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「・・辛い・・って・・・何ですか・・?」


井上さんから語られる真実。
それは・・一体何・・・・?


「・・沖田総司の最後は知っているか?」


沖田総司の最後って・・歴史でどうなってるかって事・・・?


「いえ、そこまでは・・。」
「ではこの時代の不治の病があるのは?」
「・・分かりません・・・。」


そこまで歴史に詳しいわけじゃないから、井上さんが何を言いたいのか分からない。
沖田総司の最後って・・不治の病って・・・?


「結核という感染症だ。一度結核に侵されてしまっては・・もう助からない。」


結核・・?
聞いた事ある・・・種類があって、肺結核もあるって・・。


(肺・・・咳・・?)


嫌な言葉が繋がってしまう。
肺の病気、不治の病、咳、吐血・・・その全部が当てはまってしまう・・・今の吾朗さんに。


「・・ま、さか・・・。」
「・・・そうだ。」


『ドクッ・・・』


心臓が跳ね上がる。
そんな・・・だから、あんなに血を吐いたの?でも・・・何で急に病気になったの?そんなすぐに発症するわけないじゃない・・!
混乱する私を余所に、井上さんは静かに語り続ける。


「沖田総司は肺結核で死ぬ。その結末は変えられない。・・発症した以上その男は・・死ぬしかないんだ。」


・・・何を・・言ってるの・・・・?
吾朗さんが・・死ぬ・・・?


「お前達が二人で戻る方法は・・発症する前に俺を殺すか、お前を殺すか・・それしか方法は無かったんだ。」


淡々と語る井上さんだけど、その目は辛くて悲しそうな目だった。
そんな目で井上さんは吾朗さんを見つめる。ずっと下を向いている吾朗さんは、ぎゅっと布団を握りしめる。


「だから言ったんだ、五郎・・・この女を殺せば戻れると・・そうすれば、お前達は一緒に戻れると・・!何故殺さなかった?!」


(・・え・・・?)


何故って・・吾朗さんはそれを知ってたの?私を殺せば戻れるって知ってたの・・・?
いや・・それ以前に井上さん・・・今なんて呼んだの・・?


「ちょっと待ってください・・なんで吾朗って・・?」
「・・そうではない、沖田総司は仮の名だ。」
「・・・・え・・?」
「——平山五郎。それが本当の名前だ。そして・・・俺の大切な弟子の一人だ。」


(・・待って・・頭が、追い付かない・・・。)


この人が沖田総司じゃなくて・・平山五郎・・・?
でも・・それならどうして沖田総司がなる病気に・・・?いや、実際の史実がそうだっていうの?私達が知る沖田総司が、実は平山五郎で井上さんの弟子だって言うの?


「俺がお前達の前に現れたのは・・五郎に幸せな人生を送ってほしかったからだ。今まで何度も繰り返してきた・・何度も何度も・・五郎の為に・・・。」


何度も何度もって・・・まさか井上さんは・・・。


「・・何度も失敗して・・・平山五郎の死を見てきた・・?」
「何かが変わると信じていた。五郎の死を回避できると、信じていた・・だが・・・どうしても避けられなかった。もう俺に・・五郎の人生を繰り返す力は残っていない。お前達が・・・俺にとって、五郎にとって最後の希望だったんだ。」


最後の・・希望・・・?


「病気が発症したら、そのままの体で戻る事になる。」


だから・・何だって言うの・・・?
現代の医療だったら、結核だって治せる・・・!!


「治せますよね・・?治せるんですよね?!だって、だってこの時代より医療は発展してる!治せるんですよね?!」
「・・・・。」


(何で・・・何も言ってくれないの・・?)


「・・井上、さん・・・そうですよね・・?」


涙を流しながら訴えかけるけど、井上さんの表情は変わらない。
・・むしろ、一層悔しそうな顔になってる。後ろを振り向いて吾朗さんを見ても、握りしめている手の力は更に強くなってる。


(・・嘘・・・。)


その状況に全てを察してしまう。
元の時代に戻っても治らない。沖田総司の結末は変わらない。


(それじゃあ・・吾朗さんは・・・。)


「君に残された道は2つだ。」


息苦しい空気の中、土方さんは冷静な声で道を示してくる。


「このままこの時代を生きるか。一人元の時代に戻るか。二つに一つ・・それしかない。」


このまま残って・・吾朗さんが死んだ後も生き続けるか・・・。
一人で戻って・・・元の時代を生きるか・・。


(そんなの・・選べない・・。)


どっちを選んでも・・私は独りだ・・・。
突然突き付けられた現実に、私は何も言えなくなってしまう。そんな私を井上さん達は・・ただ静かに見つめているだけ。吾朗さんだって顔を上げてくれない。


八神さんよ。」


ずっと黙っていた近藤さんが私の前にしゃがみ込んで、優しく私の頭を撫でてくれる。


「総司がすぐ死ぬことはねぇ。二人でゆっくり話しな、お互いの為の選択を・・二人で決めるんだ。」
「・・近藤・・・さん・・。」
「俺と歳も源さんがやっている事は分かっていた。何度も何度も俺達は・・五郎ちゃんの死を見てきた。これが最後だって聞いた時、俺ぁ心底ほっとしたよ。・・・もうこれ以上、源さん達が苦しむ姿を見なくて済むって思ったんだ。」
「・・・・。」
「だが・・お前さん達にとって辛い選択になっちまった・・・すまねぇ・・。」


そう言う近藤さんは、本当に申し訳なさそうな切ない表情だった。
本当に心からそう思っている、それは分かった。でも・・私はそれにすら反応できない。ただそれを・・・聞くことしかできない。


「さて・・後はいいな総司?いや・・真島さんよ。」
「・・あぁ、かまへん。」
「それなら駕籠屋を手配してやる。家でゆっくり話し合いな。」


立ち上がる前に私の肩を軽く叩いた近藤さんは、土方さんと井上さんに声をかけて部屋を出て行こうとする。
三人を見ていると、井上さんと目が合う。今にも泣きそうな、切なそうな目だった。
本当は責めたい。どうして私達なの?どうして私達が最後なの?でも・・・井上さんは、本当にいい人だって分かってるから・・その目が嘘じゃないって、演技じゃないって分かってるから・・そんなの言えない・・・言えないよ・・。


「・・・すまなかった。」


それだけ伝えて、三人は部屋を出て行った。
そして私達は近藤さんが手配してくれた駕籠屋で家へ向かう。苦しそうな吾朗さんを支えていた私だけど・・そこに会話はなかった。
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