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『ちゅんちゅん』
雀の鳴き声で目を覚ます。吾朗さんの温もりのおかげでぐっすり寝れた私は起きるのも億劫だった。
「シエルちゃん、シエルちゃん起きぃや。」
「・・・ん~・・もうちょっと・・。」
起きたくない・・・もう少しこのまま・・。
「甘えてくるんは嬉しいけど・・見られとるで?」
「・・ん・・んん~・・・?」
見られてるって・・誰に・・・?
眠くてしょうがない瞼をゆっくり開けて部屋の戸を見ると・・・戸を開けてこっちを冷たい目で見てる斎藤さんが立っていた。
「一ちゃんも趣味が悪いのぉ~、人の寝顔覗きおって。」
「屯所に行くから連れて行こうと起こしに来ただけだ。・・それ以前に、何で沖田がいるんだよ。」
「あ?ただの夜這いやけど。」
「ったく・・恋仲にもなってねぇくせに・・。」
・・・あぁなんだ斎藤さんか・・・斎藤さんが見て・・見て・・?
(・・・・・・・え?)
斎藤さんに、見られ、てる・・・?!
「~~~っ?!?!」
「お?ようやく理解できたんか?」
「はぁ・・程々にしとけよ。じゃあ今日は八神は行かねぇんだな。」
「そうゆうこっちゃ、ほれ、とっとと行きぃや。」
「分かったよったく・・・。」
「ちょ、斎藤さっ・・!!」
呆れた顔のまま斎藤さんは離れて行った。
・・・桐生さんが私達を見てるような顔しないでよ・・!!そこまで同じじゃなくてもいいじゃない!!
「ヒヒッ!見られてもうたのぉ!」
「ご、吾朗さん!早く起こしてよ・・!」
「ん~?こない握っとるシエルが可愛くての~。つい見惚れてたんや。」
「え?握ってるって?」
「ほれ。」
そういうと吾朗さんは自分の胸を指差してきた。
その方を見ると・・・吾朗さんの着物の胸元を子供みたいにぎゅうっと握りしめてた。
「~~っ?!?!」
「真っ赤になりおってかわええの~ホンマ!」
こ・・・ここここれ見られてたの・・?!?!
は・・恥ずかしい・・・!!!!慌ててる私を放置して吾朗さんは起き上がり、体をぐ~っと伸ばした。
「うっし!ほんなら着替えや、出かけるで!」
「えっ・・で、出かけるって?私、寺田屋の仕事・・。」
「んなもん昨日俺から女将に言うといたわ。ほれ、着物買うといたんや!これ着てデートや!先に外でとるからの~!」
「えっ?!ちょ、ちょっと!昨日言っといたって、え、あの、吾朗さん?!」
吾朗さんは私を無視して上機嫌で部屋を出て行った。
(ちょっとは私の話聞いてよ・・!)
女将に言っておいたって・・・いつの間に言ってたのよ・・!今日は働く気だったのに・・!!
・・・っていうか、え?着物買っておいたって言ってた?
枕元を見ると、風呂敷に包まれている物が置いてあった。中を開けて確認すると、少し高そうな露草色ベースに灰色の模様が入っている着物が入ってた。
(え・・吾朗さんいつの間に・・・?)
というかデートって・・・今はそれどころじゃないんじゃ・・。
(・・でも・・・。)
・・・今日くらいは、いいのかな・・?
吾朗さんが持ってきた着物に着替えて寺田屋の外に出ると、私に気付いた吾朗さんはこっちを見てきた。
「おまたせ!」
「・・・・・・。」
・・・・?固まっちゃった・・・。
「お~い、吾朗さん?」
「・・あっ・・・。」
「どうしたの?」
「いや、その・・似合っとるで、そん着物・・・。」
「・・・あ・・ありがとう・・。」
少し頬を赤くさせながら頭を掻く吾朗さんが珍しくて、私もつい恥ずかしくなっちゃう・・。
「ほな・・行こか?」
「・・うん!」
私に手を差し伸べてきた吾朗さんの手を優しく握って、私達は一緒に歩き出す。いつも歩いている京の街も、二人でこうして歩いていると全く別物に見えるのはきっと気のせいじゃない。
幸せな気持ちで歩いていると、ふと気になる事を吾朗さんに聞く。
「どこ行くの?」
「特に決めとらんけど・・せや、腹減っとるか?」
「少し減ってる、かな?」
「ほんなら、洛内の”百川”でも行かんか?飯食うた後、そのまま清水寺でも行こか!」
「いいね!そうしよう!」
笑い合う私達はゆっくりと歩いていると、ふと吾朗さんが私の耳元に近付いて呟いてくる。
「いつ新撰組の奴と会うか分からん。念の為”沖田”呼ぶんやで。」
・・・・そっか・・確かに昼間は見廻ってる隊士達も多くいるし、それで吾朗さんって呼んだら混乱するよね。
ちょっと寂しいけど・・仕方ない、よね。
「分かった。えっと・・沖田さん。」
「フヒッ、なんか新鮮やの!」
「あははっ!そうだね!」
・・・前に二人で歩いた時はお互いの記憶が無くて、こうして笑っていても辛くて仕方なかった。
でも・・・今は記憶もある、呼び方は変えてるけど心の底から笑えてる気がする。それがこんなに幸せな事なんて・・・。
(吾朗さんも・・そんな風に考えてくれてるかな・・。)
そんな事を考えながら吾朗さんの横顔を見つめていると、その視線に気付いた吾朗さんはにやりと笑ってみせた。
「何やそない見つめて。美少年に惚れてしもうたんかシエルちゃん?」
「・・・沖田さんが美少年か・・。」
「おい、何本気で言うとんねん。」
「ぷっ・・!あはは、冗談だよ!かっこいいよ沖田さん!」
「気休めにしか聞こえへんの~・・。」