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(こ、いつ・・は・・・・。)
目の前に立っているのは、あの時の人物。
私のすぐ傍で、愛している人が倒れている。血を吐きながら、血の海で。
その黒い布の中から見える、僅かな眼差し。目が合った瞬間、私の頭は冷静に考えてた。
(——コイツが吾朗さんに何かしたんだ。)
私は自然と吾朗さんの小刀を握って、黒い布の人物に襲い掛かる。
着物の所為で動き辛いけど、そんなの関係ない。コイツがやったんだ。コイツが吾朗さんを苦しめてるんだ。
素早く突き刺そうとする私の刀をあっさりと避けられる。
(小賢しい・・!)
普段新撰組と稽古をしていたおかげか、裏の仕事を暫くしていたおかげか、その人物の動きについていく事ができた。
(——殺す。)
刀を交えて感じる既視感。
この人と私は——何度も稽古を重ねてきた。覚えがある。間違いない、この動きはあの人だ。
(でも何で?)
何でこの人が、吾朗さんを?
何でこの人が、私を?
(——今はどうでもいい。)
何もかも吐かせれば、それでいいんだから。
相手も相当な手練れで、私は避けるのに精一杯だった。でも・・必ず突破口はある。この人の癖は覚えてるんだから。
きっともう少しで、この人は——。
「・・っ・・・!」
突きをする構えになった、その瞬間。
(ほら、やっぱり。)
突きをするその一瞬だけ、あなたは固まりますもんね。
私はその一瞬の隙をついて、その人物を押し倒す。逃さないように上に跨り、首元に小刀を押し付ける。手入れを怠っていなかったのか、その僅かに触れただけで肌が少し斬れる。少し血が流れても動揺しなかった、それどころか少し嬉しそうに微笑んでた。
「ふっ・・・さすがだな。」
仰向けになったおかげで・・やっとちゃんと顔を見れた。
(やっぱり・・やっぱりそうだ。)
「・・・・あなた、だったんですね。」
新撰組・・・六番隊隊長———
「井上さん。」
稽古の時以上の動きだったけど、その癖は決して変わる事はない。
「・・そうだ・・・お前とあの男を襲い、この時代に連れてきたのは・・俺だ。」
「何でそんな事したの。」
「・・・・。」
「黙ってないで話して。全部話さないとこのまま殺すわよ。」
いつ小刀を横に引いてもいいように刃をねかせる。大抵の人間はこれだけで恐怖に溺れて洗いざらい全部吐く。今までの経験上そうだったから。
だけど・・・井上さんの表情は変わらなかった。
むしを・・・私に対して、あの優しい表情をしている。私を励ましてくれた時の、あの優しい笑顔で私を見つめる。
「すまなかった。お前に・・辛い思いをさせてしまった。・・記憶を持っていたとは、思わなかった・・。」
「・・・・。」
その瞳は、確かに私への謝罪の念が込められていた。
「・・殺せ・・・そうすれば、全て終わる。」
その瞳は、嘘を言っていない。
(・・全部・・・終わる・・。)
その言葉の意味は、すぐに察する事ができた。
井上さんを・・・コイツを殺せば、終わる。元の時代に戻れる。
戻るんだ、あの時代に。私がいるハズの時代に。
なら——迷う必要なんてない。
「———」
首を、斬る——————
「・・・・・シエル・・・。」
——手前に聞こえた、小さな小さな・・愛している人の声。
「——!!吾朗さんっ!!」
小刀を放り投げて、血の海の中に倒れている吾朗さんの傍に駆け寄る。俯せになっていた吾朗さんを仰向けにさせて抱き寄せると、青白い表情をしている吾朗さんは口角を少し上げて私の頬に手をそえてくる。
「・・アカン、で・・シエルの、手は・・・もう、汚したら・・アカンのや・・・・。」
「吾朗さんっ・・!!吾朗さん、吾朗さんっ!!」
「・・驚かせて、すまん、のぉ・・ごめんなぁ・・・。」
「嫌っ・・!!吾朗さん、しっかりして吾朗さんっ!!」
「・・総司・・・!」
背後から聞こえる井上さんの声。振り返って睨みつけるけど・・・私達を斬ろうとする動きはなかった。
吾朗さんは私の頬から手を離し、井上さんに手を伸ばす。その手を握った井上さんの目は・・・悲しみに暮れていた。
「・・すまん、のぉ・・源さん・・・ワシ、には・・無理やったわ・・・ヒヒッ・・堪忍や、で・・。」
「しっかりするんだ総司・・!」
井上さんは私から吾朗さんを奪い取るように抱き寄せると、吾朗さんを背負えるように背中を向けてそのままおんぶをする。だらんと力無く腕を垂らしている吾朗さんは意識を失っていた。
「屯所に行くぞ、八神も来るんだ・・!」
呆然とそれを見ていた私に声をかけてくる井上さん。
はっとした私は、そんな井上さんの指示に従いたくなかった。
「ふざけないでよ・・!誰が、アンタなんかの・・!」
「この男を死なせたいのか?!」
「——っ・・・!」
「・・行くぞ・・・全部、話すから・・今は来るんだ・・!」
・・・正直その後の事は、よく覚えてない。
気付いた頃には・・私の目の前に、布団の中で眠っている吾朗さんの姿があった。彼の傍で私は、ただ座っていた。
吾朗さんの目が覚めるまで・・・ただただ、待つ事しかできなかった。
目の前に立っているのは、あの時の人物。
私のすぐ傍で、愛している人が倒れている。血を吐きながら、血の海で。
その黒い布の中から見える、僅かな眼差し。目が合った瞬間、私の頭は冷静に考えてた。
(——コイツが吾朗さんに何かしたんだ。)
私は自然と吾朗さんの小刀を握って、黒い布の人物に襲い掛かる。
着物の所為で動き辛いけど、そんなの関係ない。コイツがやったんだ。コイツが吾朗さんを苦しめてるんだ。
素早く突き刺そうとする私の刀をあっさりと避けられる。
(小賢しい・・!)
普段新撰組と稽古をしていたおかげか、裏の仕事を暫くしていたおかげか、その人物の動きについていく事ができた。
(——殺す。)
刀を交えて感じる既視感。
この人と私は——何度も稽古を重ねてきた。覚えがある。間違いない、この動きはあの人だ。
(でも何で?)
何でこの人が、吾朗さんを?
何でこの人が、私を?
(——今はどうでもいい。)
何もかも吐かせれば、それでいいんだから。
相手も相当な手練れで、私は避けるのに精一杯だった。でも・・必ず突破口はある。この人の癖は覚えてるんだから。
きっともう少しで、この人は——。
「・・っ・・・!」
突きをする構えになった、その瞬間。
(ほら、やっぱり。)
突きをするその一瞬だけ、あなたは固まりますもんね。
私はその一瞬の隙をついて、その人物を押し倒す。逃さないように上に跨り、首元に小刀を押し付ける。手入れを怠っていなかったのか、その僅かに触れただけで肌が少し斬れる。少し血が流れても動揺しなかった、それどころか少し嬉しそうに微笑んでた。
「ふっ・・・さすがだな。」
仰向けになったおかげで・・やっとちゃんと顔を見れた。
(やっぱり・・やっぱりそうだ。)
「・・・・あなた、だったんですね。」
新撰組・・・六番隊隊長———
「井上さん。」
稽古の時以上の動きだったけど、その癖は決して変わる事はない。
「・・そうだ・・・お前とあの男を襲い、この時代に連れてきたのは・・俺だ。」
「何でそんな事したの。」
「・・・・。」
「黙ってないで話して。全部話さないとこのまま殺すわよ。」
いつ小刀を横に引いてもいいように刃をねかせる。大抵の人間はこれだけで恐怖に溺れて洗いざらい全部吐く。今までの経験上そうだったから。
だけど・・・井上さんの表情は変わらなかった。
むしを・・・私に対して、あの優しい表情をしている。私を励ましてくれた時の、あの優しい笑顔で私を見つめる。
「すまなかった。お前に・・辛い思いをさせてしまった。・・記憶を持っていたとは、思わなかった・・。」
「・・・・。」
その瞳は、確かに私への謝罪の念が込められていた。
「・・殺せ・・・そうすれば、全て終わる。」
その瞳は、嘘を言っていない。
(・・全部・・・終わる・・。)
その言葉の意味は、すぐに察する事ができた。
井上さんを・・・コイツを殺せば、終わる。元の時代に戻れる。
戻るんだ、あの時代に。私がいるハズの時代に。
なら——迷う必要なんてない。
「———」
首を、斬る——————
「・・・・・シエル・・・。」
——手前に聞こえた、小さな小さな・・愛している人の声。
「——!!吾朗さんっ!!」
小刀を放り投げて、血の海の中に倒れている吾朗さんの傍に駆け寄る。俯せになっていた吾朗さんを仰向けにさせて抱き寄せると、青白い表情をしている吾朗さんは口角を少し上げて私の頬に手をそえてくる。
「・・アカン、で・・シエルの、手は・・・もう、汚したら・・アカンのや・・・・。」
「吾朗さんっ・・!!吾朗さん、吾朗さんっ!!」
「・・驚かせて、すまん、のぉ・・ごめんなぁ・・・。」
「嫌っ・・!!吾朗さん、しっかりして吾朗さんっ!!」
「・・総司・・・!」
背後から聞こえる井上さんの声。振り返って睨みつけるけど・・・私達を斬ろうとする動きはなかった。
吾朗さんは私の頬から手を離し、井上さんに手を伸ばす。その手を握った井上さんの目は・・・悲しみに暮れていた。
「・・すまん、のぉ・・源さん・・・ワシ、には・・無理やったわ・・・ヒヒッ・・堪忍や、で・・。」
「しっかりするんだ総司・・!」
井上さんは私から吾朗さんを奪い取るように抱き寄せると、吾朗さんを背負えるように背中を向けてそのままおんぶをする。だらんと力無く腕を垂らしている吾朗さんは意識を失っていた。
「屯所に行くぞ、八神も来るんだ・・!」
呆然とそれを見ていた私に声をかけてくる井上さん。
はっとした私は、そんな井上さんの指示に従いたくなかった。
「ふざけないでよ・・!誰が、アンタなんかの・・!」
「この男を死なせたいのか?!」
「——っ・・・!」
「・・行くぞ・・・全部、話すから・・今は来るんだ・・!」
・・・正直その後の事は、よく覚えてない。
気付いた頃には・・私の目の前に、布団の中で眠っている吾朗さんの姿があった。彼の傍で私は、ただ座っていた。
吾朗さんの目が覚めるまで・・・ただただ、待つ事しかできなかった。