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斎藤さんと永倉さんと別れた私達は、井上さんが待っている屯所へ向かう。さっきの戦いの所為で体力が消耗してしまったのか、吾朗は大分辛そうに歩いている。
支えながらなんとか歩いてるけど・・その表情を見ると、もう無理をしてほしくない。
「大丈夫・・?」
「・・あぁ、大丈夫や。シエルをちゃんと見送らな、アカンからのぉ・・・。」
「もうすぐ石段だから・・っ・・・頑張って・・。」
”頑張って”なんて、本当は言いたくない・・。
無理してほしくないのが本心だけど・・でも、これで最後なら、これが本当に・・最後になっちゃうなら・・なってしまったら・・。
(昨日・・信じるって、決めたのに・・・。)
いざこうして別れが近づくと・・怖くてたまらない。
・・・でも、行かなきゃ。
(行って・・帰らなきゃ。)
石段まで辿り着いた私達は、一つずつ登っていく。普段は何も感じない石段だけど、今は怖くてたまらない。この一番上にある屯所に辿り着いてしまったら・・本当に、また会える保証はない・・。
そう思うと体が恐怖で震えてしまう。唇をギュッと噛みしめながら登っていると、ふと肩を組んでる吾朗がポンポンと触れてくる。
「大丈夫や・・シエルはちゃんと帰れる・・ほんで絶対に、俺とも会えるで・・・?」
「——!!」
ちらりと吾朗を見ると・・私を安心させてくれるいつもの笑顔で私を見つめてくれている。
・・バレバレ、だね。
「吾朗は本当に・・私の事何でも分かるんだね。」
「ヒヒッ・・当たり前、やろが・・・もう、着くで。」
(・・でも私も分かるよ。吾朗が何を考えているのか。)
石段を無事に登り終えた私達を待っていたのは——井上さんと土方さん、そして近藤さん。
吾朗はそっと私から離れて背中をトンと押してくれる。そのまま私はゆっくりと三人に向かって歩く。
「・・決まったのか?」
井上さんは険しくも切ない表情で私を見つめる。
決まったのか、井上さんの質問への答えは・・もう一つしかない。
「はい。私・・行きます。」
「・・そう、か・・・ではまた後ろの門を通ってくれ。そうすれば元の時代に帰れる。」
「え?」
さっき通った屯所の入り口を見ると・・いつもなら京の街が見えている筈なのに、門の入り口は光に満ち溢れていた。
あそこを通れば、私は元の時代に帰れる・・・。
(でも・・その前に・・・。)
振り返って井上さんの傍まで近寄る。申し訳なさそうに下を見ている井上さんのその手を・・私はそっと握る。
井上さんはなぜ?と言いたいような顔で私を見る。
「・・!・・八神・・・。」
「お世話になりました。井上さんは・・いつも私の事を気にかけてくれていましたよね?今更ですけど・・凄く嬉しかったです。本当にありがとうございました。」
「・・っ・・何故礼を言うのだ・・俺の所為で、お前達は・・。」
「井上さん。」
(そんな泣きそうな顔をしないでください。)
井上さんだって、ずっとずっと辛かったんだ。何度も何度も・・・息子同然に思っている大切な人の死を見てきたんだから。これが最後だとしても・・・また死を見る事になる。それがどれだけ辛く悲しいのか、想像でしかないけど・・・分かるから。
「私は・・井上さんを恨んでいません。だから・・・笑顔で私を見送ってくれませんか?」
「・・っ・・・お前は、強いんだな。」
「ふふっ。」
僅かに目尻に涙をのせながら、井上さんは握られた手をそのまま握手に変えて——笑顔になってくれた。
そんな私達を見つめていた土方さんと近藤さんが近づいてきて、私は二人とも握手をする。
「達者でな、元気で。」
「はい。・・土方さんもお元気で。」
「ふっ・・。」
結末の決まっている人間にこう言うのも変だと思う。でも・・その終わりまで、少しでも幸せにいられるように・・。
「ほれ、忘れもんすんなよ?」
「?」
近藤さんはそう言って私の手に何かを握らせてきた。
そっとその手を開くと・・そこにあったのは・・・。
「——!これっ・・私の眼帯・・・!」
「すまねぇ。総司が思い出さねぇようにコイツは俺が預かってたんだ。・・アンタの大事なもんだろ?」
「・・っ・・・はい・・!・・良かったぁ・・!」
あの人から貰った——大切な眼帯。それがやっと・・手元にある。
「あそこを通れば、アンタの体も元に戻る。今のうちに着けときな。」
そう言って近藤さんは、私から眼帯を取ってつけてくれる。
顔を近づけてきた近藤さんは・・ふと私の耳元で呟く。
「ちゃんとその両目で全てを受け入れるんだ。そうすりゃ・・きっといい事あるぜ?」
「え・・?」
(両目で・・受け入れる・・・?)
土方さんにも井上さんにも聞けないくらいの小さな声でそう言った近藤さんは、眼帯を着け終えた後に私の頭をポンポンと触れる。
「ほら、行ってこい!」
「——!・・はい!」
近藤さんの笑顔・・そして土方さんと井上さんの笑顔に背中を押された私は振り返って歩き出す。
吾朗はもう門の近くで待っていて、笑顔で手を差し伸べてくる。
「・・そろそろ時間やな。」
「・・・うん。」
「気ぃつけて帰るんやで?」
「・・・うん・・。」
(・・吾朗・・・私にも分かるよ?吾朗が今何を考えてるのか。)
私は吾朗が差し伸べてきた手を通り抜けて——そのまま体に抱きつく。羽織の中に手を入れて、その背中に直接触れる。
「シエル?ど、どないした?」
「・・吾朗、怖い?」
「え・・・?」
「吾朗も・・怖いよね?」
そう呟く私に驚きを隠せない吾朗は、さっきから無理して作っていた笑顔が崩れその目の奥から不安な気持ちが伝わってくる。
私にだって分かるよ——吾朗も怖がってるんだって。また会える保証なんてない。ただの口約束に過ぎないって。
だから・・少しでも安心できるように・・。
「・・神室町で待ってる。ずっと待ってるから・・・また会えるように、私待ってるから・・。」
「・・・ヒヒッ。やっぱり・・シエルには敵わんのぉ。」
「ふふっ。」
笑顔を交わす私達。
自然と視線が合った私達は——そのままそっと触れるキスを交わす。
「愛してるよ吾朗。ずっと愛してる。」
「俺もずっと愛しとる。必ず・・・必ず迎えに行くで。必ずや。」
大切な約束を交わして、私は吾朗から離れる。
名残惜しい気持ちに髪を引かれつつも、光り輝く門に飛び込む。
「——シエル!」
「——!」
愛する人に呼ばれて振り返る。
吾朗は——笑顔で手を振っていた。私は光で閉じられ見えなくなるまで・・笑顔で手を振る。
——涙を流しているのに気付かれないように。
(大丈夫、怖くないよ。私達はまた・・会えるから。)
支えながらなんとか歩いてるけど・・その表情を見ると、もう無理をしてほしくない。
「大丈夫・・?」
「・・あぁ、大丈夫や。シエルをちゃんと見送らな、アカンからのぉ・・・。」
「もうすぐ石段だから・・っ・・・頑張って・・。」
”頑張って”なんて、本当は言いたくない・・。
無理してほしくないのが本心だけど・・でも、これで最後なら、これが本当に・・最後になっちゃうなら・・なってしまったら・・。
(昨日・・信じるって、決めたのに・・・。)
いざこうして別れが近づくと・・怖くてたまらない。
・・・でも、行かなきゃ。
(行って・・帰らなきゃ。)
石段まで辿り着いた私達は、一つずつ登っていく。普段は何も感じない石段だけど、今は怖くてたまらない。この一番上にある屯所に辿り着いてしまったら・・本当に、また会える保証はない・・。
そう思うと体が恐怖で震えてしまう。唇をギュッと噛みしめながら登っていると、ふと肩を組んでる吾朗がポンポンと触れてくる。
「大丈夫や・・シエルはちゃんと帰れる・・ほんで絶対に、俺とも会えるで・・・?」
「——!!」
ちらりと吾朗を見ると・・私を安心させてくれるいつもの笑顔で私を見つめてくれている。
・・バレバレ、だね。
「吾朗は本当に・・私の事何でも分かるんだね。」
「ヒヒッ・・当たり前、やろが・・・もう、着くで。」
(・・でも私も分かるよ。吾朗が何を考えているのか。)
石段を無事に登り終えた私達を待っていたのは——井上さんと土方さん、そして近藤さん。
吾朗はそっと私から離れて背中をトンと押してくれる。そのまま私はゆっくりと三人に向かって歩く。
「・・決まったのか?」
井上さんは険しくも切ない表情で私を見つめる。
決まったのか、井上さんの質問への答えは・・もう一つしかない。
「はい。私・・行きます。」
「・・そう、か・・・ではまた後ろの門を通ってくれ。そうすれば元の時代に帰れる。」
「え?」
さっき通った屯所の入り口を見ると・・いつもなら京の街が見えている筈なのに、門の入り口は光に満ち溢れていた。
あそこを通れば、私は元の時代に帰れる・・・。
(でも・・その前に・・・。)
振り返って井上さんの傍まで近寄る。申し訳なさそうに下を見ている井上さんのその手を・・私はそっと握る。
井上さんはなぜ?と言いたいような顔で私を見る。
「・・!・・八神・・・。」
「お世話になりました。井上さんは・・いつも私の事を気にかけてくれていましたよね?今更ですけど・・凄く嬉しかったです。本当にありがとうございました。」
「・・っ・・何故礼を言うのだ・・俺の所為で、お前達は・・。」
「井上さん。」
(そんな泣きそうな顔をしないでください。)
井上さんだって、ずっとずっと辛かったんだ。何度も何度も・・・息子同然に思っている大切な人の死を見てきたんだから。これが最後だとしても・・・また死を見る事になる。それがどれだけ辛く悲しいのか、想像でしかないけど・・・分かるから。
「私は・・井上さんを恨んでいません。だから・・・笑顔で私を見送ってくれませんか?」
「・・っ・・・お前は、強いんだな。」
「ふふっ。」
僅かに目尻に涙をのせながら、井上さんは握られた手をそのまま握手に変えて——笑顔になってくれた。
そんな私達を見つめていた土方さんと近藤さんが近づいてきて、私は二人とも握手をする。
「達者でな、元気で。」
「はい。・・土方さんもお元気で。」
「ふっ・・。」
結末の決まっている人間にこう言うのも変だと思う。でも・・その終わりまで、少しでも幸せにいられるように・・。
「ほれ、忘れもんすんなよ?」
「?」
近藤さんはそう言って私の手に何かを握らせてきた。
そっとその手を開くと・・そこにあったのは・・・。
「——!これっ・・私の眼帯・・・!」
「すまねぇ。総司が思い出さねぇようにコイツは俺が預かってたんだ。・・アンタの大事なもんだろ?」
「・・っ・・・はい・・!・・良かったぁ・・!」
あの人から貰った——大切な眼帯。それがやっと・・手元にある。
「あそこを通れば、アンタの体も元に戻る。今のうちに着けときな。」
そう言って近藤さんは、私から眼帯を取ってつけてくれる。
顔を近づけてきた近藤さんは・・ふと私の耳元で呟く。
「ちゃんとその両目で全てを受け入れるんだ。そうすりゃ・・きっといい事あるぜ?」
「え・・?」
(両目で・・受け入れる・・・?)
土方さんにも井上さんにも聞けないくらいの小さな声でそう言った近藤さんは、眼帯を着け終えた後に私の頭をポンポンと触れる。
「ほら、行ってこい!」
「——!・・はい!」
近藤さんの笑顔・・そして土方さんと井上さんの笑顔に背中を押された私は振り返って歩き出す。
吾朗はもう門の近くで待っていて、笑顔で手を差し伸べてくる。
「・・そろそろ時間やな。」
「・・・うん。」
「気ぃつけて帰るんやで?」
「・・・うん・・。」
(・・吾朗・・・私にも分かるよ?吾朗が今何を考えてるのか。)
私は吾朗が差し伸べてきた手を通り抜けて——そのまま体に抱きつく。羽織の中に手を入れて、その背中に直接触れる。
「シエル?ど、どないした?」
「・・吾朗、怖い?」
「え・・・?」
「吾朗も・・怖いよね?」
そう呟く私に驚きを隠せない吾朗は、さっきから無理して作っていた笑顔が崩れその目の奥から不安な気持ちが伝わってくる。
私にだって分かるよ——吾朗も怖がってるんだって。また会える保証なんてない。ただの口約束に過ぎないって。
だから・・少しでも安心できるように・・。
「・・神室町で待ってる。ずっと待ってるから・・・また会えるように、私待ってるから・・。」
「・・・ヒヒッ。やっぱり・・シエルには敵わんのぉ。」
「ふふっ。」
笑顔を交わす私達。
自然と視線が合った私達は——そのままそっと触れるキスを交わす。
「愛してるよ吾朗。ずっと愛してる。」
「俺もずっと愛しとる。必ず・・・必ず迎えに行くで。必ずや。」
大切な約束を交わして、私は吾朗から離れる。
名残惜しい気持ちに髪を引かれつつも、光り輝く門に飛び込む。
「——シエル!」
「——!」
愛する人に呼ばれて振り返る。
吾朗は——笑顔で手を振っていた。私は光で閉じられ見えなくなるまで・・笑顔で手を振る。
——涙を流しているのに気付かれないように。
(大丈夫、怖くないよ。私達はまた・・会えるから。)