仮面達の夜想曲
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グランドで働いて、初めて迎える春の季節。
桜が鮮やかに咲いていて、綺麗なピンクの絨毯が街に敷かれている。お店について着替える前にバックヤードに入ると、
『プルルル』
(電話・・?)
あんまり電話鳴らないから珍しいなぁ・・店長まだ来てないし、ボーイ達も掃除してるからいないし・・・私が出てもいいのかな。
待たせても申し訳ないから、戸惑いつつも電話に出る事にした。
「はい、キャバレーグランドです。」
・・で、いいのかな。電話対応なんてした事な——
『あ~・・もしかしてシエルか?』
えっ・・・この声・・。
「もしかして、まじ・・えっと、支配人ですか?」
『あぁ。今日他所ん所偵察するから店行くの遅くなるで。店長にも言うといてくれるか?』
「はい、分かりました。・・大変そうですね。」
『ん・・まぁ仕事やからしゅあないわ。』
「そう・・ですね・・。」
そうだとしても・・そんなに人員足りてないのかな。働いてる感じそう思えないけど・・・人が多くて困る事はないだろうけど、真島さん・・ううん、支配人ずっと休んでない・・。
『ほな切るで。店頼むわ。』
「あっ・・あのっ!」
『ん?』
最近お店が終わった後接客練習をしてくれるから、一緒に時間が長いからか支配人の声でなんとなく体調とかが分かるようになってきた。
電話越しでも分かる・・今日の支配人、ちょっと疲れてる・・。
「・・体調、気を付けてくださいね・・・?」
『・・・大丈夫や。俺はそないヤワな男とちゃう。』
「そう、ですよね・・。」
うっ・・余計な事言っちゃったかな・・そりゃ自分の体調分かってるよね。この前倒れたけど・・。
言った事を少し後悔してると、支配人は小さな声で言ってくれた。
『・・せやけど、おおきにな。』
「へ・・?」
『なるべく早く戻るわ。・・ほな。』
それだけ言うと、支配人は電話を切った。
静かに受話器を置いた私は、店長を探す前に着替えようと思ってロッカールームに向かう。
『おおきにな。』
・・・あの言い方は、”支配人”じゃなくて”真島さん”だった。耳元で優しい声が聞けると思ってなくて、心臓のドキドキが止まらない。
この間から変だ。あの真島さんの綺麗な目を見てから、真島さんと見つめ合ってから、低く優しい声で名前を呼ばれてから、変に真島さんを意識しちゃう。
(この気持ちって何なんだろ・・。)
・・・それにしても、真島さん本当に大丈夫かな・・昼間もろくに休んでないし夜はグランド、その後は私の接客練習。大変だよね、大丈夫なのかな・・。
(・・・さっきから、真島さんの事が頭から離れない・・。)
体が心配だけど、練習もしたい。
休んで欲しいけど、会いたい。
(これって・・・。)
・・・まさか、ね・・・。
ボーっとそんな事を考えながらロッカールームに入ると、そこにはメイクをしているアンナさんがいた。
「あ・・アンナさん、お疲れ様です!」
「お疲れサクラ!・・ん?顔暗いよ?どうしたの?」
あっ・・・バレてる・・・。
「な、何でもないですよ!そ、それよりさっき支配人から連絡きたんですけど、今日遅れるそうで・・。」
「え~そうなの?店長も遅れるって言ってたし・・。」
「えっ・・そうなんですか?」
どうしよう・・支配人も店長もいないなんて・・大丈夫なのかな。
「ま、私がいれば大丈夫でしょ!頑張ろう!」
「は・・はい!」
さすがアンナさん・・!頼もしい!
さて・・私もメイクしなきゃ・・・。
(・・・真島さん・・。)
・・・はぁ・・大丈夫かな・・・。
「・・・ねぇサクラ、聞いていい?」
「え?何ですか?」
ちょいちょいと手招きされてアンナさんに近寄ると・・・今までにない真剣な顔で私に囁いてくる。
「アンタ・・支配人と付き合ってるって本当なの?」
「——・・・え・・?」
何・・・それ・・?
「キャストの間で噂になってるの。最近2人の雰囲気が変わったって・・それは私も感じてたけど、サクラの売上最近上がったでしょ?裏で支配人の力が働いてるんじゃないかって・・。」
「なっ・・・!私、そんな事・・!」
「分かってる、私はそんな話信じてない。でも・・・支配人とは何かあったの?」
そんな事・・・言われても・・。
(でも・・言って、いいの・・・?)
よくよく考えれば、私の個人練習って・・・駄目、だよね・・?支配人が1人のキャストに付け込んでるって知られたら・・支配人の立場が悪くなっちゃうよね・・?
あれは真島さんが私を心配してくれてやってくれてる事で、支配人としてやってるわけじゃないけど・・でも余計に・・・。
(どうしよう・・なんて言えば・・・。)
「サクラ?」
「・・っ・・・。」
(アンナさんは信じてないって言ってくれたけど・・でも・・。)
「あはは・・何ですかね。誰がそんな噂流したんだか・・支配人と何かある訳ないじゃないですか・・。」
「・・サクラ・・・。」
「あんな怖い人・・と、何て・・噂されても、嬉しくないですよねっ!」
(あ・・・やばい・・。)
誤魔化す為とはいえ、こんな事言う自分が嫌になる。
真島さんを怖いって思ってない。むしろ練習してくれたおかげで売上も上がった。教えてくれた知識を生かして自分で実力を伸ばしてきたのに・・・。
そのせいで、真島さんが悪く言われちゃうの・・?
(・・何で・・・心が苦しの・・?)
真島さんを考えてドキドキするのと違って、真島さんが悪く思われる事に心臓が痛くなる。
そんなの嫌・・自分が悪く言われるよりもっと嫌・・・!
「サクラ、大丈夫?」
「・・!」
いけない、アンナさんを困らせちゃう・・!
「大丈夫ですよ!さっ、着替えなきゃ!」
今は仕事に集中!早く稼いで借金を返さなきゃ!
そうすれば・・・借金を返せばここで働く必要もない・・真島さんに迷惑をかけない・・。
曇る心のまま自分のロッカーを開けてドレスを手に取る——けど。
「・・・え・・・?」
目の前にある私のドレスが——ビリビリに破かれていた。
桜が鮮やかに咲いていて、綺麗なピンクの絨毯が街に敷かれている。お店について着替える前にバックヤードに入ると、
『プルルル』
(電話・・?)
あんまり電話鳴らないから珍しいなぁ・・店長まだ来てないし、ボーイ達も掃除してるからいないし・・・私が出てもいいのかな。
待たせても申し訳ないから、戸惑いつつも電話に出る事にした。
「はい、キャバレーグランドです。」
・・で、いいのかな。電話対応なんてした事な——
『あ~・・もしかしてシエルか?』
えっ・・・この声・・。
「もしかして、まじ・・えっと、支配人ですか?」
『あぁ。今日他所ん所偵察するから店行くの遅くなるで。店長にも言うといてくれるか?』
「はい、分かりました。・・大変そうですね。」
『ん・・まぁ仕事やからしゅあないわ。』
「そう・・ですね・・。」
そうだとしても・・そんなに人員足りてないのかな。働いてる感じそう思えないけど・・・人が多くて困る事はないだろうけど、真島さん・・ううん、支配人ずっと休んでない・・。
『ほな切るで。店頼むわ。』
「あっ・・あのっ!」
『ん?』
最近お店が終わった後接客練習をしてくれるから、一緒に時間が長いからか支配人の声でなんとなく体調とかが分かるようになってきた。
電話越しでも分かる・・今日の支配人、ちょっと疲れてる・・。
「・・体調、気を付けてくださいね・・・?」
『・・・大丈夫や。俺はそないヤワな男とちゃう。』
「そう、ですよね・・。」
うっ・・余計な事言っちゃったかな・・そりゃ自分の体調分かってるよね。この前倒れたけど・・。
言った事を少し後悔してると、支配人は小さな声で言ってくれた。
『・・せやけど、おおきにな。』
「へ・・?」
『なるべく早く戻るわ。・・ほな。』
それだけ言うと、支配人は電話を切った。
静かに受話器を置いた私は、店長を探す前に着替えようと思ってロッカールームに向かう。
『おおきにな。』
・・・あの言い方は、”支配人”じゃなくて”真島さん”だった。耳元で優しい声が聞けると思ってなくて、心臓のドキドキが止まらない。
この間から変だ。あの真島さんの綺麗な目を見てから、真島さんと見つめ合ってから、低く優しい声で名前を呼ばれてから、変に真島さんを意識しちゃう。
(この気持ちって何なんだろ・・。)
・・・それにしても、真島さん本当に大丈夫かな・・昼間もろくに休んでないし夜はグランド、その後は私の接客練習。大変だよね、大丈夫なのかな・・。
(・・・さっきから、真島さんの事が頭から離れない・・。)
体が心配だけど、練習もしたい。
休んで欲しいけど、会いたい。
(これって・・・。)
・・・まさか、ね・・・。
ボーっとそんな事を考えながらロッカールームに入ると、そこにはメイクをしているアンナさんがいた。
「あ・・アンナさん、お疲れ様です!」
「お疲れサクラ!・・ん?顔暗いよ?どうしたの?」
あっ・・・バレてる・・・。
「な、何でもないですよ!そ、それよりさっき支配人から連絡きたんですけど、今日遅れるそうで・・。」
「え~そうなの?店長も遅れるって言ってたし・・。」
「えっ・・そうなんですか?」
どうしよう・・支配人も店長もいないなんて・・大丈夫なのかな。
「ま、私がいれば大丈夫でしょ!頑張ろう!」
「は・・はい!」
さすがアンナさん・・!頼もしい!
さて・・私もメイクしなきゃ・・・。
(・・・真島さん・・。)
・・・はぁ・・大丈夫かな・・・。
「・・・ねぇサクラ、聞いていい?」
「え?何ですか?」
ちょいちょいと手招きされてアンナさんに近寄ると・・・今までにない真剣な顔で私に囁いてくる。
「アンタ・・支配人と付き合ってるって本当なの?」
「——・・・え・・?」
何・・・それ・・?
「キャストの間で噂になってるの。最近2人の雰囲気が変わったって・・それは私も感じてたけど、サクラの売上最近上がったでしょ?裏で支配人の力が働いてるんじゃないかって・・。」
「なっ・・・!私、そんな事・・!」
「分かってる、私はそんな話信じてない。でも・・・支配人とは何かあったの?」
そんな事・・・言われても・・。
(でも・・言って、いいの・・・?)
よくよく考えれば、私の個人練習って・・・駄目、だよね・・?支配人が1人のキャストに付け込んでるって知られたら・・支配人の立場が悪くなっちゃうよね・・?
あれは真島さんが私を心配してくれてやってくれてる事で、支配人としてやってるわけじゃないけど・・でも余計に・・・。
(どうしよう・・なんて言えば・・・。)
「サクラ?」
「・・っ・・・。」
(アンナさんは信じてないって言ってくれたけど・・でも・・。)
「あはは・・何ですかね。誰がそんな噂流したんだか・・支配人と何かある訳ないじゃないですか・・。」
「・・サクラ・・・。」
「あんな怖い人・・と、何て・・噂されても、嬉しくないですよねっ!」
(あ・・・やばい・・。)
誤魔化す為とはいえ、こんな事言う自分が嫌になる。
真島さんを怖いって思ってない。むしろ練習してくれたおかげで売上も上がった。教えてくれた知識を生かして自分で実力を伸ばしてきたのに・・・。
そのせいで、真島さんが悪く言われちゃうの・・?
(・・何で・・・心が苦しの・・?)
真島さんを考えてドキドキするのと違って、真島さんが悪く思われる事に心臓が痛くなる。
そんなの嫌・・自分が悪く言われるよりもっと嫌・・・!
「サクラ、大丈夫?」
「・・!」
いけない、アンナさんを困らせちゃう・・!
「大丈夫ですよ!さっ、着替えなきゃ!」
今は仕事に集中!早く稼いで借金を返さなきゃ!
そうすれば・・・借金を返せばここで働く必要もない・・真島さんに迷惑をかけない・・。
曇る心のまま自分のロッカーを開けてドレスを手に取る——けど。
「・・・え・・・?」
目の前にある私のドレスが——ビリビリに破かれていた。