仮面達の夜想曲
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「じゃあまたここにな、シエル。」
「はい、また。」
男湯と女湯が別れている番台の前で合流しようと決め、私達は風呂場へ向かった。
・・・変だなぁ、この時間もう少し人いてもおかしくないのに・・もしかして私1人なのかな?
そう思いながら中に入って体を軽く洗ってお風呂に入ろうとしたその時——湯気で見えなかった人物がそこにいた。
「・・・!」
「・・サクラ・・・。」
「アンナ・・さん・・。」
そこにはアンナさんがいた。私を見て特別驚く様子はない・・て事はまさか・・・。
「・・待ってたん、ですか・・?」
「・・街の監視から聞いて急いでここを貸切にしたの。今男湯には司もいるわ。」
「っ!」
「大丈夫、支配人に乱暴するわけじゃないわ。・・入ったら?」
「・・・・。」
私はアンナさんに言われた通りお風呂に入る。
・・この間とは違って少し間を空けながら。その距離感が自分からした事とはいえ悲しかった。あんなに優しくしてもらったのに・・たった少しの出来事で、こうなっちゃうんだ・・。
視線を下に向けてそんな事を考えてると、アンナさんがなんとなくこっちを見てきたのが分かった。
「サクラ。・・ううん、シエルちゃん。」
「・・・・。」
「司がね、シエルちゃんが今後どうしたいか気にしてるの。」
「・・え・・?」
「全てを知ったうえでどうしたいのか。シエルちゃんが望む事を・・最後に叶えてあげたいんだって。」
・・・嘘・・佐川が、そんな事を・・・?
「あの人はね・・昔から望んだものを手に入れる事ができなかった人なの。本当に望むもの・・友人とか、家族とか。もう少しで手が届きそうだって時に必ずいなくなってしまうのよ。その1つが・・あなたのご両親よ。」
「私の・・両親・・・?」
「・・司はどんな形であれ、あなたの両親に自分を頼ってほしかった。たとえ裏の世界の人間だとしても、それくらいはしてくれると思ってた。でもそれが叶わなくて・・最悪な結末が起こってしまった。」
(最悪な・・結末・・・。)
それは・・私の両親の死。近江の人間に殺されてしまった現場を見た佐川は・・・悲しかったのかな。
佐川が望んでいたもの・・・何でだろ・・今ならその言葉を受け入れられる気がする。
「だからせめて・・2人の娘であるあなたを守りたかった・・不器用なりにね。」
・・不器用なりに、か・・。
「・・不器用・・すぎますね。」
「うん・・でもそこがあの人にいいところなの。そんなあの人をずっと見てきた・・ふふっ、本人はただの駒としてしか見てないでしょうけど・・それでも私は・・あの人の傍にいられるなら、それで良かったの・・。」
どこか悲しそうに言うアンナさん。
・・・ただの駒、だったのかな。もし佐川がアンナさんの思う佐川だったら、きっとそう思ってないハズ。
だって・・・。
「・・アンナさん、だからじゃないですか?」
「え?」
「報告を聞いた時に嬉しそうにしてたのも、風邪を引いたって聞いて急いで駆けつけたのも・・信頼しているアンナさんの言葉だからこそ、アンナさんの前で起こした行動なんじゃないでしょうか。」
「・・・!」
「・・少なくとも・・私は、そう思います・・。」
でもきっとそれは佐川も無意識で・・自覚がないんだと思う。そう思うと・・本当の佐川の行動は全て”不器用な優しさ”だったんだ。借金があるといった時も、無理矢理薬を飲ましてきた時も。
自分の感情を素直に表現できない人なんだろうな。
「・・ふふ、情けないわね・・あなたに、そんな事を言ってもらうなんて・・私はシエルちゃんを、騙してたのにね・・。」
「・・アンナさんのその騙しも・・優しさだったんですよね?」
「え・・シエル、ちゃん・・・?」
今ならわかる。アンナさんの、隠れた優しさも。
「私を傷つけない為の、優しさだったのに・・!!私は、アンナさんにっ・・酷い、事っ・・!!」
『・・大好き、だったのに・・・!!』
『だって結局は・・2人共私を騙してたじゃないですか・・・。』
『・・・嘘つき・・!!』
ポロポロと涙を流しながら、私はアンナさんに言ってしまった言葉を思い出していた。
全部私を守る為の、私を傷つけない為の嘘だったのに。
辛かったはずなのに、私は自分の事しか考えてなかった。
アンナさんの気持ちに気付けなくて・・酷い事を言ってしまったんだ。
「シエルちゃん・・!」
泣き続ける私に抱きついてきたアンナさんも、大泣きだった。
「ごめんなさいっ・・ごめんなさいアンナさんっ・・!!」
「っ・・シエルちゃっ・・ごめっ・・ありがっ・・!」
「アンナ・・さんっ・・・!」
誰もいない女湯で泣き続ける私達。
その日の銭湯は湯元である蛇口が開いたままでどんどんお湯が溢れ出ていた。
その溢れ出るお湯と一緒に私達の涙も流れ落ちていった所為か、心は少しずつ晴れていく。
(ずっとずっと・・大好きです。)
それから泣き止んだのは、それから数分後だった。
「・・ふふ、いい年した女が泣いちゃった。は~・・司に笑われそう。」
「いいじゃないですか泣いたって。きっとその涙を佐川が止めてくれますよ。」
「あはっ、そうだといいなぁ。」
泣き止んだ私達はお風呂から出て体を洗っていた。
——さっきと違って距離を空けず、いつもの距離間で。
「・・ねぇ、支配人とはどこまでいったの?」
「えっ?」
「もしかして・・しちゃった?」
「~~!?!?」
し・・ししし、しちゃったって・・!!!
「えっ図星?!嘘っ、本当?!」
「い、いいいいじゃないですか別に!!」
「ちょっと、詳しく教えなさいよ!支配人どんな感じだったの?!ん?!」
「言いませんよそんな事!!」
「え~?!」
・・・さっきまでの雰囲気が嘘みたい。
またこんなに話せるようになれるなんて・・凄い嬉しい。今まで以上にアンナさんとの会話が楽しい。
もっと早く・・お互い本当の事を話せていたら良かったのになぁ。そうすればこんな風にもっと笑えてたのに・・・。
でも・・無事こうして話せてるから、いいのかな。
「・・で?そうするの?」
「え?」
「シエルちゃんはこれからどうしたい?」
・・・その答えを悩む事はなかった。
「私は・・・。」
私が願うのは・・ただ1つ。
「はい、また。」
男湯と女湯が別れている番台の前で合流しようと決め、私達は風呂場へ向かった。
・・・変だなぁ、この時間もう少し人いてもおかしくないのに・・もしかして私1人なのかな?
そう思いながら中に入って体を軽く洗ってお風呂に入ろうとしたその時——湯気で見えなかった人物がそこにいた。
「・・・!」
「・・サクラ・・・。」
「アンナ・・さん・・。」
そこにはアンナさんがいた。私を見て特別驚く様子はない・・て事はまさか・・・。
「・・待ってたん、ですか・・?」
「・・街の監視から聞いて急いでここを貸切にしたの。今男湯には司もいるわ。」
「っ!」
「大丈夫、支配人に乱暴するわけじゃないわ。・・入ったら?」
「・・・・。」
私はアンナさんに言われた通りお風呂に入る。
・・この間とは違って少し間を空けながら。その距離感が自分からした事とはいえ悲しかった。あんなに優しくしてもらったのに・・たった少しの出来事で、こうなっちゃうんだ・・。
視線を下に向けてそんな事を考えてると、アンナさんがなんとなくこっちを見てきたのが分かった。
「サクラ。・・ううん、シエルちゃん。」
「・・・・。」
「司がね、シエルちゃんが今後どうしたいか気にしてるの。」
「・・え・・?」
「全てを知ったうえでどうしたいのか。シエルちゃんが望む事を・・最後に叶えてあげたいんだって。」
・・・嘘・・佐川が、そんな事を・・・?
「あの人はね・・昔から望んだものを手に入れる事ができなかった人なの。本当に望むもの・・友人とか、家族とか。もう少しで手が届きそうだって時に必ずいなくなってしまうのよ。その1つが・・あなたのご両親よ。」
「私の・・両親・・・?」
「・・司はどんな形であれ、あなたの両親に自分を頼ってほしかった。たとえ裏の世界の人間だとしても、それくらいはしてくれると思ってた。でもそれが叶わなくて・・最悪な結末が起こってしまった。」
(最悪な・・結末・・・。)
それは・・私の両親の死。近江の人間に殺されてしまった現場を見た佐川は・・・悲しかったのかな。
佐川が望んでいたもの・・・何でだろ・・今ならその言葉を受け入れられる気がする。
「だからせめて・・2人の娘であるあなたを守りたかった・・不器用なりにね。」
・・不器用なりに、か・・。
「・・不器用・・すぎますね。」
「うん・・でもそこがあの人にいいところなの。そんなあの人をずっと見てきた・・ふふっ、本人はただの駒としてしか見てないでしょうけど・・それでも私は・・あの人の傍にいられるなら、それで良かったの・・。」
どこか悲しそうに言うアンナさん。
・・・ただの駒、だったのかな。もし佐川がアンナさんの思う佐川だったら、きっとそう思ってないハズ。
だって・・・。
「・・アンナさん、だからじゃないですか?」
「え?」
「報告を聞いた時に嬉しそうにしてたのも、風邪を引いたって聞いて急いで駆けつけたのも・・信頼しているアンナさんの言葉だからこそ、アンナさんの前で起こした行動なんじゃないでしょうか。」
「・・・!」
「・・少なくとも・・私は、そう思います・・。」
でもきっとそれは佐川も無意識で・・自覚がないんだと思う。そう思うと・・本当の佐川の行動は全て”不器用な優しさ”だったんだ。借金があるといった時も、無理矢理薬を飲ましてきた時も。
自分の感情を素直に表現できない人なんだろうな。
「・・ふふ、情けないわね・・あなたに、そんな事を言ってもらうなんて・・私はシエルちゃんを、騙してたのにね・・。」
「・・アンナさんのその騙しも・・優しさだったんですよね?」
「え・・シエル、ちゃん・・・?」
今ならわかる。アンナさんの、隠れた優しさも。
「私を傷つけない為の、優しさだったのに・・!!私は、アンナさんにっ・・酷い、事っ・・!!」
『・・大好き、だったのに・・・!!』
『だって結局は・・2人共私を騙してたじゃないですか・・・。』
『・・・嘘つき・・!!』
ポロポロと涙を流しながら、私はアンナさんに言ってしまった言葉を思い出していた。
全部私を守る為の、私を傷つけない為の嘘だったのに。
辛かったはずなのに、私は自分の事しか考えてなかった。
アンナさんの気持ちに気付けなくて・・酷い事を言ってしまったんだ。
「シエルちゃん・・!」
泣き続ける私に抱きついてきたアンナさんも、大泣きだった。
「ごめんなさいっ・・ごめんなさいアンナさんっ・・!!」
「っ・・シエルちゃっ・・ごめっ・・ありがっ・・!」
「アンナ・・さんっ・・・!」
誰もいない女湯で泣き続ける私達。
その日の銭湯は湯元である蛇口が開いたままでどんどんお湯が溢れ出ていた。
その溢れ出るお湯と一緒に私達の涙も流れ落ちていった所為か、心は少しずつ晴れていく。
(ずっとずっと・・大好きです。)
それから泣き止んだのは、それから数分後だった。
「・・ふふ、いい年した女が泣いちゃった。は~・・司に笑われそう。」
「いいじゃないですか泣いたって。きっとその涙を佐川が止めてくれますよ。」
「あはっ、そうだといいなぁ。」
泣き止んだ私達はお風呂から出て体を洗っていた。
——さっきと違って距離を空けず、いつもの距離間で。
「・・ねぇ、支配人とはどこまでいったの?」
「えっ?」
「もしかして・・しちゃった?」
「~~!?!?」
し・・ししし、しちゃったって・・!!!
「えっ図星?!嘘っ、本当?!」
「い、いいいいじゃないですか別に!!」
「ちょっと、詳しく教えなさいよ!支配人どんな感じだったの?!ん?!」
「言いませんよそんな事!!」
「え~?!」
・・・さっきまでの雰囲気が嘘みたい。
またこんなに話せるようになれるなんて・・凄い嬉しい。今まで以上にアンナさんとの会話が楽しい。
もっと早く・・お互い本当の事を話せていたら良かったのになぁ。そうすればこんな風にもっと笑えてたのに・・・。
でも・・無事こうして話せてるから、いいのかな。
「・・で?そうするの?」
「え?」
「シエルちゃんはこれからどうしたい?」
・・・その答えを悩む事はなかった。
「私は・・・。」
私が願うのは・・ただ1つ。