仮面達の夜想曲
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「そっか・・ご両親の借金で・・。」
「・・はい・・・正直辛いです。いつまでこの生活は続くのかなって・・私そのヤクザが怖くて・・・いつまで、アイツの言う通りにしなくちゃいけないのかなって・・・・。」
目の前で両親が殺されてしまった事。
借金を返す為に”グランド”に放り込まれた事。
アンナさんはずっと黙って聞いてくれていて、私はずっと話し続けてた。
「でも・・頑張らなきゃいけないんです。怖くても頑張って・・借金を返して自由になりたいんです。」
「・・・。」
「・・私、アンナさんには本当に感謝してるんです。」
「え・・?」
「こんな私を育ててくれて・・アンナさんのおかげでここまでやってこれたんです。だから今更なんですけど・・本当にありがとうございます。」
「・・・私は、そんな言われるような事はなにも・・。」
「そんな事ないです!」
アンナさんはいつも私をご飯に誘ってくれた。
アンナさんはいつもアドバイスをしてくれた。
ノリコさんの時だってドレスを貸してくれた、変な噂を流されてたのに私の言葉を信じてくれた。
「アンナさんがいなかったら・・今頃どうなっていたか・・。」
その現実は変わらない。キャストとして夜の世界を生きていられるのは真島さんのおかげでもあるけど・・アンナさんがずっと現場で支えてくれていたから。
「だから・・本当にありがとうございます!」
改めてお礼を言うのって・・少し恥ずかしい。
でも・・何でだろ、これが裸の付き合いなのかな。やっとアンナさんにお礼を言えた。
な・・なんか照れちゃうな、顔が熱いや・・・。
「アンナさ・・・?」
(アンナ・・さん?)
黙ってるアンナさんを見ると——泣いてた。
ポロポロと涙を流すアンナさん。泣いてるアンナさん・・初めて見た。
でも・・・何で?
「ど、どうしたんですか?!」
「っ・・ううん、なんでもない!なんでもないのっ・・・あはっ、改めて言われるのが嬉しくてっ・・・。」
アンナさん・・。
(本当に・・それだけ?)
それだけの涙じゃない気がするのは気のせい・・・?
そんな事を考えてると、アンナさんは思い切り私に抱きついてきた。その勢いでお風呂が少し溢れて水の音が鳴り響く。
「きゃっ・・!」
「・・———・・・。」
(え・・?今、なんて・・・?)
お湯の反響音の所為でよく聞こえなかった・・なんて言ったの?
聞こうとしたら、アンナさんは私を話してニッコリと微笑んでくる。
「そろそろ帰るね!ちゃんと元気になってお店に来るのよ!」
「えっ・・あ、はい・・!」
アンナさんはお風呂から出る前に私の頭を優しく撫でて、そのまま立ち去ってしまった。
・・・何か変だったなアンナさん。照れ隠し・・でもなかったし。何か気に障る事言っちゃったかな・・。
もう体調も平気だし・・明日出勤してアンナさんに謝ろうかな。
翌日——
ちょっと早い時間に来ちゃった・・アンナさん、こんな時間に来ないよね・・・まぁいっか。早めに準備して待ってようかな。
(もしかしたら真島さんが・・いるかもしれない。)
お店が始まる前に・・会えるといいな。そんな事を考えながらいつも通り裏口からグランドに入る。
———正面口を見なかったから”臨時休業”の看板が出ている事に気付く事が出来なかった———
「あれ?誰もいない?」
おかしいな・・いつもならボーイ達が掃除をしてるはずなのに。
・・そ、そんな早く来ちゃったのかな。それともみんなバックヤードで休んでるとか?そうかも・・とりあえずバックヤード行って着替えなきゃ!
それにしても誰もいないグランドも初めて見るなぁ・・こんなキラキラしたお店って凄いよね。
「・・・、・・・!」
「・・・・。・・・・・・。」
(ん?)
話し声が聞こえる・・やっぱりみんないるのかな?
階段をあがってバックヤードに近付くと、その声の主が少しずつ分かってきた。
(この声・・アンナさん?)
もういるんだ・・!珍しく早いなぁ。でもよかった、開店前に話が出来そう!
よしっ、元気になったから心配かけないように挨拶しなきゃ!
「おは——」
「お前・・今何て言った?」
「——っ?!」
ドアノブに手をつけようとしたと同時に聞こえてきた、男の声。
その声も知っている。私にとって・・恐怖でしかないその声の主。
(さ・・がわ・・・?)
この扉の向こうに・・・佐川がいる・・?
金属製のドアノブだから冷たいのは当たり前なのに、それ以上に冷たく感じてしまう。持ったドアノブを動かす事も離す事も出来ない。その声さえ聞きたくないのに、どうしてもその声が私の耳に入ってきてしまう。
「俺も最近疲れてて耳が悪くなったかねぇ・・聞き間違えたか?」
「・・いいえ、違うわ。」
(・・アンナさんと佐川が・・話してるの?)
佐川に負けないくらいの低くて冷たいアンナさんの声。
・・だから、なのかな。
「もうサクラを・・ううん、シエルちゃんを解放してあげて。あの子はもう充分に頑張ったじゃない!」
どうしてもアンナさんの言う事が受け入れられない。アンナさんは私の本名を知るはずないのに、どうして知ってるの?
「本当は借金なんてしてないんでしょ?!いつまであの子を嘘で縛るのよ!!もうっ・・本当の事を話してあげてよっ・・!司がいつまでも悪者である必要ないし、シエルちゃんだってこれ以上嘘で苦しむ必要もないじゃない!!」
(・・夢、だよね?)
そっか・・きっと私はまだ夢を見てるんだ。そうだ、そうに決まってる。これは悪夢だ。だってアンナさんが佐川の事を”司”って呼ぶなんて変だもん。佐川がオーナーだって誰も知らないはずだもん。
これは夢なんだ・・早く覚めて、早く現実に———
「本当は司は・・殺してないんでしょ?!」
(・・・・・・・え・・・・?)
その言葉をきっかけに、私はやっと、ドアノブを動かせる。
悪夢だと望みたかったのに——開かれた扉が”これが現実だ”と突きつけてくる。
「・・はい・・・正直辛いです。いつまでこの生活は続くのかなって・・私そのヤクザが怖くて・・・いつまで、アイツの言う通りにしなくちゃいけないのかなって・・・・。」
目の前で両親が殺されてしまった事。
借金を返す為に”グランド”に放り込まれた事。
アンナさんはずっと黙って聞いてくれていて、私はずっと話し続けてた。
「でも・・頑張らなきゃいけないんです。怖くても頑張って・・借金を返して自由になりたいんです。」
「・・・。」
「・・私、アンナさんには本当に感謝してるんです。」
「え・・?」
「こんな私を育ててくれて・・アンナさんのおかげでここまでやってこれたんです。だから今更なんですけど・・本当にありがとうございます。」
「・・・私は、そんな言われるような事はなにも・・。」
「そんな事ないです!」
アンナさんはいつも私をご飯に誘ってくれた。
アンナさんはいつもアドバイスをしてくれた。
ノリコさんの時だってドレスを貸してくれた、変な噂を流されてたのに私の言葉を信じてくれた。
「アンナさんがいなかったら・・今頃どうなっていたか・・。」
その現実は変わらない。キャストとして夜の世界を生きていられるのは真島さんのおかげでもあるけど・・アンナさんがずっと現場で支えてくれていたから。
「だから・・本当にありがとうございます!」
改めてお礼を言うのって・・少し恥ずかしい。
でも・・何でだろ、これが裸の付き合いなのかな。やっとアンナさんにお礼を言えた。
な・・なんか照れちゃうな、顔が熱いや・・・。
「アンナさ・・・?」
(アンナ・・さん?)
黙ってるアンナさんを見ると——泣いてた。
ポロポロと涙を流すアンナさん。泣いてるアンナさん・・初めて見た。
でも・・・何で?
「ど、どうしたんですか?!」
「っ・・ううん、なんでもない!なんでもないのっ・・・あはっ、改めて言われるのが嬉しくてっ・・・。」
アンナさん・・。
(本当に・・それだけ?)
それだけの涙じゃない気がするのは気のせい・・・?
そんな事を考えてると、アンナさんは思い切り私に抱きついてきた。その勢いでお風呂が少し溢れて水の音が鳴り響く。
「きゃっ・・!」
「・・———・・・。」
(え・・?今、なんて・・・?)
お湯の反響音の所為でよく聞こえなかった・・なんて言ったの?
聞こうとしたら、アンナさんは私を話してニッコリと微笑んでくる。
「そろそろ帰るね!ちゃんと元気になってお店に来るのよ!」
「えっ・・あ、はい・・!」
アンナさんはお風呂から出る前に私の頭を優しく撫でて、そのまま立ち去ってしまった。
・・・何か変だったなアンナさん。照れ隠し・・でもなかったし。何か気に障る事言っちゃったかな・・。
もう体調も平気だし・・明日出勤してアンナさんに謝ろうかな。
翌日——
ちょっと早い時間に来ちゃった・・アンナさん、こんな時間に来ないよね・・・まぁいっか。早めに準備して待ってようかな。
(もしかしたら真島さんが・・いるかもしれない。)
お店が始まる前に・・会えるといいな。そんな事を考えながらいつも通り裏口からグランドに入る。
———正面口を見なかったから”臨時休業”の看板が出ている事に気付く事が出来なかった———
「あれ?誰もいない?」
おかしいな・・いつもならボーイ達が掃除をしてるはずなのに。
・・そ、そんな早く来ちゃったのかな。それともみんなバックヤードで休んでるとか?そうかも・・とりあえずバックヤード行って着替えなきゃ!
それにしても誰もいないグランドも初めて見るなぁ・・こんなキラキラしたお店って凄いよね。
「・・・、・・・!」
「・・・・。・・・・・・。」
(ん?)
話し声が聞こえる・・やっぱりみんないるのかな?
階段をあがってバックヤードに近付くと、その声の主が少しずつ分かってきた。
(この声・・アンナさん?)
もういるんだ・・!珍しく早いなぁ。でもよかった、開店前に話が出来そう!
よしっ、元気になったから心配かけないように挨拶しなきゃ!
「おは——」
「お前・・今何て言った?」
「——っ?!」
ドアノブに手をつけようとしたと同時に聞こえてきた、男の声。
その声も知っている。私にとって・・恐怖でしかないその声の主。
(さ・・がわ・・・?)
この扉の向こうに・・・佐川がいる・・?
金属製のドアノブだから冷たいのは当たり前なのに、それ以上に冷たく感じてしまう。持ったドアノブを動かす事も離す事も出来ない。その声さえ聞きたくないのに、どうしてもその声が私の耳に入ってきてしまう。
「俺も最近疲れてて耳が悪くなったかねぇ・・聞き間違えたか?」
「・・いいえ、違うわ。」
(・・アンナさんと佐川が・・話してるの?)
佐川に負けないくらいの低くて冷たいアンナさんの声。
・・だから、なのかな。
「もうサクラを・・ううん、シエルちゃんを解放してあげて。あの子はもう充分に頑張ったじゃない!」
どうしてもアンナさんの言う事が受け入れられない。アンナさんは私の本名を知るはずないのに、どうして知ってるの?
「本当は借金なんてしてないんでしょ?!いつまであの子を嘘で縛るのよ!!もうっ・・本当の事を話してあげてよっ・・!司がいつまでも悪者である必要ないし、シエルちゃんだってこれ以上嘘で苦しむ必要もないじゃない!!」
(・・夢、だよね?)
そっか・・きっと私はまだ夢を見てるんだ。そうだ、そうに決まってる。これは悪夢だ。だってアンナさんが佐川の事を”司”って呼ぶなんて変だもん。佐川がオーナーだって誰も知らないはずだもん。
これは夢なんだ・・早く覚めて、早く現実に———
「本当は司は・・殺してないんでしょ?!」
(・・・・・・・え・・・・?)
その言葉をきっかけに、私はやっと、ドアノブを動かせる。
悪夢だと望みたかったのに——開かれた扉が”これが現実だ”と突きつけてくる。