仮面達の夜想曲
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数ヶ月後。
もう少しで家に着く客人を迎える為に部屋の掃除をしている最中。窓柵にハンガー掛け服を干して、フローリングの床を箒で掃いてテーブルの上を濡れ布巾で綺麗にする。
「・・よしっ!!」
ここまで綺麗にすれば大丈夫かな!
軽く手をポンポンと叩くとタイミング良く玄関の扉が開かれる。
「おう、帰ったでシエル!」
「お帰りなさい真島さん。いらっしゃいアンナさん!」
「久しぶりシエル!元気そうだね!」
「ふふっ、お陰様で。」
仕事終わりの真島さんとアンナさんが帰ってきた。
陽は少し登り始めてて真島さんの手には軽く食べられる朝食入っているレジ袋がある。いつものように食べ始める真島さんをよそに、アンナさんは部屋の隅に少しずつ近づいていく。
「いやぁ〜ん本当可愛い〜♡支配人に似なくて良かったわ〜!」
「おい何失礼かましとんねん。」
「だって本当の事じゃん!ね〜シエル?」
「あははっ、ノーコメントで。」
「シエルまで何言うとんねん!」
「・・・ふぇっ・・。」
「「「あっ・・。」」」
「ふわあぁぁ!!んあぁぁぁ!!」
真島さんのちょっと大きい声に驚いて泣き始めたのは–––私と真島さんの子供。慌てて抱っこした私は懸命にあやして、アンナさんは真島さんに文句を言うように近づいていく。
「も〜支配人の所為で泣いちゃったじゃん!」
「す、すまん・・。」
「は〜いはい、いい子だね〜大丈夫よ〜。」
あの後無事に出産を終えた私はまだこのアパートで過ごしている。本当早めにグランドに復帰する予定だったけど、とある事情でまだできないでいた。夜泣きとかで毎日大変だけど・・可愛いからなんでもできちゃうなぁ。
やっと泣き止んだところで私達はテーブルを囲んで話し始める。
「しかし・・まさか佐川はんが嶋野の親父に交渉しに行ってくれるとはのぉ。」
「シエルが妊娠したって聞いてキレてたのにね。」
「ふふっ、確かにキレてましたね。」
そう、佐川は今真島さんの組長さんである嶋野さんに”早く東城会に復帰させられないか”と話に行ってくれているところ。
佐川もこの子の面倒を見てくれるはずだったけど・・内容が内容だからなんとも言えない。グランドに復帰して早く働きたいけど、交渉が上手くいくのを願うしかない、かな。
「でも・・私は言うのも変だけどいいの?司が・・この子の面倒見るの。」
「・・・。」
正直・・それもなんとも言えない。今までの佐川との出来事が偽りのものではあったけど、かといって全てをすぐに許せる訳じゃなかった。前より普通に会話はできてるけど。どうしても体が強張っちゃうし拒絶しようとしてしまう。
でも・・でも佐川は・・。
「・・悪い人じゃないって・・分かってますから。」
そう。それだけ分かっていれば、きっと大丈夫。
「それに週2くらいですし、なんとかなりますよ。」
「そっか・・それなら良かった。」
アンナさんはどこか嬉しそうな顔でそう言った。私と佐川が話せるようになっていくのを一番喜んでくれていたのはアンナさんだった。それくらいアンナさんは私と佐川の関係を気にしてくれていて、いつでも頼れるお姉さんに変わりはない。
色々話をしているとふと何かを思いついたアンナさんは私を見てくる。
「そういえばずっと気になってるんだけど・・いつになったら支配人の事名前で呼んであげるの?」
「あははっ・・いやぁ恥ずかしくて・・。」
「あのねぇ・・まだ籍を入れてないけどさ、旦那の事を苗字で呼ぶなんて普通ないからね?名前呼び慣れときなよ?」
「うっ・・・。」
「ヒヒッ、言われとるでシエル?」
『籍を入れるんは・・東城会に復帰できてからでもええか?』
真島さんにそう言われた時は驚いたけど・・私はそれを咎めなかった。たとえ籍を入れなくても真島さんが傍にいてくれる事に変わりはない。それだけで・・本当に充分。
「さて、そろそろ帰るかな!またねシエル!」
「また来てください!」
「気ぃつけて帰れよ〜。」
アンナさんは私達の子供を最後に優しく撫でた後、家へ帰って行った。仕事終わりにこうして会いに来てくれるって・・本当にこの子の事好きなんだなぁ。
テーブルの上を片付けていると、真島さんは大きく背筋を伸ばしてそのまま床に寝転んだ。
「は〜・・早う戻りたいわぁ。そうすればシエルと籍入れられるんに・・。」
・・そう言えば・・・。
「どうして戻ってからなの?」
「・・・それは・・。」
「理由聞いた事ないなぁって思って・・聞かせてくれる?」
「・・・・。」
そのまま真島さんは黙ってしまった。
聞かれたく・・なかったのかな。でも聞きたい。少し待ってると真島さんは少し気まずそうな顔で答えてくれる。
「・・もしシエルが・・俺の元から離れてもええようにや。」
「えっ・・・?」
(離れられるようにって・・どういう事・・?)
「あの後話してくれた時から考えとったんや。佐川やなかったけど、シエルの両親の命奪ったんは極道や・・それだけは間違いない。そんな極道の世界に俺は戻ろうとしとる。」
真島さんは真剣な目で私を見つめながら起き上がってきて、私の手をそっと握ってくれる。
「・・俺の子供を産んでくれた後に言うのも癪なんやが・・もし、まだ極道を許せへんのやったら・・シエルは俺の元から離れてええんや。もちろん支援はする、約束や。シエルを苦労させる事は絶対にせぇへん。」
「真島さん・・。」
「せやけどもし、もしそんな俺と一緒におってくれるんやったら・・極道モンに戻った俺と籍を入れてほしい。そう思うたんや。」
そっと私の頬に手を伸ばしてくる真島さん。
そんな風に・・考えてたんだ。私と、私達の子供の事を考えてくれてたんだ。
(真島さんは本当に・・どこまでも優しい・・。)
「・・ねぇ真島さん。この子真島さんと同じ目の色じゃない?」
「え?あ、あぁせやな。それがどないした?」
眠っている私達の子供をそっと抱き上げて真島さんの隣に座る。さっきまで私の手を握ってくれていた真島さんの手をそっと小さな手に近づけさせる。
「シエル・・?」
「ほら、パパだよ〜?」
「・・うぅ・・んあ・・。」
少し冷たい手に気づいて目を覚ました私達の子供は、真島さんの指をキュッと握る。
とびっきりの笑顔で。そんな笑顔に思わず微笑んでしまう真島さんを見て同じように微笑む私。この幸せの時間を一緒に過ごせるのは・・この人しかいない。
「この子の父親はたった一人。真島さん・・ううん、吾朗さんだけだよ?」
「・・!」
「だからって理由だけじゃない。私は支配人の吾朗さんでも極道じゃない吾朗さんを好きになったんじゃない。真島吾朗っていうたった一人の男性を好きになったんだよ。」
職業とか、カタギとか、極道とか、そんなの関係ない。
私は・・真島吾朗っていう、たった一人の存在を・・・心の底から愛してる。
「そんな人の傍から離れるなんてあり得ないでしょ?」
「・・・っ・・。」
その私の言葉に真島さんの表情は歪んで、私達をそっと片腕で抱き寄せてくる。
「おおきに・・おおきにやでシエル。」
真島さんの目から流れた一粒の涙が私の頬に落ちて、その涙は私の頬を伝って私達の子供に指に僅かにこぼれ落ちる。
「愛しとる・・ずっと愛しとる。俺はずっとお前達を・・・家族を守る。」
「・・うん・・!」
それは真島さんからの、嘘偽りのない誓いの言葉。
そんな私達を祝福してくれるように、私達の間にいる子供のご機嫌な笑い声が部屋に響き渡る。
もう少しで家に着く客人を迎える為に部屋の掃除をしている最中。窓柵にハンガー掛け服を干して、フローリングの床を箒で掃いてテーブルの上を濡れ布巾で綺麗にする。
「・・よしっ!!」
ここまで綺麗にすれば大丈夫かな!
軽く手をポンポンと叩くとタイミング良く玄関の扉が開かれる。
「おう、帰ったでシエル!」
「お帰りなさい真島さん。いらっしゃいアンナさん!」
「久しぶりシエル!元気そうだね!」
「ふふっ、お陰様で。」
仕事終わりの真島さんとアンナさんが帰ってきた。
陽は少し登り始めてて真島さんの手には軽く食べられる朝食入っているレジ袋がある。いつものように食べ始める真島さんをよそに、アンナさんは部屋の隅に少しずつ近づいていく。
「いやぁ〜ん本当可愛い〜♡支配人に似なくて良かったわ〜!」
「おい何失礼かましとんねん。」
「だって本当の事じゃん!ね〜シエル?」
「あははっ、ノーコメントで。」
「シエルまで何言うとんねん!」
「・・・ふぇっ・・。」
「「「あっ・・。」」」
「ふわあぁぁ!!んあぁぁぁ!!」
真島さんのちょっと大きい声に驚いて泣き始めたのは–––私と真島さんの子供。慌てて抱っこした私は懸命にあやして、アンナさんは真島さんに文句を言うように近づいていく。
「も〜支配人の所為で泣いちゃったじゃん!」
「す、すまん・・。」
「は〜いはい、いい子だね〜大丈夫よ〜。」
あの後無事に出産を終えた私はまだこのアパートで過ごしている。本当早めにグランドに復帰する予定だったけど、とある事情でまだできないでいた。夜泣きとかで毎日大変だけど・・可愛いからなんでもできちゃうなぁ。
やっと泣き止んだところで私達はテーブルを囲んで話し始める。
「しかし・・まさか佐川はんが嶋野の親父に交渉しに行ってくれるとはのぉ。」
「シエルが妊娠したって聞いてキレてたのにね。」
「ふふっ、確かにキレてましたね。」
そう、佐川は今真島さんの組長さんである嶋野さんに”早く東城会に復帰させられないか”と話に行ってくれているところ。
佐川もこの子の面倒を見てくれるはずだったけど・・内容が内容だからなんとも言えない。グランドに復帰して早く働きたいけど、交渉が上手くいくのを願うしかない、かな。
「でも・・私は言うのも変だけどいいの?司が・・この子の面倒見るの。」
「・・・。」
正直・・それもなんとも言えない。今までの佐川との出来事が偽りのものではあったけど、かといって全てをすぐに許せる訳じゃなかった。前より普通に会話はできてるけど。どうしても体が強張っちゃうし拒絶しようとしてしまう。
でも・・でも佐川は・・。
「・・悪い人じゃないって・・分かってますから。」
そう。それだけ分かっていれば、きっと大丈夫。
「それに週2くらいですし、なんとかなりますよ。」
「そっか・・それなら良かった。」
アンナさんはどこか嬉しそうな顔でそう言った。私と佐川が話せるようになっていくのを一番喜んでくれていたのはアンナさんだった。それくらいアンナさんは私と佐川の関係を気にしてくれていて、いつでも頼れるお姉さんに変わりはない。
色々話をしているとふと何かを思いついたアンナさんは私を見てくる。
「そういえばずっと気になってるんだけど・・いつになったら支配人の事名前で呼んであげるの?」
「あははっ・・いやぁ恥ずかしくて・・。」
「あのねぇ・・まだ籍を入れてないけどさ、旦那の事を苗字で呼ぶなんて普通ないからね?名前呼び慣れときなよ?」
「うっ・・・。」
「ヒヒッ、言われとるでシエル?」
『籍を入れるんは・・東城会に復帰できてからでもええか?』
真島さんにそう言われた時は驚いたけど・・私はそれを咎めなかった。たとえ籍を入れなくても真島さんが傍にいてくれる事に変わりはない。それだけで・・本当に充分。
「さて、そろそろ帰るかな!またねシエル!」
「また来てください!」
「気ぃつけて帰れよ〜。」
アンナさんは私達の子供を最後に優しく撫でた後、家へ帰って行った。仕事終わりにこうして会いに来てくれるって・・本当にこの子の事好きなんだなぁ。
テーブルの上を片付けていると、真島さんは大きく背筋を伸ばしてそのまま床に寝転んだ。
「は〜・・早う戻りたいわぁ。そうすればシエルと籍入れられるんに・・。」
・・そう言えば・・・。
「どうして戻ってからなの?」
「・・・それは・・。」
「理由聞いた事ないなぁって思って・・聞かせてくれる?」
「・・・・。」
そのまま真島さんは黙ってしまった。
聞かれたく・・なかったのかな。でも聞きたい。少し待ってると真島さんは少し気まずそうな顔で答えてくれる。
「・・もしシエルが・・俺の元から離れてもええようにや。」
「えっ・・・?」
(離れられるようにって・・どういう事・・?)
「あの後話してくれた時から考えとったんや。佐川やなかったけど、シエルの両親の命奪ったんは極道や・・それだけは間違いない。そんな極道の世界に俺は戻ろうとしとる。」
真島さんは真剣な目で私を見つめながら起き上がってきて、私の手をそっと握ってくれる。
「・・俺の子供を産んでくれた後に言うのも癪なんやが・・もし、まだ極道を許せへんのやったら・・シエルは俺の元から離れてええんや。もちろん支援はする、約束や。シエルを苦労させる事は絶対にせぇへん。」
「真島さん・・。」
「せやけどもし、もしそんな俺と一緒におってくれるんやったら・・極道モンに戻った俺と籍を入れてほしい。そう思うたんや。」
そっと私の頬に手を伸ばしてくる真島さん。
そんな風に・・考えてたんだ。私と、私達の子供の事を考えてくれてたんだ。
(真島さんは本当に・・どこまでも優しい・・。)
「・・ねぇ真島さん。この子真島さんと同じ目の色じゃない?」
「え?あ、あぁせやな。それがどないした?」
眠っている私達の子供をそっと抱き上げて真島さんの隣に座る。さっきまで私の手を握ってくれていた真島さんの手をそっと小さな手に近づけさせる。
「シエル・・?」
「ほら、パパだよ〜?」
「・・うぅ・・んあ・・。」
少し冷たい手に気づいて目を覚ました私達の子供は、真島さんの指をキュッと握る。
とびっきりの笑顔で。そんな笑顔に思わず微笑んでしまう真島さんを見て同じように微笑む私。この幸せの時間を一緒に過ごせるのは・・この人しかいない。
「この子の父親はたった一人。真島さん・・ううん、吾朗さんだけだよ?」
「・・!」
「だからって理由だけじゃない。私は支配人の吾朗さんでも極道じゃない吾朗さんを好きになったんじゃない。真島吾朗っていうたった一人の男性を好きになったんだよ。」
職業とか、カタギとか、極道とか、そんなの関係ない。
私は・・真島吾朗っていう、たった一人の存在を・・・心の底から愛してる。
「そんな人の傍から離れるなんてあり得ないでしょ?」
「・・・っ・・。」
その私の言葉に真島さんの表情は歪んで、私達をそっと片腕で抱き寄せてくる。
「おおきに・・おおきにやでシエル。」
真島さんの目から流れた一粒の涙が私の頬に落ちて、その涙は私の頬を伝って私達の子供に指に僅かにこぼれ落ちる。
「愛しとる・・ずっと愛しとる。俺はずっとお前達を・・・家族を守る。」
「・・うん・・!」
それは真島さんからの、嘘偽りのない誓いの言葉。
そんな私達を祝福してくれるように、私達の間にいる子供のご機嫌な笑い声が部屋に響き渡る。