仮面達の夜想曲
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「店の様子はどないや?」
「ま~相変わらずかな~?サクラも少しずつ成長してるし、これからが楽しみ!」
「そんな事・・今日だって迷惑かけちゃったし・・。」
「新人は先輩に迷惑かけてナンボや。そこから学べばそれでええねん。」
「そ、そんなものですかね・・。」
でももう働き始めて1ヵ月だし・・そろそろ独り立ちしないと、いつまで経っても借金を返せない。そう思って焦れば焦る程失敗しちゃう・・・。
分かりやすくへこんでいると、ふと頭をポンポンと触れられた。視線を上げると、支配人が優しい笑顔で触っていた。
「んな落ち込むことあらへんて。隣のアンナちゃんやって元々はサクラちゃんと同じ新人の頃があったんやで?酒零すわ客怒らせるわ・・。」
「ちょっと支配人!私の印象下げないでくださいよっ!」
「下げるてなんやねん。先輩かて失敗するて教えなアカンやろが。」
「それが余計なんですー!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐアンナさんとそれを抑える支配人。
(・・やっぱりNO.1だから支配人と仲良いよね。)
他のキャストとも仲良いし・・そういう交流も大事なのかな。助けてもらってるけど、あんまりみんなと話した事が無くていつもアンナさんとばかりだから・・・色んな人と話して吸収すれば、技術も身につくのかな・・・。
それから暫くの間3人で飲んでると、いつの間にかいい時間になっていた。
(そろそろ帰らないと・・。)
そう思ってたら、アンナさんが何かを思い出したかのように突然立ち上がった。
「やばっ!!そろそろディスコ行かなきゃ!!」
「お前・・まだ遊び足らんのかいな。」
「だって今日はディスコクィーンが来る大切な日だもん!行かなきゃ!!またねサクラ、またお店で!」
「は、はい!お疲れ様でした!お気をつけてっ!」
「ありがと♡」
去り際に私の頭を撫でて「ちゃんとサクラ送ってくださいよ?!」って支配人に捨て台詞風に言って、アンナさんはダッシュでお店を出て行った。
・・・あんなにお酒飲んだのに本当にパワフル・・その元気分けて欲しい。・・キリもいいだろうしそろそろ帰ろうかな?送ってもらう必要ないし・・。
「あの支配人、私もそろそろ・・。」
「ちょい待ち。少しだけええか?」
「え?は、はい。」
支配人はそう言うと煙草を取り出して火を点けた。
(・・そういえばアンナさんがいた時1回も吸ってなかったよね?吸いたいのかな?)
何となくそう思っていたら、蝶ネクタイを外してボタンも2つほど開けた。
火のついた煙草を目一杯吸って、大きく煙を吐き出した支配人の表情は・・さっきよりも少し和らいだように見える。
もしかして・・・。
「支配人、煙草吸うのずっと我慢してたんですか?アンナさん別に煙草苦手じゃないですから吸ってもよかったんじゃ・・。」
「キャストの前じゃしっかりせなアカンからの。やぁっと楽になれる・・・。」
・・・えっと・・つまり支配人としての風格を大切にしたって事?一応私もキャストなんだけど・・別にいいのかな。それとも新人はキャストとして見られてないとか?それはそれで寂しいけど・・。
「マスター、同じのもう1杯。」
え、まだ飲むの?!支配人も結構飲んでたしやめた方がいいんじゃ・・しかもロック・・・。
「サクラちゃんも飲んだらどうや?これ飲んだら送ったるから。」
「えっ、いや私1人でも・・・。」
「こないな夜に女1人歩かせる方が嫌やねん。な?」
うっ・・・そ、そんな風に言われると断り辛い・・・。
「じゃあ・・カルーアミルクで。」
「かしこまりました。」
新しいお酒が出来て飲んでいても特に会話もなく、私はただひたすら煙草を吸っている支配人の横顔を見つめる。
疲れてる、だけじゃないよねやっぱり・・・いや疲れももちろんあるんだろうけど・・落ち込んでるようにも見えるというか・・。
「・・人の顔さっきから見よってなんやねん。」
「!」
(やばっ、見すぎちゃった・・!)
「いえ、そのっ・・大分お疲れだな~って思って!」
これは決して嘘じゃない・・・。
「せやなぁ・・店巡りして何人か引っ張ってきたんやがの、その度にされる接客が面倒でしゃあなかったわ・・。」
「え・・今日、お休みって言ってませんでした?」
「休みの日しか時間あらへんから出とるんや。・・はぁ・・・きっつ・・・。」
嘘っ・・そんなに忙しいの支配人って?
・・よく見ると目の下隈凄い・・・それによくよく見てみると体欲しいし・・ちゃんと食べてる?私も人の事言えないけど・・そんなに忙しいならちゃんと休んだりしないと危ないんじゃ・・。
「さて・・ほんなら帰るか。送る、で・・・。」
「えっ・・・?!」
立ち上がった支配人の体はぐらりと揺れて——そのまま床に倒れ込んでしまう。
「支配人?!」
慌てて倒れてしまった支配人に近付いて体に触れると、どことなく体温が高い気がした。おでこに触れるとほんのり汗をかいていた。
(えっ・・熱出てる・・!)
まさか、こんな体で働いてたの?!
「あのっ!タクシー呼んでもらっていいですか?!」
「は、はいっ!」
「支配人歩けますか?!腕通しますね!」
マスターにお願いして私も外の行こうと支配人の方に腕を回して立ち上がらせようと——したら、想像以上に体重が軽くて思ったよりも簡単に起き上がらせる事が出来た。
え、男の人ってこんなに軽いわけないよね?しかもこんな身長高い人なのに・・・。
肩を組んだままなんとか出口に向かうと、マスターがタクシーを止めて待ってくれていた。
「お客様、こちらです!」
「す、すみません!」
(あっ、そうだ!代金!)
まだ払えていない代金を払おうと支配人をタクシーに乗せた後に財布を出すと、マスターはそれを止めてきた。
「お客様、また今度でも・・!」
「駄目です!私が嫌なんです!足りない分はまたお支払いにきますから・・!運転手さん、招副町までお願いします!」
(本当はあんな部屋、入れたくないけど・・こんな状態の支配人放っておけない・・!)
「お客さん着きましたよ。」
「す、すみません!いくらですか?」
「こちらですけど・・チップはあるんですよね?」
「はぁっ・・?!」
近くだからってそんな事言うの・・・?!こっちは急いで支配人を休ませたいのに!!
乱暴に財布から余分なお金も出してタクシーを降りると、早々と去って行った。何なのよもう・・!!
「支配人、着きました!歩けます?!」
「はっ・・・はぁ・・・。」
(苦しそう・・早く休ませなきゃ・・!)
私は支配人を支えながら、住んでいるボロアパートの鍵を開ける。
蒼天堀川沿いにある古いアパート。部屋の中には必要最低限の物しか置いていない寂しい見た目。
ここは佐川に用意された・・・私の部屋。
「ま~相変わらずかな~?サクラも少しずつ成長してるし、これからが楽しみ!」
「そんな事・・今日だって迷惑かけちゃったし・・。」
「新人は先輩に迷惑かけてナンボや。そこから学べばそれでええねん。」
「そ、そんなものですかね・・。」
でももう働き始めて1ヵ月だし・・そろそろ独り立ちしないと、いつまで経っても借金を返せない。そう思って焦れば焦る程失敗しちゃう・・・。
分かりやすくへこんでいると、ふと頭をポンポンと触れられた。視線を上げると、支配人が優しい笑顔で触っていた。
「んな落ち込むことあらへんて。隣のアンナちゃんやって元々はサクラちゃんと同じ新人の頃があったんやで?酒零すわ客怒らせるわ・・。」
「ちょっと支配人!私の印象下げないでくださいよっ!」
「下げるてなんやねん。先輩かて失敗するて教えなアカンやろが。」
「それが余計なんですー!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐアンナさんとそれを抑える支配人。
(・・やっぱりNO.1だから支配人と仲良いよね。)
他のキャストとも仲良いし・・そういう交流も大事なのかな。助けてもらってるけど、あんまりみんなと話した事が無くていつもアンナさんとばかりだから・・・色んな人と話して吸収すれば、技術も身につくのかな・・・。
それから暫くの間3人で飲んでると、いつの間にかいい時間になっていた。
(そろそろ帰らないと・・。)
そう思ってたら、アンナさんが何かを思い出したかのように突然立ち上がった。
「やばっ!!そろそろディスコ行かなきゃ!!」
「お前・・まだ遊び足らんのかいな。」
「だって今日はディスコクィーンが来る大切な日だもん!行かなきゃ!!またねサクラ、またお店で!」
「は、はい!お疲れ様でした!お気をつけてっ!」
「ありがと♡」
去り際に私の頭を撫でて「ちゃんとサクラ送ってくださいよ?!」って支配人に捨て台詞風に言って、アンナさんはダッシュでお店を出て行った。
・・・あんなにお酒飲んだのに本当にパワフル・・その元気分けて欲しい。・・キリもいいだろうしそろそろ帰ろうかな?送ってもらう必要ないし・・。
「あの支配人、私もそろそろ・・。」
「ちょい待ち。少しだけええか?」
「え?は、はい。」
支配人はそう言うと煙草を取り出して火を点けた。
(・・そういえばアンナさんがいた時1回も吸ってなかったよね?吸いたいのかな?)
何となくそう思っていたら、蝶ネクタイを外してボタンも2つほど開けた。
火のついた煙草を目一杯吸って、大きく煙を吐き出した支配人の表情は・・さっきよりも少し和らいだように見える。
もしかして・・・。
「支配人、煙草吸うのずっと我慢してたんですか?アンナさん別に煙草苦手じゃないですから吸ってもよかったんじゃ・・。」
「キャストの前じゃしっかりせなアカンからの。やぁっと楽になれる・・・。」
・・・えっと・・つまり支配人としての風格を大切にしたって事?一応私もキャストなんだけど・・別にいいのかな。それとも新人はキャストとして見られてないとか?それはそれで寂しいけど・・。
「マスター、同じのもう1杯。」
え、まだ飲むの?!支配人も結構飲んでたしやめた方がいいんじゃ・・しかもロック・・・。
「サクラちゃんも飲んだらどうや?これ飲んだら送ったるから。」
「えっ、いや私1人でも・・・。」
「こないな夜に女1人歩かせる方が嫌やねん。な?」
うっ・・・そ、そんな風に言われると断り辛い・・・。
「じゃあ・・カルーアミルクで。」
「かしこまりました。」
新しいお酒が出来て飲んでいても特に会話もなく、私はただひたすら煙草を吸っている支配人の横顔を見つめる。
疲れてる、だけじゃないよねやっぱり・・・いや疲れももちろんあるんだろうけど・・落ち込んでるようにも見えるというか・・。
「・・人の顔さっきから見よってなんやねん。」
「!」
(やばっ、見すぎちゃった・・!)
「いえ、そのっ・・大分お疲れだな~って思って!」
これは決して嘘じゃない・・・。
「せやなぁ・・店巡りして何人か引っ張ってきたんやがの、その度にされる接客が面倒でしゃあなかったわ・・。」
「え・・今日、お休みって言ってませんでした?」
「休みの日しか時間あらへんから出とるんや。・・はぁ・・・きっつ・・・。」
嘘っ・・そんなに忙しいの支配人って?
・・よく見ると目の下隈凄い・・・それによくよく見てみると体欲しいし・・ちゃんと食べてる?私も人の事言えないけど・・そんなに忙しいならちゃんと休んだりしないと危ないんじゃ・・。
「さて・・ほんなら帰るか。送る、で・・・。」
「えっ・・・?!」
立ち上がった支配人の体はぐらりと揺れて——そのまま床に倒れ込んでしまう。
「支配人?!」
慌てて倒れてしまった支配人に近付いて体に触れると、どことなく体温が高い気がした。おでこに触れるとほんのり汗をかいていた。
(えっ・・熱出てる・・!)
まさか、こんな体で働いてたの?!
「あのっ!タクシー呼んでもらっていいですか?!」
「は、はいっ!」
「支配人歩けますか?!腕通しますね!」
マスターにお願いして私も外の行こうと支配人の方に腕を回して立ち上がらせようと——したら、想像以上に体重が軽くて思ったよりも簡単に起き上がらせる事が出来た。
え、男の人ってこんなに軽いわけないよね?しかもこんな身長高い人なのに・・・。
肩を組んだままなんとか出口に向かうと、マスターがタクシーを止めて待ってくれていた。
「お客様、こちらです!」
「す、すみません!」
(あっ、そうだ!代金!)
まだ払えていない代金を払おうと支配人をタクシーに乗せた後に財布を出すと、マスターはそれを止めてきた。
「お客様、また今度でも・・!」
「駄目です!私が嫌なんです!足りない分はまたお支払いにきますから・・!運転手さん、招副町までお願いします!」
(本当はあんな部屋、入れたくないけど・・こんな状態の支配人放っておけない・・!)
「お客さん着きましたよ。」
「す、すみません!いくらですか?」
「こちらですけど・・チップはあるんですよね?」
「はぁっ・・?!」
近くだからってそんな事言うの・・・?!こっちは急いで支配人を休ませたいのに!!
乱暴に財布から余分なお金も出してタクシーを降りると、早々と去って行った。何なのよもう・・!!
「支配人、着きました!歩けます?!」
「はっ・・・はぁ・・・。」
(苦しそう・・早く休ませなきゃ・・!)
私は支配人を支えながら、住んでいるボロアパートの鍵を開ける。
蒼天堀川沿いにある古いアパート。部屋の中には必要最低限の物しか置いていない寂しい見た目。
ここは佐川に用意された・・・私の部屋。