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外は雨が降っていて、いつもは稽古で賑わっている屯所内も今日はとても静かだ。隊士達もあまり来ていないのか、いつも以上に静かだった。その静けさが・・今の私にはちょうどいい。
私の目の前には・・目を覚まさないでずっと眠っている吾朗さんがいる。
あれから二日——吾朗さんはまだ目を覚ましてくれない。
ずっと眠っている吾朗さんの手を握っているけど、その手が動くことはなかった。
「・・・。」
涙が枯れたほど泣いたと思ってたけど、今も油断すると泣きそう。
・・あの時毒を吸って倒れた時と訳が違う。今回は何も原因が分からない。あんなに血を吐いて倒れたから、てっきり井上さんに斬られたのかと思ってたけど・・刀傷はどこにもなかった。
分かんない・・なんで吾朗さんは起きないの・・?
「入るぞ。」
静かに引き戸が開かれて入ってきたのは、土方さんだった。
手にはおにぎりとお茶を乗せたお盆を持っていて、静かに私の傍に置いてきた。
「ここ数日食べていないだろう。少しでも入れておいた方がいい、君まで倒れたら総司が悲しむぞ。」
「・・・・。」
「・・隣、いいか?」
「・・・。」
土方さんの言葉に、私はただ頷く事しかできなかった。
食事も摂っていないから頭がぼーっとする。色んな辛さを察してくれた土方さんは、静かに隣に座ってきた。
「・・大丈夫か?」
「・・・・。」
「・・すまない、愚問だったな。」
「・・・・。」
「大丈夫、総司ははそこまでやわじゃない。源さんもじきに来る、その時の全てを話すと言っている。」
「・・・・。」
井上さん・・全部を、話す・・・・。
「・・・。」
ふと疑問に思った事を土方さんに聞いてみる。
「・・一つ・・・聞いていいですか?」
「何だ?」
「・・・この前土方さんが言っていたのは・・こういう意味だったんですか?」
「・・・・。」
”あまり総司と関わらない方がいい。”
あの時確かに言っていた。
あれはこうやって吾朗さんが倒れるのを知っていたから・・?
「教えてくださいっ・・土方さんっ・・・・。」
「・・・。」
「・・お願い・・・します・・。」
「・・私から話せる事は何もない・・いや、何も言えない。それは源さんから聞くんだ。それが・・あの人が望んでいる事だ・・とにかく食べておけ。またすぐ来る。」
私の肩を軽くポンポンと触れた土方さんは、立ち上がってすぐに部屋を出て行った。
「・・・。」
お腹が空いて食事の香りに敏感になっている。
空腹なのは間違いない・・けど、今は食べたくない。何も考えたくない。今はただ・・早く目が覚めてほしい。
「・・っ・・・。」
(このまま起きなかったらどうしよう・・このまま死んじゃったらどうしよう・・。)
そんな事考えたくない。考えたくないのに、そんな思考が止まらない。
嫌・・嫌っ・・・!そんなの嫌っ!!
「お、きて・・ごろぉ・・・さんっ・・!」
怖い・・・怖いよ・・あなたがいなくなったら私・・私はもう、生きていけないよ・・・・。
「吾朗・・さん・・・吾朗・・吾朗っ・・・!!」
愛しい人の手をぎゅっと握る。
私の大好きな・・大好きな人の手。
そんな手が———ピクリと動く。
「——!!」
その手の反応に気付いた私は、その人物の顔を見る。
隻眼が少しずつ開かれ、力ない目だけど優しい目で私を見てくる。
「・・あん時と、同じやな・・・俺の手・・握って待っとってくれたんか・・・?」
「・・っ・・・吾朗っ・・吾朗ぉ・・・!!」
「・・ヒハッ・・呼び捨ても、ええなぁ。」
そう笑顔で言いながら、私の手をキュッと握り返してくれる。
それが嬉しくて・・私はまた泣きだしていた。
「ふぇっ・・ヒック、吾朗さぁっ・・ふぇえ・・!!」
「・・すまんの・・また泣かせてしもうたな・・。」
「・・ううんっ・・良かった、良かったよぉ・・・!!」
ゆっくり起き上がった吾朗さんは、弱々しくも優しい笑顔をしながら私の涙を指で拭ってくれる。
そんな吾朗さんはおにぎりの存在に気付いて、一つ手にもって私の前に差し出してくる。
「腹減ってしゃあないわ・・一緒に食わへんか?」
「っ・・うんっ・・・。」
吾朗さんが渡してくれたおにぎりを手に持って、私達はゆっくりおにぎりを食べ進めていく。前に吾朗さんが私に渡してくれたおにぎりとは全然味も形も違うけど・・こうして一緒にご飯を食べられるだけで本当に幸せ。
食べ終わると、私達はふぅと一息つき目を合わせる。
「・・目、腫れとるな。」
「まぁ・・うん・・・でも、大丈夫。」
「・・そうか・・折角の別嬪が台無しになってしまうの。」
「そんなのいいよ・・こうして起きてくれただけで、私は本当に嬉しいから・・・この後井上さんが来て全部話してくれるって。その時に詳しく聞いて・・元の時代に帰ろう・・・?」
全てを話すと自白した井上さんに方法を聞けば、もうこの時代に残る理由はない。早く帰らなきゃ。
「・・・。」
「吾朗さん・・?」
ねぇ・・どうして”そうだな”って言ってくれないの・・?
「・・俺は・・・。」
「・・?」
「俺は・・もう帰れへん。」
「・・・・・え・・?」
帰れないって・・・何を、言ってるの・・?
「・・どういう、事・・・?」
「言うたやろ?時間切れやって。」
「何が・・何が時間切れなの?・・・ねぇ、吾朗さん?」
私の問いに何も答えてくれない。
ずっと下を向いている吾朗さんに、私は思わず詰め寄る。
「ねぇっ・・ねぇっ!!」
「・・・・。」
下を向いてるからちゃんとどんな顔してるのかは分からない。
でも吾朗さんから感じるその雰囲気は・・・今言っている事が、全部”本当”だって分かってしまう。
吾朗さんは・・・何で、帰れないって言うの・・?!
「吾朗さんっ——!!」
「——そこまでにしてやってくれ。」
「・・っ・・?!」
(井上さんの・・・声?)
後ろを振り返ると、そこには井上さん・・と、土方さん。それに近藤さんまで立っていた。
目が合った井上さんの表情は・・・切なそうな表情だった。
「・・全てを話す。お前には・・・辛い選択だ。」
私の目の前には・・目を覚まさないでずっと眠っている吾朗さんがいる。
あれから二日——吾朗さんはまだ目を覚ましてくれない。
ずっと眠っている吾朗さんの手を握っているけど、その手が動くことはなかった。
「・・・。」
涙が枯れたほど泣いたと思ってたけど、今も油断すると泣きそう。
・・あの時毒を吸って倒れた時と訳が違う。今回は何も原因が分からない。あんなに血を吐いて倒れたから、てっきり井上さんに斬られたのかと思ってたけど・・刀傷はどこにもなかった。
分かんない・・なんで吾朗さんは起きないの・・?
「入るぞ。」
静かに引き戸が開かれて入ってきたのは、土方さんだった。
手にはおにぎりとお茶を乗せたお盆を持っていて、静かに私の傍に置いてきた。
「ここ数日食べていないだろう。少しでも入れておいた方がいい、君まで倒れたら総司が悲しむぞ。」
「・・・・。」
「・・隣、いいか?」
「・・・。」
土方さんの言葉に、私はただ頷く事しかできなかった。
食事も摂っていないから頭がぼーっとする。色んな辛さを察してくれた土方さんは、静かに隣に座ってきた。
「・・大丈夫か?」
「・・・・。」
「・・すまない、愚問だったな。」
「・・・・。」
「大丈夫、総司ははそこまでやわじゃない。源さんもじきに来る、その時の全てを話すと言っている。」
「・・・・。」
井上さん・・全部を、話す・・・・。
「・・・。」
ふと疑問に思った事を土方さんに聞いてみる。
「・・一つ・・・聞いていいですか?」
「何だ?」
「・・・この前土方さんが言っていたのは・・こういう意味だったんですか?」
「・・・・。」
”あまり総司と関わらない方がいい。”
あの時確かに言っていた。
あれはこうやって吾朗さんが倒れるのを知っていたから・・?
「教えてくださいっ・・土方さんっ・・・・。」
「・・・。」
「・・お願い・・・します・・。」
「・・私から話せる事は何もない・・いや、何も言えない。それは源さんから聞くんだ。それが・・あの人が望んでいる事だ・・とにかく食べておけ。またすぐ来る。」
私の肩を軽くポンポンと触れた土方さんは、立ち上がってすぐに部屋を出て行った。
「・・・。」
お腹が空いて食事の香りに敏感になっている。
空腹なのは間違いない・・けど、今は食べたくない。何も考えたくない。今はただ・・早く目が覚めてほしい。
「・・っ・・・。」
(このまま起きなかったらどうしよう・・このまま死んじゃったらどうしよう・・。)
そんな事考えたくない。考えたくないのに、そんな思考が止まらない。
嫌・・嫌っ・・・!そんなの嫌っ!!
「お、きて・・ごろぉ・・・さんっ・・!」
怖い・・・怖いよ・・あなたがいなくなったら私・・私はもう、生きていけないよ・・・・。
「吾朗・・さん・・・吾朗・・吾朗っ・・・!!」
愛しい人の手をぎゅっと握る。
私の大好きな・・大好きな人の手。
そんな手が———ピクリと動く。
「——!!」
その手の反応に気付いた私は、その人物の顔を見る。
隻眼が少しずつ開かれ、力ない目だけど優しい目で私を見てくる。
「・・あん時と、同じやな・・・俺の手・・握って待っとってくれたんか・・・?」
「・・っ・・・吾朗っ・・吾朗ぉ・・・!!」
「・・ヒハッ・・呼び捨ても、ええなぁ。」
そう笑顔で言いながら、私の手をキュッと握り返してくれる。
それが嬉しくて・・私はまた泣きだしていた。
「ふぇっ・・ヒック、吾朗さぁっ・・ふぇえ・・!!」
「・・すまんの・・また泣かせてしもうたな・・。」
「・・ううんっ・・良かった、良かったよぉ・・・!!」
ゆっくり起き上がった吾朗さんは、弱々しくも優しい笑顔をしながら私の涙を指で拭ってくれる。
そんな吾朗さんはおにぎりの存在に気付いて、一つ手にもって私の前に差し出してくる。
「腹減ってしゃあないわ・・一緒に食わへんか?」
「っ・・うんっ・・・。」
吾朗さんが渡してくれたおにぎりを手に持って、私達はゆっくりおにぎりを食べ進めていく。前に吾朗さんが私に渡してくれたおにぎりとは全然味も形も違うけど・・こうして一緒にご飯を食べられるだけで本当に幸せ。
食べ終わると、私達はふぅと一息つき目を合わせる。
「・・目、腫れとるな。」
「まぁ・・うん・・・でも、大丈夫。」
「・・そうか・・折角の別嬪が台無しになってしまうの。」
「そんなのいいよ・・こうして起きてくれただけで、私は本当に嬉しいから・・・この後井上さんが来て全部話してくれるって。その時に詳しく聞いて・・元の時代に帰ろう・・・?」
全てを話すと自白した井上さんに方法を聞けば、もうこの時代に残る理由はない。早く帰らなきゃ。
「・・・。」
「吾朗さん・・?」
ねぇ・・どうして”そうだな”って言ってくれないの・・?
「・・俺は・・・。」
「・・?」
「俺は・・もう帰れへん。」
「・・・・・え・・?」
帰れないって・・・何を、言ってるの・・?
「・・どういう、事・・・?」
「言うたやろ?時間切れやって。」
「何が・・何が時間切れなの?・・・ねぇ、吾朗さん?」
私の問いに何も答えてくれない。
ずっと下を向いている吾朗さんに、私は思わず詰め寄る。
「ねぇっ・・ねぇっ!!」
「・・・・。」
下を向いてるからちゃんとどんな顔してるのかは分からない。
でも吾朗さんから感じるその雰囲気は・・・今言っている事が、全部”本当”だって分かってしまう。
吾朗さんは・・・何で、帰れないって言うの・・?!
「吾朗さんっ——!!」
「——そこまでにしてやってくれ。」
「・・っ・・?!」
(井上さんの・・・声?)
後ろを振り返ると、そこには井上さん・・と、土方さん。それに近藤さんまで立っていた。
目が合った井上さんの表情は・・・切なそうな表情だった。
「・・全てを話す。お前には・・・辛い選択だ。」