
でも・・支配人の笑う顔もちょっと可愛いかも・・・。
支配人の汗を拭こうとタオルを持った手を伸ばす・・・と、その時支配人は弱々しい力で私の腕を掴んでくる。
「えっ・・支配人・・・?」
突然の事で驚いて支配人の顔を見ると・・さっきの笑顔はもうしてなくて、初めて見る支配人の表情だった。
初めてだけど・・どこかで見た事あるような・・・。
「・・1つ聞いてええか?」
「な・・何ですか?」
支配人の目・・凄い真剣・・・。
思わず吸い込まれそうな真っ直ぐな目でじっと私を見ている支配人は、そっと口を開く。
「・・お前・・・佐川とはどないな関係や。」
『ドクッ・・・』
「——・・ぇ・・・。」
”佐川”——その言葉に血の気が引いていく。
(どうして今・・その名前が・・・?)
じっと見ていた所為で視線を逸らす事が出来なくて、動揺する私の顔を直に見られてしまう。それを見逃す事のない支配人の目は、獲物を狙って逃がさないような鋭い目をしている。
「最初は俺への監視やと思とったが・・そうとちゃうんか?」
「監視って・・・え、何を、言って・・・?」
「何でここに住んどる。お前の目的は何なんや。」
「・・えっ・・目的、って・・え・・・?」
意味が、分からない・・私はただ、佐川に用意されたここに住んでるだけで・・・それ、だけ、で・・・・。
支配人の目が、怖い・・その目、思い出した・・・。
『お前はここで借金を返すんだよ。この店で一生・・な。』
(あの日の・・佐川と、同じ目・・・。)
「・・・おい・・?」
答えない私を怒るかと思ったら、その怖い目は戸惑いの目に変わっていった。
どうして戸惑ってるの・・?不思議に思った私だけど、頬に伝わる冷たい感覚で察する。
(私・・・泣い、てる・・。)
「あ・・あはっ・・・す、すみませっ・・。」
体が震える。涙が流れる。
グランドで働き始めて1ヵ月。それまで私は佐川と一度も会っていない。会っていないのに・・少し思い出しただけでこんなにも震えてしまう。
——佐川と同じ目をしている支配人を見ただけで、こんなにも震えてしまうなんて・・・。
(怖い・・この人が、怖い・・・。)
佐川が恐怖でしかない私は、同じ目をした支配人が・・・今は怖くて堪らなかった。
「私の部屋です。古いですけど・・あの、一回ここに座ってもらっていいですか?」
一度支配人を壁に寄りかかるように座ってもらって、私は急いで布団を用意する。特に拘ってる訳じゃないから、フカフカじゃないけどそこは我慢してもらおう・・!
・・よしっ、布団敷けた!あとはご飯あったよね・・温めなくちゃ!
「支配人、動けますか?布団の用意が出来たので寝てください!私お粥用意しますから・・!」
「・・余計な、事・・せんでええ・・・。」
「・・は?」
「こんなん、休めば・・・どうとでもなる・・せやから、余計な事・・・。」
『ブチッ』
(・・今”ブチッ”って聞こえた・・頭切れる音が分かった・・。)
余計な事・・?余計な事って何よ・・・!
放っておけないって思って代金払って余分なタクシー代も払ってここまで連れてきたのに・・!!
「うっさいわねっ!!!」
「?!」
支配人の為に色々やったのにそんな事言われたら何かムカつく!!
「病人が生意気な事言ってんじゃないわよ!!いいから布団で寝なさい!!お粥作るから大人しくしてなさい!!いいわねっ?!」
「お、お前支配人になんちゅ———」
「支配人もクソもないわよっ!!いいから寝てなさぁい!!!」
「・・・・・・・・・・・はい。」
『グツグツ・・・』
「・・もう少しで出来ますからね。」
「・・・おう・・・。」
レトルトのご飯を温めた後、小さな鍋に具材を放り込んである程度煮詰まるのを待つ。待ってるついでに生姜を擦りながらさっきの会話を思い出して・・絶賛反省中。
(はぁ・・私病人になんて事・・・。)
怒鳴り散らしちゃった・・・しかも支配人に・・元気になったら絶対怒られるやつだこれ・・・・。
(と、とにかく今はお粥で挽回しなきゃ・・!)
お椀によそって擦り生姜を少し添えて、布団で横になっている支配人に近付く。お椀をテーブルに置いて支配人のおでこにのせている濡れたタオルを取ると、それに気付いた支配人は私を見てくる。
「・・すまんの・・・面倒、かけてもうた・・。」
「気にしないでください。お粥できましたよ?起きれますか?」
「おう・・大丈夫、や・・。」
ゆっくりと起きようとする支配人の背中を支える。お粥作るのにちょっと時間かかっちゃったからかな、少しだけ顔色良くなってるような気がする・・休めたって事だよね・・良かった・・・。
「ふぅ・・。」
(でも起きるのもやっとって感じだな・・。)
支配人の両手でお椀を支えてもらって、私は中に入れていたスプーンを取る。
「支配人、そのまま持ってられます?」
「・・?別に大丈夫やけど・・・。」
「じゃあ持っててください。口に運びますから。」
「はこぶ・・・?」
スプーンで少しお粥をすくって弱く息を吹いて熱を冷ます。そんな様子を不思議そうに見てくる支配人だけど、私はそれを気にせず少し冷ましたお粥を口元まで運ぶ。
「はい、どうぞ。」
「・・・・・。」
・・・・?何で固まってるの?
「いや・・自分で食えるで?」
「そんなフラフラの人が1人で食べられる訳ないじゃないですか。早く食べてください、食べたら薬飲みましょう!」
「・・・・・・。」
折れる気のない私に支配人が折れたのか、黙って口を開く支配人。
その口にそっとスプーンで触れると、支配人はそれを頬張る。
(・・なんか、可愛いかも・・。)
こういうのに慣れてないのかな・・私も別に慣れてる訳じゃないけど、なんか支配人がこんな感じなの珍しい・・かも・・・。
ゆっくり噛んで飲み込むと、少しだけ目を逸らす支配人。
・・何で逸らすの?
「支配人?」
「・・・いや、その・・・ちぃと照れるの・・。」
(・・・・・・・・え?)
何それ可愛いんですけど。ほっぺ少し赤いけど絶対熱の所為だけじゃないよね、照れてるよねこの人。こんな強面の人が照れてるのってなんか・・・レア、だよね?
「・・おい、何じっと見とんねん。」
(あ、不機嫌になった。)
「ふふっ、すみません。さっさと食べますか!」
(支配人って・・こんな表情もするんだ・・。)
それからちょっとずつお粥を食べ進めていった支配人は、やっと全部食べ終わることが出来た。ご飯を食べて体が暖まってきたのか少し汗もかいてる。傍に用意しておいたタオルで汗を拭いてると、さすがに着替えがない事に気がつく。
「あっ・・すみません、着替えないです・・。」
「かまへんよ。・・こうしてメシ食わしてもろたんや、それだけで充分やで。」
「そう、ですか・・へへ。それなら良かったです!」
(料理苦手だけど頑張って良かった・・。)
「・・・ぷっ!!」
「へっ?!な、何ですか?」
「いやっ・・さっきエライ怖い顔した女がそうやって笑うんやな思うたらおもろくての・・くひっ・・!」
「なっ・・!し、失礼ですよ!」
「くくっ・・!」
た・・確かに怒ったけど私そんな怖くないし!!
「あ、汗拭きますよ!」
(何か恥ずかしい・・!!)
でも・・支配人の笑う顔もちょっと可愛いかも・・・。
支配人の汗を拭こうとタオルを持った手を伸ばす・・・と、その時支配人は弱々しい力で私の腕を掴んでくる。
「えっ・・支配人・・・?」
突然の事で驚いて支配人の顔を見ると・・さっきの笑顔はもうしてなくて、初めて見る支配人の表情だった。
初めてだけど・・どこかで見た事あるような・・・。
「・・1つ聞いてええか?」
「な・・何ですか?」
支配人の目・・凄い真剣・・・。
思わず吸い込まれそうな真っ直ぐな目でじっと私を見ている支配人は、そっと口を開く。
「・・お前・・・佐川とはどないな関係や。」
『ドクッ・・・』
「——・・ぇ・・・。」
”佐川”——その言葉に血の気が引いていく。
(どうして今・・その名前が・・・?)
じっと見ていた所為で視線を逸らす事が出来なくて、動揺する私の顔を直に見られてしまう。それを見逃す事のない支配人の目は、獲物を狙って逃がさないような鋭い目をしている。
「最初は俺への監視やと思とったが・・そうとちゃうんか?」
「監視って・・・え、何を、言って・・・?」
「何でここに住んどる。お前の目的は何なんや。」
「・・えっ・・目的、って・・え・・・?」
意味が、分からない・・私はただ、佐川に用意されたここに住んでるだけで・・・それ、だけ、で・・・・。
支配人の目が、怖い・・その目、思い出した・・・。
『お前はここで借金を返すんだよ。この店で一生・・な。』
(あの日の・・佐川と、同じ目・・・。)
「・・・おい・・?」
答えない私を怒るかと思ったら、その怖い目は戸惑いの目に変わっていった。
どうして戸惑ってるの・・?不思議に思った私だけど、頬に伝わる冷たい感覚で察する。
(私・・・泣い、てる・・。)
「あ・・あはっ・・・す、すみませっ・・。」
体が震える。涙が流れる。
グランドで働き始めて1ヵ月。それまで私は佐川と一度も会っていない。会っていないのに・・少し思い出しただけでこんなにも震えてしまう。
——佐川と同じ目をしている支配人を見ただけで、こんなにも震えてしまうなんて・・・。
(怖い・・この人が、怖い・・・。)
佐川が恐怖でしかない私は、同じ目をした支配人が・・・今は怖くて堪らなかった。